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幼少編
予期せぬ再会
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2年前のあの日、レノは彼女に魔物から命を救われた。だが、命を救った彼女の正体を突き止めるために後を追ったため、逆に彼女に殺されかけた。恐らくはレノの母親と同じ「ダークエルフ」であり、ビルドを殺して他の孤児院の子供たちをも焼き殺した女性が目の前に立っていた。
「お前か……だいたい2年ぶりぐらいか?」
「あ、ああっ……」
子供たちがいるはずの部屋にはダークエルフの女性が1人だけ立っており、扉を破壊して侵入してきたレノに視線をやる。レノは彼女に瞳を向けられた瞬間、その場に腰を抜かしてしまう。2年前のあの時と同じように――
「生きていたのは驚いたが、成長したのは身体だけか……」
「ひっ……」
ゆっくりと近づいてくるダークエルフに対してレノは後退り、やがては壁際に背中を当てる。最早、逃げ場はなく、彼女は背中に刺しこんだ「薙刀」を掴み取る。
「今度は首を斬り落とす……流石に死ぬだろう?」
「あっ……あっ……」
レノ視界が揺らぎ、自分が涙を流していることに気付く。彼女は無表情のまま、レノに歩み寄って薙刀を振り上げようとした時、
(っ――!!)
その姿を見た瞬間、レノの中で何かが弾けた。彼女に対しての恐怖や、アジトが燃やされた怒り、そして姿を見せない子供達の安否の心配、複数の感情が同時に発生し、激しい怒りの炎が芽生える。
(よくもっ……)
自分を見つめるダークエルフに、身体中の魔力を集中させ、右手に集める。
「んっ……?何をする気だ?」
「ああぁあああああっ!!」
彼の異変に気づき、薙刀を止めたダークエルフに対し、レノは全ての魔力を掻き集め、イメージを働かせる。呪文を行う事で発動する魔法は「反魔紋」で封印されている。ならば、自分が唯一使える「風」の魔力を集中させ、一気に右の掌から解き放つイメージを行い、彼女に向けて飛びかかる。すぐにもダークエルフは軽快な動きで後ろに下がり、薙刀を握りしめた瞬間、
「喰らえぇえええええええええっ――!!」
レノの掌から、まるで嵐のような魔力が解き放たれ、ダークエルフに向けて放たれる。
「無詠……!?」
ダークエルフは目を見開くと、レノが放った「嵐」を薙刀で受け止め、そのまま子供部屋の壁まで押し込まれる。
「吹き飛べぇえええええええええっ!!」
身体中の魔力を放出させ、掌から凄まじい嵐が形成され、ダークエルフの身体をより一層に壁に押し込み、そのまま壁を崩壊させてダークエルフは子供部屋から吹き飛ばした。
「くっ……!!」
全身の魔力を使い果たし、レノは膝をつく。全ての種族の中で一番の魔力容量を持つ「ハーフエルフ」といえど、今の一撃で力を使い果たした。それでも何とか地面に倒れている3人の子供達に近づこうと、床を這って進む。
「アル……エル……ディンっ……!!」
3人からの返事は無く、屋敷が炎に飲み込まれて崩れていく。その光景に彼は最悪の予想が思い浮かび、呆然としていると、更に最悪の事態が訪れる。
「……今のは中々だったぞ」
倒壊した壁の瓦礫から、何事も無いようにダークエルフが姿を現し、レノを見下ろす。
「くっ……」
「まさかその年齢で無詠唱を使えるとは……末恐ろしいガキだな」
「無詠唱……?」
「何だ?気が付かなかったのか?お前は今、何も媒介もなしで、こんな室内で風の魔法を使っただろう」
風の魔法を使用するにはこのような室内の密封された空間では通常よりも威力は期待できない。本来は何かを媒介しない限り、魔力を魔法という形にして発動する事は難しい。実際に媒介無しで使える魔法など一般的に「無属性」ぐらいなのだが、眼の前のダークエルフは以前に無詠唱で何もない空間から媒介も無しに火炎を生み出した。
今回はレノ自身が自分の意思で魔力を「嵐」へと変換し、ダークエルフに向けて「無詠唱魔法」として発現に成功した事に気付く。
「面白いな……お前」
「あぐっ……」
レノの長い髪の毛を掴み、ダークエルフは無理やり彼を立たせると、すぐに違和感を覚え、
「お前……まさか、あの「反魔紋」を……あの女の仕業か?」
「うぐっ……」
ダークエルフが語る女とは深淵の森にいる「族長」の事だろうが、彼女の事を知っている風な話し方にレノは族長とダークエルフの関係性が気になった。
「魔法を封じられながら、私にあれほどの出力の風を……?なるほど、自力で無詠唱魔法を会得したか」
「無詠唱……まさか」
「そうだ……察しの通り、私達は何も媒介無しで魔法を生み出せる」
ダークエルフは自分の掌を見せると、何もない空間から炎を生み出す。普通、火の魔力を身体に纏うぐらいならは媒介は要らないが、彼女の用に完全に掌から離れた空間に炎を生み出すことなどできないはずだ。ダークエルフは炎の球体を自分の周りに移動させ、自由自在に動かせるのを確認させると、すぐに球体を四散させる。
「言っておくが、周囲の火を媒介として利用した訳じゃないぞ」
言われレノは現在自分たちが燃え盛っている洋館の室内にいることを思いだし、風の魔力を宿っていない今、彼の身体に熱風と煙がまともに放たれる。
「うぐぁっ……」
「ふむっ……外に出るか」
ダークエルフは子供部屋を出ると、すぐ傍の窓に向けて掌から爆風を放ち、壁を後と窓ガラスを溶解させ、外に出た。
「お前か……だいたい2年ぶりぐらいか?」
「あ、ああっ……」
子供たちがいるはずの部屋にはダークエルフの女性が1人だけ立っており、扉を破壊して侵入してきたレノに視線をやる。レノは彼女に瞳を向けられた瞬間、その場に腰を抜かしてしまう。2年前のあの時と同じように――
「生きていたのは驚いたが、成長したのは身体だけか……」
「ひっ……」
ゆっくりと近づいてくるダークエルフに対してレノは後退り、やがては壁際に背中を当てる。最早、逃げ場はなく、彼女は背中に刺しこんだ「薙刀」を掴み取る。
「今度は首を斬り落とす……流石に死ぬだろう?」
「あっ……あっ……」
レノ視界が揺らぎ、自分が涙を流していることに気付く。彼女は無表情のまま、レノに歩み寄って薙刀を振り上げようとした時、
(っ――!!)
その姿を見た瞬間、レノの中で何かが弾けた。彼女に対しての恐怖や、アジトが燃やされた怒り、そして姿を見せない子供達の安否の心配、複数の感情が同時に発生し、激しい怒りの炎が芽生える。
(よくもっ……)
自分を見つめるダークエルフに、身体中の魔力を集中させ、右手に集める。
「んっ……?何をする気だ?」
「ああぁあああああっ!!」
彼の異変に気づき、薙刀を止めたダークエルフに対し、レノは全ての魔力を掻き集め、イメージを働かせる。呪文を行う事で発動する魔法は「反魔紋」で封印されている。ならば、自分が唯一使える「風」の魔力を集中させ、一気に右の掌から解き放つイメージを行い、彼女に向けて飛びかかる。すぐにもダークエルフは軽快な動きで後ろに下がり、薙刀を握りしめた瞬間、
「喰らえぇえええええええええっ――!!」
レノの掌から、まるで嵐のような魔力が解き放たれ、ダークエルフに向けて放たれる。
「無詠……!?」
ダークエルフは目を見開くと、レノが放った「嵐」を薙刀で受け止め、そのまま子供部屋の壁まで押し込まれる。
「吹き飛べぇえええええええええっ!!」
身体中の魔力を放出させ、掌から凄まじい嵐が形成され、ダークエルフの身体をより一層に壁に押し込み、そのまま壁を崩壊させてダークエルフは子供部屋から吹き飛ばした。
「くっ……!!」
全身の魔力を使い果たし、レノは膝をつく。全ての種族の中で一番の魔力容量を持つ「ハーフエルフ」といえど、今の一撃で力を使い果たした。それでも何とか地面に倒れている3人の子供達に近づこうと、床を這って進む。
「アル……エル……ディンっ……!!」
3人からの返事は無く、屋敷が炎に飲み込まれて崩れていく。その光景に彼は最悪の予想が思い浮かび、呆然としていると、更に最悪の事態が訪れる。
「……今のは中々だったぞ」
倒壊した壁の瓦礫から、何事も無いようにダークエルフが姿を現し、レノを見下ろす。
「くっ……」
「まさかその年齢で無詠唱を使えるとは……末恐ろしいガキだな」
「無詠唱……?」
「何だ?気が付かなかったのか?お前は今、何も媒介もなしで、こんな室内で風の魔法を使っただろう」
風の魔法を使用するにはこのような室内の密封された空間では通常よりも威力は期待できない。本来は何かを媒介しない限り、魔力を魔法という形にして発動する事は難しい。実際に媒介無しで使える魔法など一般的に「無属性」ぐらいなのだが、眼の前のダークエルフは以前に無詠唱で何もない空間から媒介も無しに火炎を生み出した。
今回はレノ自身が自分の意思で魔力を「嵐」へと変換し、ダークエルフに向けて「無詠唱魔法」として発現に成功した事に気付く。
「面白いな……お前」
「あぐっ……」
レノの長い髪の毛を掴み、ダークエルフは無理やり彼を立たせると、すぐに違和感を覚え、
「お前……まさか、あの「反魔紋」を……あの女の仕業か?」
「うぐっ……」
ダークエルフが語る女とは深淵の森にいる「族長」の事だろうが、彼女の事を知っている風な話し方にレノは族長とダークエルフの関係性が気になった。
「魔法を封じられながら、私にあれほどの出力の風を……?なるほど、自力で無詠唱魔法を会得したか」
「無詠唱……まさか」
「そうだ……察しの通り、私達は何も媒介無しで魔法を生み出せる」
ダークエルフは自分の掌を見せると、何もない空間から炎を生み出す。普通、火の魔力を身体に纏うぐらいならは媒介は要らないが、彼女の用に完全に掌から離れた空間に炎を生み出すことなどできないはずだ。ダークエルフは炎の球体を自分の周りに移動させ、自由自在に動かせるのを確認させると、すぐに球体を四散させる。
「言っておくが、周囲の火を媒介として利用した訳じゃないぞ」
言われレノは現在自分たちが燃え盛っている洋館の室内にいることを思いだし、風の魔力を宿っていない今、彼の身体に熱風と煙がまともに放たれる。
「うぐぁっ……」
「ふむっ……外に出るか」
ダークエルフは子供部屋を出ると、すぐ傍の窓に向けて掌から爆風を放ち、壁を後と窓ガラスを溶解させ、外に出た。
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