上 下
2,071 / 2,083
蛇足編

閑話 《最強の魔術師と最強の竜》

しおりを挟む
「おいおいおい!!待て待て待て!!ここでやる気か嬢ちゃん!?」
「マリア様!!相手は竜種です!!いくらマリア様でも……」
「大丈夫よ。貴方達は下がっていなさい……姉さんを頼んだわよ」
「マリア!?」


白竜が姿を現わすとマリアは神器ウィングを取り出し、彼女は装着すると背中に光の翼を生み出す。元々はキラウが所持していた神器だったが、現在はマリアの所有物となった。神器などなくても風の精霊を利用すれば飛ぶことはできるが、今回は本気で戦うために彼女は複数の神器を装着する。


「全力で戦える相手は何年ぶりかしら……あっさり死なないでちょうだい」
「シャアアアッ!!」


崖の上から白竜が飛び立つとマリアは地上にいる者達が巻き込まれないように上空へ移動を行う。その後に白竜も続き、彼女に目掛けて光の吐息を放つ。


「アガァッ!!」
「やはりそうきたわね……でも、無駄よ。リフレクション!!」


光線を撃ちこんできた白竜に対してマリアは杖を構えると、結界石を利用して防御壁を作り出す。彼女が所持している結界石は市販の物ではなく、一流の小髭族が制作した特殊な結界石である。光線が結界に衝突した瞬間、まるで鏡に跳ね返されるように白竜の元へ向かう。


「シャアアッ!?」


光線を跳ね返されて翼に当てられた白竜だったが、特に損傷はないのか問題なく飛行を持続する。魔法使いが自分の魔法では傷つかないのと同じ原理で白竜の吐き出す吐息は白竜の身体を傷つけはしない。しかし、その間にマリアは距離を取って次の魔法の準備を行う。

白竜よりもさらに高い空域で彼女は魔法陣を展開し、白竜に狙いを定めた。彼女が得意とする「マジックアロー」は自分の魔力を利用して複数の属性の魔弾を撃ちこむ。並の魔術師ならば10発程度の魔弾で耐え切れずに魔法を解除してしまうが、マリアの場合はガトリング砲のように打ち込む。


「プレゼントよ」
「シャアッ!?」


風、火、水、雷の四つの属性の魔弾が数十発も撃ちこまれ、それを確認した白竜は移動速度を上昇させて回避しようとした。だが、マリアはそれを予測して魔弾を追尾させる。


「無駄よ、逃げ切れると思わないで」
「アガァッ!?」


途中で軌道を変化した魔弾は白竜の背中に集中砲火し、複数の属性の魔弾が衝突したことで反発作用を引き起こし、本来以上の威力を引き起こす。下位の竜種ならばこの攻撃だけで仕留めきれたかもしれないが、白竜はそれを耐え切って光の吐息を放つ。


「アガァアアアッ!!」
「くっ!?」


魔弾を撃ちこむ魔法陣を展開している間はマリアは動けず、彼女は迫りくる光線に対して咄嗟に魔法陣を解除して回避した。今度は白竜の方がマリアを追跡し、彼女を執拗に追いかける。


「シャアアッ!!」
「……それは幻影よ」
「ッ!?」


マリアを追いかける途中で彼女の姿が陽炎のように消え去り、いつの間にか白竜の背中の上にマリアが立っていた。彼女は幻を生み出す魔法で自分の偽物を作り出し、白竜が追跡している間に次の魔法の準備を行う。

白竜の背中に乗ったマリアは杖を構えると電流を迸らせる。雷属性の上級魔法を撃ちこむ準備を行い、彼女が杖を天に構えると雨雲を生み出す。雷属性と水属性と風属性の魔法を組み合わせた合成魔術を発動させた。


「サンダーストーム!!」
「ギャインッ!?」


雨雲から雷が降り注ぎ、更に竜巻が発生して白竜を飲み込む。竜巻内では雷と雨が迸り、全身が水に濡れた状態で電撃を浴びた白竜は悲鳴をあげる。こちらの魔法は準備に時間が掛かるのと広範囲に被害を及ぼすという理由でマリアも滅多に使用しない高等魔術だが、第五階層ならば遠慮せずに扱える。

雷を帯びた竜巻の被害者は白竜だけではなく、地上に存在した別の魔物も巻き込まれた。湖を泳いでいた魚人やオオツノオークの群れが巻き込まれ、竜巻の中に飲み込まれていく。


『プギィイイッ!?』
『ギャアアアッ!?』
「あら……ちょっとやり過ぎたかしら」


白竜だけを始末するつもりが他の魔物を巻き込んだことに気付いたマリアは悪びれもせずに見下ろし、彼女は白竜が動けなくなるまで痛めつけるつもりだった。だが、竜巻の中で白竜の影が映し出されると、全身から電流を帯びた白竜が竜巻を突き破って出現した。


「シャアアッ!!」
「何ですって!?」


かつて一度もサンダーストームを打ち破られたことがないマリアは白竜が竜巻を突破して出てきたことに驚き、しかも白竜は全身に雷を纏っていた。どうやら雷の力を吸収したようであり、雷の魔力を帯びた光線を放つ。


「アガァアアアアッ!!」
「ブースト!!」


危険を察したマリアは光の羽根を拡大化させて加速し、光線を回避することに成功した。白竜の撃ちこんだ光線は地上に衝突すると凄まじい爆発を引き起こし、地上に存在したロックゴーレムの群れを蹴散らす。


『ゴアアアアッ!?』


マリアと白竜の戦闘に巻き込まれた魔物達は次々と吹き飛ばされ、戦闘を開始してから5分足らずで第五階層に甚大な被害を生み出す。




※こいつらやばすぎる……(;´・ω・)ハワワッ
しおりを挟む
感想 5,089

あなたにおすすめの小説

最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された「霧崎ルノ」彼を召還したのはバルトロス帝国の33代目の皇帝だった。現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が帝国領土に出現し、数多くの人々に被害を与えていた。そのために皇帝は魔王軍に対抗するため、帝国に古から伝わる召喚魔法を利用して異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出す。しかし、どういう事なのか召喚されたルノはこの帝国では「最弱職」として扱われる職業の人間だと発覚する。 彼の「初級魔術師」の職業とは普通の魔術師が覚えられる砲撃魔法と呼ばれる魔法を覚えられない職業であり、彼の職業は帝国では「最弱職」と呼ばれている職業だった。王国の人間は自分達が召喚したにも関わらずに身勝手にも彼を城外に追い出す。 だが、追い出されたルノには「成長」と呼ばれる能力が存在し、この能力は常人の数十倍の速度でレベルが上昇するスキルであり、彼は瞬く間にレベルを上げて最弱の魔法と言われた「初級魔法」を現実世界の知恵で工夫を重ねて威力を上昇させ、他の職業の魔術師にも真似できない「形態魔法」を生み出す―― ※リメイク版です。付与魔術師や支援魔術師とは違う職業です。前半は「最強の職業は付与魔術師かもしれない」と「最弱職と追い出されたけど、スキル無双で生き残ります」に投稿していた話が多いですが、後半からは大きく変わります。 (旧題:最弱職の初級魔術師ですが、初級魔法を極めたら何時の間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。