2,044 / 2,083
蛇足編
悪魔
しおりを挟む
「この私を出し抜こうなんていい度胸だね。お礼代わりにあんたの魂を喰らわせてもらおうか」
「ひいいっ!?嫌だ、助けてくれぇっ!?」
「もう遅いんだよ」
捕まった男は必死に逃げ出そうとするが、体内に死霊石を埋め込まれている限りはミヤの術から逃れることはできない。男の身体から闇属性の魔力が漏れ出し、徐々に皮膚が黒色化していく。
「がああっ!?」
「死霊魔術師だからといって驕ったね。シャドウ家の血筋でない人間が闇属性の魔力に抗い切れると思うな!!」
「あ、あく、ま……がぁああああっ!?」
男の胸元に髑髏の紋様が浮きあがり、全身が黒く染まると髑髏の口元から淡く光り輝く球体が出現した。この球体の正体こそ男の魂であり、肉体が崩壊したことで男の魂が排出された。それをミヤは掌に収めると、彼女は笑みを浮かべた。
呪術師の扱う術には他者の魂を操る禁術も存在し、彼女の掌に収まった魂を握り潰せば男は生まれ変わることもできない。しかし、ミヤは男の魂を無駄にするつもりはなく、今しばらくは自分の肉体が生き延びるために彼の魂を取り込む。
「これで一か月は保てるかね……こんな時のためにあんたは生かしておいたんだよ」
ミヤは死霊魔術師を仲間に入れていたのは自分がいざという時に生き延びるためであり、最初から自分の命の延命のために用意していた保険に過ぎない。シャドウ家の人間を取り込まない限りは彼女は若返ることはないが、他の人間の魂を得ることで彼女は肉体を一時的に復活することができた。
魂を口から吸い込むとミヤは車椅子から立ち上がり、老婆の姿から40代ぐらいの年齢まで若返ることに成功した。全盛期にはまだほど遠いが、他者の魂を喰らうことで彼女は何度も若返って生き延びてきた。
「ちっ……この程度の魂じゃ腹の足しにもならないね。やっぱりシャドウ家の人間じゃないと無理そうか……」
ダインを殺して彼の血液を吸い上げるか、あるいはダインの魂を喰らうことでしか彼女は真に復活することはできない。シャドウ家の人間はダイン以外に存在しない以上はミヤは完全復活するにはダインを捕まえる以外の選択肢はない。
「さてと、のんびり話している暇もなさそうだ……この隠れ家も使えなくなるね」
ミヤは転移の神器を利用して早々に退散することにした。レナ達が間もなく到着するはずであり、ここに到着したら転移の神器は奪われてしまう。失うには惜しい神器だが今のミヤではレナに太刀打ちはできない。
「久々に帰るとするからね。我が祖国に……」
数十年ぶりにミヤはバルトロス王国へ帰ることを決め、彼女は転移の神器が設置された部屋へ向かう――
――1時間後、レナ達は新帝国の隠れ家に到着した。途中で何度か罠に嵌まりそうだったがどうにか乗り越えてきたが、既にミヤは転移の神器を使用して退散していた。隠れ家には真っ黒に染まった男の死体しか存在せず、それを確認したゴウカは悔し気な表情を浮かべた。
「くそっ、もぬけの殻か!!」
「やはり敵は既に逃げ出したようですね……」
「…………」
事前にレナだけはアイリスを通してミヤが退散していることは聞いており、転移の神器で彼女がバルトロス王国へ向かったことは気付いている。だが、それが分かっても簡単にはバルトロス王国へ戻ることはできない。
『アイリス、この転移の神器を使って俺達も王国に戻れないの?』
『無理です。ミヤは王国に戻る際に罠を仕掛けています。もしも転移したらレナさん達も無事では済みません。王国に戻るとしたら別の方法に頼るしかありません』
『くそっ、こんな時に水晶札が使えれば……』
レナはマリアの転移魔法が施された水晶札を切らしてしまい、バルトロス王国の王都まで戻るにしても巨人国からでは時間が掛かり過ぎてしまう。リーリスに連絡を取って白竜を派遣してもらう手もあるが、それでも移動するのに時間が掛かってしまう。
アイリスのお陰でミヤの目的はダインであることは分かっているが、レナはダインを助けに向かうにも時間が掛かり過ぎる。ダインのことは心配であるが今のレナにはどうすることもできない。
「レナたん、何だか嫌な予感がするよ……」
「私も……」
「二人とも……大丈夫だよ。俺が何とかしてみせるから」
ティナとコトミンは不安を抱き、この二人の勘は鋭いので無意識に仲間に危険が迫っていることに気付いているのかもしれない。そんな二人を安心させるためにレナは頭を撫でながらバルトロス王国に残した仲間達の顔を思い浮かべる。
(ダイン……信じてるから)
王国に危機が迫っていることを知りながらもレナは何も出来ず、残された仲間達を信じて帰国する方法を探すしかなかった――
――そして間もなくレナが不在の間に王国で大きな事件が起きようとしていた。
「ひいいっ!?嫌だ、助けてくれぇっ!?」
「もう遅いんだよ」
捕まった男は必死に逃げ出そうとするが、体内に死霊石を埋め込まれている限りはミヤの術から逃れることはできない。男の身体から闇属性の魔力が漏れ出し、徐々に皮膚が黒色化していく。
「がああっ!?」
「死霊魔術師だからといって驕ったね。シャドウ家の血筋でない人間が闇属性の魔力に抗い切れると思うな!!」
「あ、あく、ま……がぁああああっ!?」
男の胸元に髑髏の紋様が浮きあがり、全身が黒く染まると髑髏の口元から淡く光り輝く球体が出現した。この球体の正体こそ男の魂であり、肉体が崩壊したことで男の魂が排出された。それをミヤは掌に収めると、彼女は笑みを浮かべた。
呪術師の扱う術には他者の魂を操る禁術も存在し、彼女の掌に収まった魂を握り潰せば男は生まれ変わることもできない。しかし、ミヤは男の魂を無駄にするつもりはなく、今しばらくは自分の肉体が生き延びるために彼の魂を取り込む。
「これで一か月は保てるかね……こんな時のためにあんたは生かしておいたんだよ」
ミヤは死霊魔術師を仲間に入れていたのは自分がいざという時に生き延びるためであり、最初から自分の命の延命のために用意していた保険に過ぎない。シャドウ家の人間を取り込まない限りは彼女は若返ることはないが、他の人間の魂を得ることで彼女は肉体を一時的に復活することができた。
魂を口から吸い込むとミヤは車椅子から立ち上がり、老婆の姿から40代ぐらいの年齢まで若返ることに成功した。全盛期にはまだほど遠いが、他者の魂を喰らうことで彼女は何度も若返って生き延びてきた。
「ちっ……この程度の魂じゃ腹の足しにもならないね。やっぱりシャドウ家の人間じゃないと無理そうか……」
ダインを殺して彼の血液を吸い上げるか、あるいはダインの魂を喰らうことでしか彼女は真に復活することはできない。シャドウ家の人間はダイン以外に存在しない以上はミヤは完全復活するにはダインを捕まえる以外の選択肢はない。
「さてと、のんびり話している暇もなさそうだ……この隠れ家も使えなくなるね」
ミヤは転移の神器を利用して早々に退散することにした。レナ達が間もなく到着するはずであり、ここに到着したら転移の神器は奪われてしまう。失うには惜しい神器だが今のミヤではレナに太刀打ちはできない。
「久々に帰るとするからね。我が祖国に……」
数十年ぶりにミヤはバルトロス王国へ帰ることを決め、彼女は転移の神器が設置された部屋へ向かう――
――1時間後、レナ達は新帝国の隠れ家に到着した。途中で何度か罠に嵌まりそうだったがどうにか乗り越えてきたが、既にミヤは転移の神器を使用して退散していた。隠れ家には真っ黒に染まった男の死体しか存在せず、それを確認したゴウカは悔し気な表情を浮かべた。
「くそっ、もぬけの殻か!!」
「やはり敵は既に逃げ出したようですね……」
「…………」
事前にレナだけはアイリスを通してミヤが退散していることは聞いており、転移の神器で彼女がバルトロス王国へ向かったことは気付いている。だが、それが分かっても簡単にはバルトロス王国へ戻ることはできない。
『アイリス、この転移の神器を使って俺達も王国に戻れないの?』
『無理です。ミヤは王国に戻る際に罠を仕掛けています。もしも転移したらレナさん達も無事では済みません。王国に戻るとしたら別の方法に頼るしかありません』
『くそっ、こんな時に水晶札が使えれば……』
レナはマリアの転移魔法が施された水晶札を切らしてしまい、バルトロス王国の王都まで戻るにしても巨人国からでは時間が掛かり過ぎてしまう。リーリスに連絡を取って白竜を派遣してもらう手もあるが、それでも移動するのに時間が掛かってしまう。
アイリスのお陰でミヤの目的はダインであることは分かっているが、レナはダインを助けに向かうにも時間が掛かり過ぎる。ダインのことは心配であるが今のレナにはどうすることもできない。
「レナたん、何だか嫌な予感がするよ……」
「私も……」
「二人とも……大丈夫だよ。俺が何とかしてみせるから」
ティナとコトミンは不安を抱き、この二人の勘は鋭いので無意識に仲間に危険が迫っていることに気付いているのかもしれない。そんな二人を安心させるためにレナは頭を撫でながらバルトロス王国に残した仲間達の顔を思い浮かべる。
(ダイン……信じてるから)
王国に危機が迫っていることを知りながらもレナは何も出来ず、残された仲間達を信じて帰国する方法を探すしかなかった――
――そして間もなくレナが不在の間に王国で大きな事件が起きようとしていた。
0
お気に入りに追加
16,534
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。