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蛇足編
特別編 《レナがもしも女の子に転生してたら》
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――バルトロス王国の第一王女として生まれたレナは城から追放されることはなく、王城での生活を許された。理由としては第一王子として生まれていた場合ならば王位を継承する権利があるが、女子として生まれた場合は王位継承権は与えられない。国王は娘が不遇職として生まれたことを残念に思うが、追放はせずに王城で暮らすことを許す。
「どうしたレナ!!そんなへっぴり腰では私には勝てないぞ!?」
「ううっ……ナオ姉様、もう疲れたよ」
レナは義理の姉であるナオに剣の稽古をつけてもらい、ナオは腹違いとはいえ初めてできた妹のレナを可愛がっていた。彼女はレナを連れて兵士達の稽古に混ざり、その様子を他の将軍は微笑ましく眺める。
「今日もナオ王女がレナ王女を扱いていますな」
「あの二人は本当に仲が良いですな。まるで本物の姉妹のようだ」
「それに比べて双子の妹さん達はわがままで手を焼かされますがな……」
ナオの実妹である双子は理由を付けて剣の稽古をサボることが多く、真面目に剣の稽古を受けるのはレナだけだった。そのせいでナオは他の妹の分までレナを鍛え抜く。
「レナ、職業など関係ない!!頑張った分だけ人は強くなれるんだ!!頑張って頑張って頑張り抜いた人間だけが大成するんだ!!」
「姉様……俺は魔術師なんだから魔法の勉強をした方がいいと思うけど」
「こら、また俺と言ってるぞ!!お前は女の子なんだから女の子らしくしろ!!」
「ひぃいっ!?」
ナオはレナの一人称を聞いて説教し、女性らしく振舞うように注意を行う。彼女なりにレナの将来を心配しての行動だが、心は男性であるレナにとっては女性らしく振舞うのは困難だった。
『今日も大変ですね。わざとおちこぼれのふりをするのは』
『仕方ないよ。俺が目立ち過ぎると命を狙われるんだし……』
実を言えばレナは実力的には既にナオにも劣らぬ能力を身に着けていた。だが、それを敢えて隠して生活を送る。理由としては第一王女のナオよりも目立ち過ぎると色々と問題があり、もしも不遇職のレナよりもナオが劣っていると知られれば彼女の立場が危うい。
長年にわたって王子が生まれないせいでバルトロス王国の王位継承権はナオに託される可能性が高く、そんな中でレナがナオよりも優秀なことを知られれば彼女を王位に就かせようとする派閥から危険視されて排除される可能性もあった。それを避けるためにレナは実力を隠して生きている。
『今は耐えるしかありませんよ。生き残るためには身に着けた力は決して誰にも知られないように気を付けてください』
『分かってる……でも、いつまで耐えればいいの?』
『そこは何とも言えませんね』
レナは実力を隠しながら生活する日々に嫌気がさすが、もしもレナの真の実力を知られれば彼女は瞬く間に殺されてしまう。それを避けるためには今は耐え凌ぎ、自由を得るまで耐え抜くしかない。
『この国はいずれ王妃の手に落ちます。その前にレナさんは能力を磨いて脱出する準備を整えてください』
『どうにか止めることはできないの?』
『無理ですね。もうこの国の支配者は国王ではありません。王妃が支配者と化しています』
既に王妃は王国内の権力を掌握しており、彼女に対抗できる存在は冒険都市のマリアだけだった。だが、そのマリアもアイラを人質に取られている状況では何も出来ない。アイラは王城内で暮らしており、それは逆に言えばアイラの命は王妃が握っている。
仮にレナ一人が逃げ出した場合、残されたアイラを王妃が逃すはずがない。だからレナは王妃がこの国を完全に掌握する前に家族と共に逃げる必要があった。そのためにレナは実力を磨き、何時の日か訪れる王妃が国を手にする時まで耐え凌ぐ。
『王妃から逃れたらとりあえずはヨツバ王国へ向かいましょう。レナさんもハヅキ家の血筋ですから受け入れてくれるでしょう』
『ヨツバ王国か……エルフの国だっけ?』
『そうです。いくら王妃でもヨツバ王国には手を出せませんからね。まあ、ヨツバ王国の中にも王妃と繋がっている輩はいるでしょうが、ハヅキ家に保護されれば下手に手だしされることはありません』
『だといいけど……』
バルトロス王国が王妃の手中に収まったとしてもヨツバ王国に亡命すればレナの命は助かるはずだった。アイラは元々はハヅキ家の一員であり、彼女と共にヨツバ王国に逃げ切ればレナは生き延びられる。但し、その場合はレナはハヅキ家の跡取りとして暮らさなければならない。
『ヨツバ王国に行けばレナさんはきっと跡取りとして教育を受けることになりますね。もしかしたら婚約者もすぐに用意されるかも……』
『ん?何かいった?』
『いいえ、何も……』
アイリスは敢えてレナにとっては不都合な情報は伝えず、今は生き延びるために彼女のサポートに徹した――
※レナが女の子に生まれていたらバルトロス王国は王妃に掌握されるバッドエンドルートは確実です。
「どうしたレナ!!そんなへっぴり腰では私には勝てないぞ!?」
「ううっ……ナオ姉様、もう疲れたよ」
レナは義理の姉であるナオに剣の稽古をつけてもらい、ナオは腹違いとはいえ初めてできた妹のレナを可愛がっていた。彼女はレナを連れて兵士達の稽古に混ざり、その様子を他の将軍は微笑ましく眺める。
「今日もナオ王女がレナ王女を扱いていますな」
「あの二人は本当に仲が良いですな。まるで本物の姉妹のようだ」
「それに比べて双子の妹さん達はわがままで手を焼かされますがな……」
ナオの実妹である双子は理由を付けて剣の稽古をサボることが多く、真面目に剣の稽古を受けるのはレナだけだった。そのせいでナオは他の妹の分までレナを鍛え抜く。
「レナ、職業など関係ない!!頑張った分だけ人は強くなれるんだ!!頑張って頑張って頑張り抜いた人間だけが大成するんだ!!」
「姉様……俺は魔術師なんだから魔法の勉強をした方がいいと思うけど」
「こら、また俺と言ってるぞ!!お前は女の子なんだから女の子らしくしろ!!」
「ひぃいっ!?」
ナオはレナの一人称を聞いて説教し、女性らしく振舞うように注意を行う。彼女なりにレナの将来を心配しての行動だが、心は男性であるレナにとっては女性らしく振舞うのは困難だった。
『今日も大変ですね。わざとおちこぼれのふりをするのは』
『仕方ないよ。俺が目立ち過ぎると命を狙われるんだし……』
実を言えばレナは実力的には既にナオにも劣らぬ能力を身に着けていた。だが、それを敢えて隠して生活を送る。理由としては第一王女のナオよりも目立ち過ぎると色々と問題があり、もしも不遇職のレナよりもナオが劣っていると知られれば彼女の立場が危うい。
長年にわたって王子が生まれないせいでバルトロス王国の王位継承権はナオに託される可能性が高く、そんな中でレナがナオよりも優秀なことを知られれば彼女を王位に就かせようとする派閥から危険視されて排除される可能性もあった。それを避けるためにレナは実力を隠して生きている。
『今は耐えるしかありませんよ。生き残るためには身に着けた力は決して誰にも知られないように気を付けてください』
『分かってる……でも、いつまで耐えればいいの?』
『そこは何とも言えませんね』
レナは実力を隠しながら生活する日々に嫌気がさすが、もしもレナの真の実力を知られれば彼女は瞬く間に殺されてしまう。それを避けるためには今は耐え凌ぎ、自由を得るまで耐え抜くしかない。
『この国はいずれ王妃の手に落ちます。その前にレナさんは能力を磨いて脱出する準備を整えてください』
『どうにか止めることはできないの?』
『無理ですね。もうこの国の支配者は国王ではありません。王妃が支配者と化しています』
既に王妃は王国内の権力を掌握しており、彼女に対抗できる存在は冒険都市のマリアだけだった。だが、そのマリアもアイラを人質に取られている状況では何も出来ない。アイラは王城内で暮らしており、それは逆に言えばアイラの命は王妃が握っている。
仮にレナ一人が逃げ出した場合、残されたアイラを王妃が逃すはずがない。だからレナは王妃がこの国を完全に掌握する前に家族と共に逃げる必要があった。そのためにレナは実力を磨き、何時の日か訪れる王妃が国を手にする時まで耐え凌ぐ。
『王妃から逃れたらとりあえずはヨツバ王国へ向かいましょう。レナさんもハヅキ家の血筋ですから受け入れてくれるでしょう』
『ヨツバ王国か……エルフの国だっけ?』
『そうです。いくら王妃でもヨツバ王国には手を出せませんからね。まあ、ヨツバ王国の中にも王妃と繋がっている輩はいるでしょうが、ハヅキ家に保護されれば下手に手だしされることはありません』
『だといいけど……』
バルトロス王国が王妃の手中に収まったとしてもヨツバ王国に亡命すればレナの命は助かるはずだった。アイラは元々はハヅキ家の一員であり、彼女と共にヨツバ王国に逃げ切ればレナは生き延びられる。但し、その場合はレナはハヅキ家の跡取りとして暮らさなければならない。
『ヨツバ王国に行けばレナさんはきっと跡取りとして教育を受けることになりますね。もしかしたら婚約者もすぐに用意されるかも……』
『ん?何かいった?』
『いいえ、何も……』
アイリスは敢えてレナにとっては不都合な情報は伝えず、今は生き延びるために彼女のサポートに徹した――
※レナが女の子に生まれていたらバルトロス王国は王妃に掌握されるバッドエンドルートは確実です。
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