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蛇足編
閑話 《ダインとバルの過去その2》
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『僕は家から逃げ出してきたんだ……あいつら、僕を殺すつもりだと知ってここまで逃げてきたんだ』
『その話、本当かい?』
『別に信じなくてもいい……言っておくけど僕を警備兵に突き出すつもりなら自分で死んでやるからな!!』
ダインは隠し持っていた短剣を取り出し、それを見てバルは驚いた。彼が持っていた短剣はバルが所持していた物であり、いつの間にか彼女はダインから短剣を盗まれていた。油断していたわけではないが自分から短剣を盗んだ彼にバルは感心する。
『あんな奴等のところに戻るぐらいなら死んだ方がマシだ……もう邪魔しないでくれよ!!』
『馬鹿だねあんた……死んで何になるんだい?ここで死ぬより自分を殺そうとした奴等に復讐したいと思わないのかい?』
『……えっ!?』
バルの言葉にダインは呆気に取られた表情を浮かべ、普通の人間ならば自殺を図る子供がいるとしたら生きることの大切さを説くのだろうが、バルは普通の人間ではなかった。
『ここであんたが死んで何になるんだい?あたしだったら自分を殺そうとした奴等を一人たりとも許しちゃおかないね。どんな手を使っても仕返ししてやるよ』
『か、簡単に言うなよ!?あいつらがどんなにやばい連中なのか知らないからそんなことを言えるんだ!!』
『でも、あんただって本当は死にたくないだろ?自分をいじめてきた奴等に復讐できるならしたいと思ってんだろ?』
『そ、それはまあ……』
ダインはバルの言葉に言い返せず、もしも自分を痛めつけた連中に仕返しできる方法があればと真っ先に実行していた。そんな彼の話を聞いてバルは笑みを浮かべた。
『それならあたしがあんたの復讐の手伝いをしてやるよ』
『て、手伝い?』
『あたしがあんたを徹底的に鍛えてやる。あんたが一人で生きていけるぐらいの力を身に付けたら、あとは好きにすればいい。あんたを苦しめた連中に復讐してもいいし、平穏な人生を求めてもいい。決めるのはあんたさ』
『何言ってんだか全然分からないんだけど……うわっ!?』
あっさりとバルはダインから短剣を取り上げると、彼女はダインの首根っこを掴んで黒虎のギルドへ向かう。
『丁度良かったね、実は知り合いのギルドマスターから冒険者ギルドを引き継いでくれと頼まれたんだよ。あんたも一緒に来な、年齢制限に引っかかるから冒険者にはしてやれないけど面倒を見てやるよ』
『ちょちょ、何言ってんだよあんた!?』
『あんたじゃない、バルさんと呼びな!!』
こうしてダインは半ば強制的にバルに引き取られ、それから数年ほど彼女の元で指導を受ける羽目になった――
――バルに面倒を見て貰った時はダインは自分の家出暮らしていた時よりも下手をしたら過酷な環境で育てられた。一人前の冒険者になるためにダインは毎日厳しい修行を課せられ、バルに徹底的に鍛え上げられる。
『飯が不味い!!ちゃんと教えた通りに作りな!!』
『ひいいっ!?』
今まで包丁も扱ったことがないダインだったが、バルの指導で毎日調理場で料理の練習を行う。自分が作った飯は自分で食べるように指示され、どんなに失敗しても料理は残さずに食べさせられた。
『うえっ……ま、まずい』
『よく噛んで食べな!!全部食べるまで何処へも行かせないよ!!』
『ひいいっ!?』
『美味しい料理が食べたいならさっさと上達しな!!』
ダインは必死に料理の腕を磨き、その過程で「調理」の技能を習得した。その他にも冒険者稼業で覚えておいて損はしない技能は片っ端からバルの指導で習得し、晴れてダインは冒険者になれる年齢を迎えるとギルドを出て行く。
『こら、何処へ行く気だい!?あんたはうちの冒険者になるんだよ!!』
『う、うるさい!!こんな所にいられるか、僕は別のギルドに入る!!』
反抗期に入ったダインはバルの元を離れて黒虎から飛び出し、別の街のギルドに加入して冒険者となった。バルの指導のお陰で彼は優秀な冒険者として活躍し、瞬く間に階級を上げた。それからしばらく経ってからレナと出会い、彼の仲間として活動を共にする。
ダインがバルと出会わなければ冒険者になることもなく、下手をしたら盗みの罪で警備兵に捕まっていたかもしれない。その点ではダインはバルに感謝はしているが、それでも彼女から受けた地獄の指導は今でもトラウマだった――
「――いい話じゃないですか。ダインさんはバルさんのお陰で生き延びることができたんですね」
「うむ、素晴らしい話だったな」
「お前等ちゃんと人の話を聞いてたのか!?僕がどんなにひどい目に遭わされたか……!!」
冒険都市の酒場にてダインはミイナとゴンゾウに昔話を語り、結局は夜が明けるまで話は続いた。彼の話は二人以外にも多くの人間の興味を抱かれ、いつの間にか席には大勢の人間が座り込んでいた。
「まさかバルちゃんにそんな過去があったなんて……」
「そういえば昔、バルが何処かから男の子を拾って育てていると聞いたわね。まさか貴方のことだったなんて知らなかったわ」
「ダイン殿はバル殿に鍛えられていたのでござるか」
「なるほど、しぶとさは黒虎のギルドマスター譲りというわけか」
「いや、何でお前等までいるんだよ!?人の苦労話を酒の肴にするなよ!!」
「まあまあ」
ダインの周りにはアイラ、マリア、ハンゾウ、シノビの姿も有り、他にも知り合いの顔がちらほらと見えた。まさかこんなにも人が集まるとは思わなかったが、ダインは疲れた表情で座り込む。
「はあっ……もう突っ込むのも疲れた。早くレナ帰ってこないかな……」
久々にレナの顔を見たくなったダインは呟き、一刻も早く自分が破産する前にレナが戻ってくることを祈る。
『その話、本当かい?』
『別に信じなくてもいい……言っておくけど僕を警備兵に突き出すつもりなら自分で死んでやるからな!!』
ダインは隠し持っていた短剣を取り出し、それを見てバルは驚いた。彼が持っていた短剣はバルが所持していた物であり、いつの間にか彼女はダインから短剣を盗まれていた。油断していたわけではないが自分から短剣を盗んだ彼にバルは感心する。
『あんな奴等のところに戻るぐらいなら死んだ方がマシだ……もう邪魔しないでくれよ!!』
『馬鹿だねあんた……死んで何になるんだい?ここで死ぬより自分を殺そうとした奴等に復讐したいと思わないのかい?』
『……えっ!?』
バルの言葉にダインは呆気に取られた表情を浮かべ、普通の人間ならば自殺を図る子供がいるとしたら生きることの大切さを説くのだろうが、バルは普通の人間ではなかった。
『ここであんたが死んで何になるんだい?あたしだったら自分を殺そうとした奴等を一人たりとも許しちゃおかないね。どんな手を使っても仕返ししてやるよ』
『か、簡単に言うなよ!?あいつらがどんなにやばい連中なのか知らないからそんなことを言えるんだ!!』
『でも、あんただって本当は死にたくないだろ?自分をいじめてきた奴等に復讐できるならしたいと思ってんだろ?』
『そ、それはまあ……』
ダインはバルの言葉に言い返せず、もしも自分を痛めつけた連中に仕返しできる方法があればと真っ先に実行していた。そんな彼の話を聞いてバルは笑みを浮かべた。
『それならあたしがあんたの復讐の手伝いをしてやるよ』
『て、手伝い?』
『あたしがあんたを徹底的に鍛えてやる。あんたが一人で生きていけるぐらいの力を身に付けたら、あとは好きにすればいい。あんたを苦しめた連中に復讐してもいいし、平穏な人生を求めてもいい。決めるのはあんたさ』
『何言ってんだか全然分からないんだけど……うわっ!?』
あっさりとバルはダインから短剣を取り上げると、彼女はダインの首根っこを掴んで黒虎のギルドへ向かう。
『丁度良かったね、実は知り合いのギルドマスターから冒険者ギルドを引き継いでくれと頼まれたんだよ。あんたも一緒に来な、年齢制限に引っかかるから冒険者にはしてやれないけど面倒を見てやるよ』
『ちょちょ、何言ってんだよあんた!?』
『あんたじゃない、バルさんと呼びな!!』
こうしてダインは半ば強制的にバルに引き取られ、それから数年ほど彼女の元で指導を受ける羽目になった――
――バルに面倒を見て貰った時はダインは自分の家出暮らしていた時よりも下手をしたら過酷な環境で育てられた。一人前の冒険者になるためにダインは毎日厳しい修行を課せられ、バルに徹底的に鍛え上げられる。
『飯が不味い!!ちゃんと教えた通りに作りな!!』
『ひいいっ!?』
今まで包丁も扱ったことがないダインだったが、バルの指導で毎日調理場で料理の練習を行う。自分が作った飯は自分で食べるように指示され、どんなに失敗しても料理は残さずに食べさせられた。
『うえっ……ま、まずい』
『よく噛んで食べな!!全部食べるまで何処へも行かせないよ!!』
『ひいいっ!?』
『美味しい料理が食べたいならさっさと上達しな!!』
ダインは必死に料理の腕を磨き、その過程で「調理」の技能を習得した。その他にも冒険者稼業で覚えておいて損はしない技能は片っ端からバルの指導で習得し、晴れてダインは冒険者になれる年齢を迎えるとギルドを出て行く。
『こら、何処へ行く気だい!?あんたはうちの冒険者になるんだよ!!』
『う、うるさい!!こんな所にいられるか、僕は別のギルドに入る!!』
反抗期に入ったダインはバルの元を離れて黒虎から飛び出し、別の街のギルドに加入して冒険者となった。バルの指導のお陰で彼は優秀な冒険者として活躍し、瞬く間に階級を上げた。それからしばらく経ってからレナと出会い、彼の仲間として活動を共にする。
ダインがバルと出会わなければ冒険者になることもなく、下手をしたら盗みの罪で警備兵に捕まっていたかもしれない。その点ではダインはバルに感謝はしているが、それでも彼女から受けた地獄の指導は今でもトラウマだった――
「――いい話じゃないですか。ダインさんはバルさんのお陰で生き延びることができたんですね」
「うむ、素晴らしい話だったな」
「お前等ちゃんと人の話を聞いてたのか!?僕がどんなにひどい目に遭わされたか……!!」
冒険都市の酒場にてダインはミイナとゴンゾウに昔話を語り、結局は夜が明けるまで話は続いた。彼の話は二人以外にも多くの人間の興味を抱かれ、いつの間にか席には大勢の人間が座り込んでいた。
「まさかバルちゃんにそんな過去があったなんて……」
「そういえば昔、バルが何処かから男の子を拾って育てていると聞いたわね。まさか貴方のことだったなんて知らなかったわ」
「ダイン殿はバル殿に鍛えられていたのでござるか」
「なるほど、しぶとさは黒虎のギルドマスター譲りというわけか」
「いや、何でお前等までいるんだよ!?人の苦労話を酒の肴にするなよ!!」
「まあまあ」
ダインの周りにはアイラ、マリア、ハンゾウ、シノビの姿も有り、他にも知り合いの顔がちらほらと見えた。まさかこんなにも人が集まるとは思わなかったが、ダインは疲れた表情で座り込む。
「はあっ……もう突っ込むのも疲れた。早くレナ帰ってこないかな……」
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