不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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蛇足編

閑話　《父親は大切にしろよ》

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監獄都市に到着したダインは監獄署長に襲われて激戦を繰り広げていた。監獄都市の中でも最強を誇る相手だが、ダインも数々の修羅場をくぐり抜けたことで互角に渡り合うだけの実力を身に着けていた。

「くっ……意外としぶといじゃないか」
「はあっ、はあっ……い、いい加減にしつこいんだよ！！」

ダインは闇の聖痕を使いこなして複数の自分の影人形を作り出し、遂に監獄署長を取り囲むことに成功した。闇の聖痕を手に入れてからダインの影魔法は大幅に強化され、今の彼は最強の闇魔導士へと成長していた。しかし、監獄署長も愛する我が娘を奪おうとする男を相手に一歩も引かない。

「だが、その程度の腕でミイネちゃんを守れると思い上がるな！！」
「だから何の話だよ！？」
「惚けるな！！殺してやる！！」
「くそぉおおっ！！こうなったらやってやらぁっ！！」
「は～い、そこまでよ～」

怒り狂う監獄署長とやけくそ気味になったダインが技を繰り出そうとした瞬間、パールが間に入ってきた。二人は慌てて止まり、勝負の邪魔をしてきた自分の妻に監獄署長は戸惑う。

「パ、パール……」
「もう十分でしょう？この子の実力ならミイネをしっかり守れます。ならもう戦う必要はないわ」
「しかし、こいつは可愛いミイネちゃんを傷者に！！」
「してねえよ！？」
「まあまあ、もういいじゃないですか」

とんでもないことを言い出した監獄署長にダインは突っ込むが、そんな彼の元にミイネとゴンゾウが訪れる。ゴンゾウは疲れているダインに皮製の水筒を渡す。

「ダインも落ち着け。まずはこれを飲め」
「あ、ああ……って、どうしたんだゴンゾウ！？その怪我は！？」
「さっき暇だからって看守長たちと戦ってたんですよ」

ゴンゾウの顔面は腫れあがり、身体の至る所に痣ができていた。ミイネによるとゴンゾウはダインが監獄署長と戦っている間に自分も看守長と戦っていたらしい。監獄都市の看守長は実力者揃いだが、ゴンゾウは彼等全員に勝った。

「流石は監獄都市だな。俺も前はここで収監されたこともあったが、あの時よりも猛者が増えていた」
「その猛者を相手に全勝するゴンゾウさんも大したもんですよ」
「はあっ、もう疲れた……いい加減に帰ろうぜ」
「そうですね、母さんの顔も見れましたし戻りましょうか」
「何だって！？ミイネちゃん、もう行っちゃうのかい！？せめて一か月ぐらいは居たら……」
「しつこいんだよ変態親父！！ほら、もう帰るぞ二人とも！！」
「へ、変態だと！？」

ミイネの用事が住んだことを確認するとダインは懐から水晶札を取り出す。この水晶札はダインがレナに頼み込んで借りた代物であり、水晶札にはマリアの転移魔法が付与されている。水晶札を使用すれば転移魔法が発動して三人は王国へ引き返すことができた。

監獄都市に良い思い出がないダインは早く帰りたいと思い、ゴンゾウとミイネと共に帰還の準備を行う。ミイネは最後にパールと抱き合い、別れの挨拶を行う。

「母さん、今度帰って来る時は母さんの様に立派な大人の女になって戻ってきます」
「あらあら、それは楽しみね～」
「おい、へぼ男！！ミイネちゃんに何かあったらお前を八つ裂きにしてやるからな！！」
「うるさいんだよ！！お前の方こそさっさと娘離れしろ！！このロリコン親父！！」
「どうどう」

帰還前にまたもや喧嘩を始めようとするダインと監獄署長をゴンゾウが宥め、転移魔法を発動するためにダインはミイネとゴンゾウと共に他の者達から離れる。この際にミイネはため息を吐き出す。

「全く、本当にあの人には困りましたね。いい加減にして欲しいです」
「……でも、お前のことを心配しているのは本当なんだろ」
「え？」
「別れの挨拶ぐらしちゃんとしてこいよ……次にいつ会えるかも分からないんだからな」
「は、はい」

ダインの言葉にミイネは驚いたがゴンゾウも意外そうな表情を浮かべた。二人は知らないだがダインの父親は死んでおり、真っ当な人間ではなかったがダインは別れの言葉も告げられなかった。監獄署長は苦手だがミイネのことを愛しているのは事実であり、彼はちゃんと別れを告げるように促す。

「……父さん、僕は大丈夫ですから心配しないでください」
「心配するに決まってるだろう！？ミイネちゃんは僕の娘なんだから……」
「全くあなたと言う人は……」

監獄署長の言葉にミイネは苦笑いを浮かべ、そんな二人のやり取りを見てダインは口元に笑みを浮かべる。ゴンゾウも黙って頷き、パールも微笑む。最後の別れの挨拶を告げるとダインは水晶札を使用して転移魔法を発動させた。

「おい、ダイン！！僕の娘をしっかり守れよ！！」
「あら？あなた彼の名前を……」
「うるさいな……あんたの代わりにちゃんと守ってやるよ！！」
「ダインさん」

別れ際に監獄署長はダインの名前を告げ、そんな彼にダインはミイネに肩を置いて言い返す。そして転移魔法は発動して３人はバルトロス王国へ帰還した――

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