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蛇足編
意外な参加者
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「おらおら!!全員まとめてかかってきな!!」
「待ってください!!それだと試験にならないのでは……」
「いいんだよ、体力を使い果たした奴と一対一で戦うなんて性に合わないからね!!」
「はあっ、はあっ……や、やってやる!!」
「全員でかかれ!!」
「うおおおおっ!!」
バルの言葉を聞いて体力試験を合格した者達は一斉に試験官たちに襲い掛かり、それに対してバルは意気揚々と大剣を構えた。最近はギルドの仕事が忙してく碌に身体を動かせなかったため、彼女は嬉しそうに大剣を振りかざす。
「本気で行くよ!!撃剣!!」
『うわぁあああっ!?』
バルの一振りで数名の剣士が吹き飛び、それを見た他の者達は慌てふためく。引退したとはいえ一時期はアイラに迫る剣士にまで上り詰めたバルに勝てる人間は早々おらず、彼女は持ち前の怪力を生かして大剣を振りかざす。
「おらおらおらぁっ!!」
「ひいいっ!?」
「つ、強い!?」
「まるで巨人族だ!?」
あまりのバルの強さに入団希望者は距離を取るが、そんな彼等に対して他の試験官も動き出す。真っ先に攻撃を仕掛けたのはシュンであり、彼は剣を振り抜くと風の斬撃を繰り出す。
「よそ見してんじゃねえ!!もう試験は始まってるぞ!!」
「ぎゃああっ!?」
「な、何だこの攻撃!?」
「魔法剣!?」
シュンが繰り出す風の斬撃を受けて次々と人が吹き飛び、誤って殺さないように斬撃の威力を抑えている。しかし、厳しい体力試験を合格した人間の中にはシュンやバルの猛攻を耐え凌ぐ猛者も何人か含まれていた。
「くそっ、人間如きに負けるかよ!!」
「そんな攻撃当たるかよ!!」
「へえ、威勢の良いのが来たね!!」
「おっ、ちょっとはやるじゃないか。面白いから相手をしてやるよ!!」
巨人族の剣士がバルの元へ向かい、獣人族の剣士が風の斬撃を躱しながらシュンの元へ向かう。王国以外にも他国から訪れた武芸者も数多く、中には剣聖に迫る実力者もちらほらといた。
バルとシュン以外の試験官の元にも腕利きの戦士が募り、その中には王国には存在しない流派の剣士や戦士も多い。しかも参加者の中には見知った顔もあった。
「行くぞ女!!私が勝てば団長は私がなるぞ!!」
「な、何を言い出すんですか!?」
「姉者が団長なら私は副団長だ!!」
「わわわっ!?」
ジャンヌの元に大剣を構えた褐色肌の女剣士が挑み、ミナの元には双剣を構えた褐色肌の女剣士が挑む。この二人の正体はアンジュとサーシャであり、二人ともレナの騎士団に入るために参加していた。
「私が勝てば団長の座を譲れ!!もしも私が負けたらお前の手下になってやる!!」
「それだと負けても合格を認めたことになるのですが!?」
「細かいことは気にしなくていい」
「気にするよ!?」
アンジュとサーシャが参加していたことにジャンヌとミナは驚くが、その一方で彼女達以外にも見知った顔の参加者が居た。その人物は圧倒的な力で試験官であるロウガを吹き飛ばす。
「ふんっ!!」
「ぐはぁっ!?ば、馬鹿な……何故、貴様がここに!?」
「お久しぶりですね。闘技祭以来ですか?」
ロウガを殴り飛ばしたのは女性であり、彼女とロウガが戦うのは初めてではなかった。闘技祭の本選にてロウガを破った「イリア」も試験に参加していた。彼女の正体はリーリスが外の世界を調べるために作り出したアンドロイドであり、塔の大迷宮から遠隔操作で操っている。
元々は外の世界の情勢を調べるために作り出したアンドロイドだったが、レナ達が塔の大迷宮を去った後にリーリスは騎士団の募集の情報を聞きつけて参加していた。闘技祭の頃よりも改良を加えた武装でイリアはロウガを圧倒した。
「レナさんの騎士団に入れば連絡も取れやすくなるので悪いですが本気で行かせてもらいます」
「何をわけのわからんことを……前の時のように簡単に敗れると思うな!!儂の真の実力を見せてやる!!」
「それは楽しみですね」
余裕の態度でイリアはロウガと向かい合い、彼女に対してロウガは激高しながら斬りかかった。その様子をガロは唖然とした表情で見つめる。
「な、何だあの女……ロウガさんを相手にあそこまで戦えるなんて何者だ!?」
「ガ、ガロ!?お前も手伝えよ!!こいつら結構やるぞ!?」
「おらぁっ!!」
「俺達を舐めるんじゃねえっ!!」
他の参加者の中にも最初の試験で体力を消耗しているはずなのに勇猛果敢に挑む人間も多く、予想外にも腕利きの試験官たちを相手に善戦していた。その様子をナオは驚いた表情を浮かべ、彼女の隣に立つ仮面の女剣士は満足そうに頷く。
「良かったわねナオちゃん、思っていたよりも気合の入った子が多いわ」
「は、はい。まさかここまで腕が立つ者が集まるとは……」
「そろそろ私も参戦しましょうか。大切な息子を守れるに値するかどうか……確かめて来るわね」
仮面の剣士の正体はアイラであり、彼女は笑みを浮かべて参加者の元に駆け出す。そんな彼女にナオは冷や汗を流す。
(本当はレナのためじゃなくて自分の腕を磨き直すために参加してるんじゃ……)
アイラが試験官に加わった本当の理由は鈍った肉体を鍛え直すためであり、息子に敗れて剣士を辞める決意をしたのに一か月も経たぬうちにアイラは再び剣を握っていた――
「待ってください!!それだと試験にならないのでは……」
「いいんだよ、体力を使い果たした奴と一対一で戦うなんて性に合わないからね!!」
「はあっ、はあっ……や、やってやる!!」
「全員でかかれ!!」
「うおおおおっ!!」
バルの言葉を聞いて体力試験を合格した者達は一斉に試験官たちに襲い掛かり、それに対してバルは意気揚々と大剣を構えた。最近はギルドの仕事が忙してく碌に身体を動かせなかったため、彼女は嬉しそうに大剣を振りかざす。
「本気で行くよ!!撃剣!!」
『うわぁあああっ!?』
バルの一振りで数名の剣士が吹き飛び、それを見た他の者達は慌てふためく。引退したとはいえ一時期はアイラに迫る剣士にまで上り詰めたバルに勝てる人間は早々おらず、彼女は持ち前の怪力を生かして大剣を振りかざす。
「おらおらおらぁっ!!」
「ひいいっ!?」
「つ、強い!?」
「まるで巨人族だ!?」
あまりのバルの強さに入団希望者は距離を取るが、そんな彼等に対して他の試験官も動き出す。真っ先に攻撃を仕掛けたのはシュンであり、彼は剣を振り抜くと風の斬撃を繰り出す。
「よそ見してんじゃねえ!!もう試験は始まってるぞ!!」
「ぎゃああっ!?」
「な、何だこの攻撃!?」
「魔法剣!?」
シュンが繰り出す風の斬撃を受けて次々と人が吹き飛び、誤って殺さないように斬撃の威力を抑えている。しかし、厳しい体力試験を合格した人間の中にはシュンやバルの猛攻を耐え凌ぐ猛者も何人か含まれていた。
「くそっ、人間如きに負けるかよ!!」
「そんな攻撃当たるかよ!!」
「へえ、威勢の良いのが来たね!!」
「おっ、ちょっとはやるじゃないか。面白いから相手をしてやるよ!!」
巨人族の剣士がバルの元へ向かい、獣人族の剣士が風の斬撃を躱しながらシュンの元へ向かう。王国以外にも他国から訪れた武芸者も数多く、中には剣聖に迫る実力者もちらほらといた。
バルとシュン以外の試験官の元にも腕利きの戦士が募り、その中には王国には存在しない流派の剣士や戦士も多い。しかも参加者の中には見知った顔もあった。
「行くぞ女!!私が勝てば団長は私がなるぞ!!」
「な、何を言い出すんですか!?」
「姉者が団長なら私は副団長だ!!」
「わわわっ!?」
ジャンヌの元に大剣を構えた褐色肌の女剣士が挑み、ミナの元には双剣を構えた褐色肌の女剣士が挑む。この二人の正体はアンジュとサーシャであり、二人ともレナの騎士団に入るために参加していた。
「私が勝てば団長の座を譲れ!!もしも私が負けたらお前の手下になってやる!!」
「それだと負けても合格を認めたことになるのですが!?」
「細かいことは気にしなくていい」
「気にするよ!?」
アンジュとサーシャが参加していたことにジャンヌとミナは驚くが、その一方で彼女達以外にも見知った顔の参加者が居た。その人物は圧倒的な力で試験官であるロウガを吹き飛ばす。
「ふんっ!!」
「ぐはぁっ!?ば、馬鹿な……何故、貴様がここに!?」
「お久しぶりですね。闘技祭以来ですか?」
ロウガを殴り飛ばしたのは女性であり、彼女とロウガが戦うのは初めてではなかった。闘技祭の本選にてロウガを破った「イリア」も試験に参加していた。彼女の正体はリーリスが外の世界を調べるために作り出したアンドロイドであり、塔の大迷宮から遠隔操作で操っている。
元々は外の世界の情勢を調べるために作り出したアンドロイドだったが、レナ達が塔の大迷宮を去った後にリーリスは騎士団の募集の情報を聞きつけて参加していた。闘技祭の頃よりも改良を加えた武装でイリアはロウガを圧倒した。
「レナさんの騎士団に入れば連絡も取れやすくなるので悪いですが本気で行かせてもらいます」
「何をわけのわからんことを……前の時のように簡単に敗れると思うな!!儂の真の実力を見せてやる!!」
「それは楽しみですね」
余裕の態度でイリアはロウガと向かい合い、彼女に対してロウガは激高しながら斬りかかった。その様子をガロは唖然とした表情で見つめる。
「な、何だあの女……ロウガさんを相手にあそこまで戦えるなんて何者だ!?」
「ガ、ガロ!?お前も手伝えよ!!こいつら結構やるぞ!?」
「おらぁっ!!」
「俺達を舐めるんじゃねえっ!!」
他の参加者の中にも最初の試験で体力を消耗しているはずなのに勇猛果敢に挑む人間も多く、予想外にも腕利きの試験官たちを相手に善戦していた。その様子をナオは驚いた表情を浮かべ、彼女の隣に立つ仮面の女剣士は満足そうに頷く。
「良かったわねナオちゃん、思っていたよりも気合の入った子が多いわ」
「は、はい。まさかここまで腕が立つ者が集まるとは……」
「そろそろ私も参戦しましょうか。大切な息子を守れるに値するかどうか……確かめて来るわね」
仮面の剣士の正体はアイラであり、彼女は笑みを浮かべて参加者の元に駆け出す。そんな彼女にナオは冷や汗を流す。
(本当はレナのためじゃなくて自分の腕を磨き直すために参加してるんじゃ……)
アイラが試験官に加わった本当の理由は鈍った肉体を鍛え直すためであり、息子に敗れて剣士を辞める決意をしたのに一か月も経たぬうちにアイラは再び剣を握っていた――
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