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蛇足編

閑話 《ゴウライの冒険伝説》

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――時は少し前に遡り、ホムラと別れたゴウライは塔の大迷宮に訪れていた。実は彼女がここへ来たのは初めてではなく、冒険都市に一番近い大迷宮ということもあって何度か訪れていた。


『ふはははっ!!吾輩が来たぞ!!』
「あ、ゴウライだ!?」
「ま、また来やがったのか!!」
「あれが噂の破壊剣聖か……」


ゴウライが現れると塔の大迷宮に集まっていた冒険者達は動揺した。彼女は定期的に大迷宮に訪れているため冒険者の間では有名だが、彼女が訪れる度に塔の大迷宮の危険度は跳ね上がる。


「ちょっとゴウライさん!!また他の冒険者の獲物を横取りする様な真似は辞めてくださいよ!?」
『ん?何の話だ?』
「忘れたとは言わせませんよ!!前にあんたが第四階層で暴れ回ったせいで俺達の獲物までいなくなったんだ!!」
『おお、そんなこともあったな!!』


第四階層は基本的には一般冒険者が訪れられる最高階層であり、第五階層に移動する方法を知らなければ第四階層までしか攻略はできない。ゴウライも大迷宮に訪れる度に第四階層に挑んでおり、その時に限って魔物は激減してしまう。

大迷宮に挑む冒険者は殆どが倒した魔物の素材を得るために訪れているのだが、大迷宮では魔物を倒して一定時間放置すると死体が消えてしまう。大迷宮では倒した魔物が再び現れるまで時間が掛かるため、ゴウライが暴れる度に第四階層では魔物が激減して冒険者の獲物が減ってしまう。


「あんたが来るとこっちが稼げないんだ!!頼むから第三階層当たりに行ってくれよ!!」
『何を言うか!!あんな何もない砂漠では暇で仕方ない!!しかも甲冑が熱くなって毎回日焼けするんだぞ!?』
「日焼けとか気にするのかあんた……いや、日焼けなんて問題じゃないだろそれ!?」


第三階層は砂漠地帯のためゴウライは身に着けている甲冑が熱を帯びるのを嫌がり、しかも砂漠に生息する魔物は彼女にとっては切りごたえのない相手ばかりなので不満があるらしい。


『砂漠の魔物共は歯ごたえが無くて満足できん!!まだ迷路に出てくる魔物の方がやりごたえがある!!第一に吾輩が誰を倒そうと文句を言われる筋合いはないぞ!!冒険者ならば実力で吾輩を越えて見せろ!!』
「うっ……」
「そ、そう言われても……」
「くそ、言い返せねえ……」


冒険者のゴウライが魔物を倒すこと自体は当たり前の話であり、第四階層で彼女がいくら暴れようと他の冒険者が文句を言うのは筋違いである。ゴウライだってわざと冒険者の獲物を横取りしているわけではなく、あくまでも彼女は腕試しのために挑みに来たに過ぎない。ゴウライは塔の大迷宮に入るために転移魔法陣に触れると、彼女は去り際に冒険者に伝えた。


『では吾輩は先に行かせてもらうぞ!!文句があるのなら吾輩よりも早く魔物を倒せ!!』
「こ、この……やってやる!!」
「絶対に負けないからな!!」
「あと、帰ってきたらサイン下さい!!」
『はっはっはっ!!』


豪快な笑い声をあげながらゴウライは転移魔法陣を発動させて大迷宮に転移した――





――ゴウライの意識が戻ると彼女は見知らぬ草原地帯に立っていた。ゴウライは第四階層に転移するはずだったが、何故か見覚えのない草原に移動している事に戸惑う。


『ぬうっ!?ここはどこだ!?まさか間違って第一階層に転移したか!?』


塔の大迷宮の第一階層は広大な草原が広がった空間だが、ゴウライが訪れた場所は草原地帯といっても遠目には山が見えた。第一階層は延々と草原が広がっているだけで山の類は存在せず、彼女は第一階層とは別の場所に転移した事を悟る。


『ここは何処だ?他の冒険者の姿はないようだが……んんっ!?』


草原を見渡すとゴウライは驚くべき光景を目の当たりにした。彼女の視界にゴブリンの上位種であるホブゴブリンよりも更に上の「ゴブリンキング」を発見した。しかも一体だけではなく、複数のゴブリンキングが群れを成して草原を歩いていた。


「ギアッ!!」
「ウギィッ!!」
「ギィアアアッ!!」
『こ、これは……!?』


ゴブリンキングの群れは獲物を奪い合っているらしく、外の世界でも滅多に見かける事はないほどの大きさのボアの死骸の前で群がっていた。その光景を見てゴウライは身体を震わせ、並の冒険者ならばゴブリンキングの群れを目の当たりにすれば恐れて逃げ出すだろうが彼女は違った。

外の世界ではゴブリンキングは滅多に見かけられず、しかも本来は群れを成して行動する存在ではない。ゴウライは生まれて初めて遭遇したゴブリンキングの群れに大興奮した。


『うおおおおおっ!!』
「「「ッ――!?」」」


ゴブリンキングの群れに向かってゴウライはデュランダルを引き抜いて駆け出し、興奮が収まらぬ様子でゴウライはゴブリンの群れに襲い掛かった――




※魔物視点だとゴウライはやばい奴です
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