不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

閑話 《魔王のその後》

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――レナに敗れた魔王は暗黒空間の中に放り込まれた。闇属性の魔力によって異空間に繋がる出入口が作り出され、この中に入った物体は時間経過の概念を受けない。氷は何時までも溶ける事はなく、熱い食べ物も冷める事はない。そんな空間に魔王は長い時を閉じ込められた。


『どれほどの時が経過した……』


暗黒空間の中では時間がどれだけ経過したのかもよく分からず、魔王は自分が封じ込められてから一瞬のような気もするし、もう100年以上も経過したような感覚に陥る。このまま永久に暗黒空間の中を彷徨い続ける事になるのかと考えた時、魔王の目の前に光り輝く渦が出現した。


『これは……!?』


光の渦の正体は誰かが空間魔法を発動させて外の世界に繋がる出入口を開いたからであり、何者かの手が魔王の身体を掴む。魔王は光の渦の中に引き寄せられ、遂に外界へと脱した。


『こ、ここは……何処だ!?』
「おお、これが魔王とやらですか、これは興味深いですね」
「そうそう、何とかできる?」


異空間から脱した魔王は最初に目にしたのは見知らぬ女性の顔だった。その女性の傍には自分を異空間に封じ込めたレナの姿が存在し、それに気づいた魔王はレナに飛び掛かろうとした。


『貴様!!殺してや……』
「うるさいですね」
『ぬああっ!?』


魔王がレナに飛び掛かる寸前に女性が魔王の身体を掴み、直後に電流が魔王を襲う。まるで掌にスタンガンでも仕込んでいるかのように女性の両手から電流が流れ、魔王は思わぬ攻撃に悲鳴をあげる。


『な、何だ貴様は!?魔法使いか!?』
「いやいや、それは正反対の存在ですよ」
『何をわけのわからんことを……だが、その力を奪わせてもらうぞ!!』


魔王は触れた相手の能力を吸収し、自分の物へと変換させる力を持つ。詠唱も無しで雷属性の魔法を扱える魔術師ならば能力を奪っておいても損はないと考えたが、何故か魔王は女性の能力を奪えない。それどころか女性からは生物ならば誰しもが持っているはずの魔力が一切感じられない。

先ほどから魔王は高圧電流に襲われているが、この電流に関しても魔力で生み出された物ではなく、そのために魔王は電流を吸収する事はできない。砂漠では魔王は熱を吸収して攻撃に使用していたが、あれは砂漠に漂う炎の精霊の力を吸収して生み出していただけに過ぎない。


『ば、馬鹿な!?これはどういう事だ!?何故能力が奪えない!?』
「能力?ああ、私は普通の人間とは違うので魔力なんて持ってませんよ。この電流だって機械の力で生み出しているに過ぎません。つまり私は貴方にとっては天敵なんですよ」
「流石はアンドロイド」


魔王を拘束する女性の正体はリーリスであり、実はレナはアチチ砂漠から帰還後にリーリスの元に赴いて魔王の事を相談した。異空間に閉じ込めた魔王をどうにかするため、彼女に相談したらリーリスは魔王の観察を行いたいという事で異空間から魔王を解放した。

事前に魔王の情報を集めた結果、リーリスはこの世界で唯一に魔王の影響を受けない存在だと判明した。彼女はアンドロイドであるが故に魔王から能力を奪われる事もなく、魔法の力も吸収される恐れはない。だからリーリスは魔王を封じ込める相手として相応しく、彼女はレナから借りた神器チェーンを利用して魔王を雁字搦めに拘束した。


「この魔王とやらの管理は私に任せてください。色々と実験しがいがありそうですから」
「それはいいけど、本当に大丈夫?」
「平気ですよ。実験が終われば後は私の方で始末しておきますから」
『ふざけるな小娘!!この我が……あがががっ!?』
「ごちゃごちゃうるさいスライムですね」


リーリスはチェーンに電流を流し込むと魔王は苦しげな声を上げ、その姿にレナは少しだけ同情したが相手は世界を滅ぼすために作られた兵器である。異空間に放置するだけでは安心できず、ここは勇者の技術で造り出したリーリスに任せるのが一番だった。


「リーリス、面倒事を押し付けて悪いね」
「いえいえ、魔王軍の人造兵器は私も気になってはいましたから気にしないでください。ほら、さっさとついて来なさい」
『こ、殺してやる!!必ずお前等を殺してやる!!』
「私が死んでもスペアがあるので復活しますよ。第二第三のリーリスが貴方を許しません」
「スペアとかあるんだ……」


チェーンで拘束した魔王をリーリスは引きずり回し、色々と不安はあるがレナは彼女に魔王の事を任せて戻る事にした――






※時系列的にはアチチ砂漠の騒動から一か月は経過しています。既にレナ達は王国に戻っている感じです。
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