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蛇足編
砂漠都市へ行く方法
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「他の砂船はここに来ないんですか?」
「その予定はありませんね……修理中の砂船を含めても他には二つの砂船しかありません」
「そんなに少ないのですか!?」
「砂船を素材にしているのは特別な樹木なんです。一から製作するにしても時間もお金もかかるので現状では砂船は三つしかありません」
海を渡る船とは違い、砂船の場合は砂漠を乗り越えるために特別な樹木を素材にしている。そのために大量生産はできず、現時点では三つの砂船を利用して商業が執り行われているらしい。
レナ達が乗ろうとしている砂船は砂漠都市と外界を行き来する船であり、他の二隻の船は主に他国との交流のために利用されている。実はアチチ砂漠は巨人国だけではなく、獣人国とも繋がっており、砂船を利用して両国は物資のやり取りを行っている。
「砂漠都市に行くためには砂船が修理するまでは待ってもらわないといけません。一応は小型の砂船ならあるにはあるのですが……」
「小型船もあるんですか?」
「それならそれに乗って行こうよ~」
「いえ、それは危険です!!小型船はあくまでも緊急避難用の船なのです!!通常の砂船と違って魔物に襲われる可能性が高くて一般の方は乗せない決まりなんです!!」
砂船は小型船も存在するが、そちらは安全面の問題で滅多に使用される事はないらしい。砂船に何らかの不具合が生じた場合を想定して小型船も運んでいるが、そちらの船は魔物が襲ってきた時は砂船と違って対処ができないらしい。
「小型船にも結界石や腐敗石を取り付けてありますが、やはり砂船と違って小さすぎるので襲い掛かる魔物は多いのです。特に嗅覚が鈍い魔物からは狙われやすく、砂船の場合は巨体なので大抵の魔物は怯んで近付こうとしませんが、小型船の場合は……」
「狙われやすいんですね」
レナ達は一応は小型船を見せてもらい、人数的には3、4人程度しか乗れない程に小さな船だった。移動速度に関しても砂船と比べると劣るらしく、その他にも魔物に襲われた場合は上手く戦えない。
「思っていたよりも小さいな……」
「ですが、この船なら砂漠を移動動できるのですね?」
「まさか本当にこれを使うつもりですか!?や、辞めておいた方がいいかと……第一にこの船を動かすには操縦者も必要です。もしも使うとしたら3人までしか運べませんよ」
「それなら私達は丁度3人だから大丈夫だよね?」
小型船を確認してレナ達は頷き、ここで三日間も待つよりも小型船に乗って砂漠都市に向かう事を決めた。だが、話を聞いていた船員は慌てて彼等を止めようとした。
「ま、待ってください!!レナさんが途轍もない実力者である事は理解しています!!しかし、砂漠を移動するのは本当に危険な行為なのです!!もしも船が転覆すれば我々は砂海に飲み込まれて死んでしまいますよ!?」
「大丈夫ですよ。要するに襲われなければいいんですよね?」
「え?いや、まあそれはそうですが……」
「レナ様、何か考えがあるのですか?」
砂漠都市に向かうには小型船を利用するしかなく、道中で襲われた場合はほぼ死を意味する。砂海ではまともに戦う事はできず、船から降りた時点で数秒で身体が飲み込まれてしまう。しかし、逆に言えば戦える術があるのならば問題はない。
「氷塊」
「レナ様!?」
「レナたん!?」
「な、何を!?」
レナは足元に掌を向けて氷塊の魔法を発動させると、両足に氷を纏う。自分の魔法で造り出した氷はレナの身体を傷つける事はなく、氷を直に触れても凍傷を起こす事はない。
両足にアイススケートのような氷の靴を身に着けると、レナは砂海に飛び込む。そして砂の上に着地する寸前に両足の氷塊を操作して身体を浮かせる事に成功した。
「これなら大丈夫でしょ?」
「な、なるほど……魔法の力ですか」
「凄い!!私もそれやりたい!!」
「いや、ティナがやると凍傷になるかもしれないから……」
「す、凄い……レナさんは浮揚魔法まで覚えていたのですか!?」
レナが砂海の上に浮かぶ光景を見てリンダは安堵するが、ここでティナはとあることを思いつく。
「あれ?レナたんの氷の魔法は空を飛べるんでしょ?それなら皆で大きな氷の上に乗って砂漠都市に向かおうよ!!」
「いやいや、そんなの無理だから……この魔法、結構神経を使うんだよ?」
初級魔法と言えども人が乗せる程の大きさの氷塊を生み出し、さらにそれに乗り込んで移動を行うのは相当な精神力を必要とする。いくらレナが初級魔法を得意とするとはいえ、彼はあくまでも支援魔術師であって初級魔術師ではない。
腕の立つ初級魔術師ならばティナのいう通りに氷を乗り物にして何処までも移動できるかもしれないが、それほどの腕前の魔術師は世界中を探したとしても見つかるかどうか分からない。レナでさえも短時間ならば氷の魔法で浮く事はできるが、それを何時間も持続させるだけの力は持ち合わせていない。
※最弱職の初級魔術師のルノ君の化物ぶりがよく分かる回です。
「その予定はありませんね……修理中の砂船を含めても他には二つの砂船しかありません」
「そんなに少ないのですか!?」
「砂船を素材にしているのは特別な樹木なんです。一から製作するにしても時間もお金もかかるので現状では砂船は三つしかありません」
海を渡る船とは違い、砂船の場合は砂漠を乗り越えるために特別な樹木を素材にしている。そのために大量生産はできず、現時点では三つの砂船を利用して商業が執り行われているらしい。
レナ達が乗ろうとしている砂船は砂漠都市と外界を行き来する船であり、他の二隻の船は主に他国との交流のために利用されている。実はアチチ砂漠は巨人国だけではなく、獣人国とも繋がっており、砂船を利用して両国は物資のやり取りを行っている。
「砂漠都市に行くためには砂船が修理するまでは待ってもらわないといけません。一応は小型の砂船ならあるにはあるのですが……」
「小型船もあるんですか?」
「それならそれに乗って行こうよ~」
「いえ、それは危険です!!小型船はあくまでも緊急避難用の船なのです!!通常の砂船と違って魔物に襲われる可能性が高くて一般の方は乗せない決まりなんです!!」
砂船は小型船も存在するが、そちらは安全面の問題で滅多に使用される事はないらしい。砂船に何らかの不具合が生じた場合を想定して小型船も運んでいるが、そちらの船は魔物が襲ってきた時は砂船と違って対処ができないらしい。
「小型船にも結界石や腐敗石を取り付けてありますが、やはり砂船と違って小さすぎるので襲い掛かる魔物は多いのです。特に嗅覚が鈍い魔物からは狙われやすく、砂船の場合は巨体なので大抵の魔物は怯んで近付こうとしませんが、小型船の場合は……」
「狙われやすいんですね」
レナ達は一応は小型船を見せてもらい、人数的には3、4人程度しか乗れない程に小さな船だった。移動速度に関しても砂船と比べると劣るらしく、その他にも魔物に襲われた場合は上手く戦えない。
「思っていたよりも小さいな……」
「ですが、この船なら砂漠を移動動できるのですね?」
「まさか本当にこれを使うつもりですか!?や、辞めておいた方がいいかと……第一にこの船を動かすには操縦者も必要です。もしも使うとしたら3人までしか運べませんよ」
「それなら私達は丁度3人だから大丈夫だよね?」
小型船を確認してレナ達は頷き、ここで三日間も待つよりも小型船に乗って砂漠都市に向かう事を決めた。だが、話を聞いていた船員は慌てて彼等を止めようとした。
「ま、待ってください!!レナさんが途轍もない実力者である事は理解しています!!しかし、砂漠を移動するのは本当に危険な行為なのです!!もしも船が転覆すれば我々は砂海に飲み込まれて死んでしまいますよ!?」
「大丈夫ですよ。要するに襲われなければいいんですよね?」
「え?いや、まあそれはそうですが……」
「レナ様、何か考えがあるのですか?」
砂漠都市に向かうには小型船を利用するしかなく、道中で襲われた場合はほぼ死を意味する。砂海ではまともに戦う事はできず、船から降りた時点で数秒で身体が飲み込まれてしまう。しかし、逆に言えば戦える術があるのならば問題はない。
「氷塊」
「レナ様!?」
「レナたん!?」
「な、何を!?」
レナは足元に掌を向けて氷塊の魔法を発動させると、両足に氷を纏う。自分の魔法で造り出した氷はレナの身体を傷つける事はなく、氷を直に触れても凍傷を起こす事はない。
両足にアイススケートのような氷の靴を身に着けると、レナは砂海に飛び込む。そして砂の上に着地する寸前に両足の氷塊を操作して身体を浮かせる事に成功した。
「これなら大丈夫でしょ?」
「な、なるほど……魔法の力ですか」
「凄い!!私もそれやりたい!!」
「いや、ティナがやると凍傷になるかもしれないから……」
「す、凄い……レナさんは浮揚魔法まで覚えていたのですか!?」
レナが砂海の上に浮かぶ光景を見てリンダは安堵するが、ここでティナはとあることを思いつく。
「あれ?レナたんの氷の魔法は空を飛べるんでしょ?それなら皆で大きな氷の上に乗って砂漠都市に向かおうよ!!」
「いやいや、そんなの無理だから……この魔法、結構神経を使うんだよ?」
初級魔法と言えども人が乗せる程の大きさの氷塊を生み出し、さらにそれに乗り込んで移動を行うのは相当な精神力を必要とする。いくらレナが初級魔法を得意とするとはいえ、彼はあくまでも支援魔術師であって初級魔術師ではない。
腕の立つ初級魔術師ならばティナのいう通りに氷を乗り物にして何処までも移動できるかもしれないが、それほどの腕前の魔術師は世界中を探したとしても見つかるかどうか分からない。レナでさえも短時間ならば氷の魔法で浮く事はできるが、それを何時間も持続させるだけの力は持ち合わせていない。
※最弱職の初級魔術師のルノ君の化物ぶりがよく分かる回です。
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