1,898 / 2,083
蛇足編
風の車輪
しおりを挟む
――風の精霊の力を借りれるようになった後、レナはマリアの元で指導を受けていた。色々と試した結果、レナの精霊魔法は攻撃よりも補助に扱う方が一番に役立つ。
『貴方の本職は支援魔術師、必然的に攻撃魔法よりも補助魔法を得意とする。それならば自分の長所を生かしなさい』
マリアの指導の元、レナは精霊魔法を利用して新しい魔法を生み出す。残念ながらシュンやハヤテのように風の斬撃を飛ばしたりする事はできないが、その代わりに二人にはできない方法でレナは新しい魔法を生み出す。
「風輪……とでも名付けようかな」
両足に風の渦巻を纏わせる事で高速移動が可能と成り、縮地ほど早くはないが常に移動し続ける事ができる。この魔法のお陰で無駄に体力も消費せずに移動を行えるようになり、迫りくる砂船に向かう。
流石に正面から突っ込むわけにはいかず、レナは砂船の側面へ移動を行う。今から砂船を止めるには乗船して舵を切るだけでは間に合わず、魔法の力で押し留めるしかない。
「ダインが居ればこれぐらいの船なんて止めれたんだろうけど……な!!」
影魔法の使い手であるダインならばもしかしたら砂船を止める事ができたかもしれず、彼が影魔法で巨大な影人形を作り出せば砂船を食い止められた可能性は十分にある。しかし、ダインのように影魔法を扱えないレナは自分の魔法で何とかしなければならない。
砂船を止めるためには船の勢いを落とすしかなく、岩山に激突する前に船を食い止めなければならない。そこでレナは砂船の側面に移動し、風輪を利用して船の側壁を駆け上がって船首へと移動を行う。
『風よ、力を!!』
船首に移動したレナは両手を前に構えると風の精霊を呼び出し、精霊魔法の力で大きな風の渦巻を作り出す。その結果、前方に発生した風圧によって一気に船の移動速度が低下し、岩山に衝突する前に船の移動速度を格段に落とす。
どうにか船の移動速度を落とした後、レナは今度は砂船から離れて岩山へと向かう。その途中で両手を地面に押し当てながら初級魔法の「土塊」を発動させた。
「これでどうだ!?」
砂船が衝突する前にレナは砂漠の砂を利用し、大量の砂をかき集めて砂山を作り上げる。岩山の前に現れた砂山がクッションの代わりとなり、砂船の正面衝突を防ぐ。
「わああっ!?」
「ティナ様、御下がりください!!」
「な、何だ!?何が起きてるんだ!?」
レナの活躍によって砂船が岩山に正面衝突は免れたが、砂船が砂山に突っ込んだせいで大量の砂が舞い上がる。視界が砂煙に封じられ、岩山に居た者達は慌てて避難する。
「ふうっ……一応、止まったか」
『油断しないでください!!敵が近付いています!!』
砂船を食い止めた事で安堵しかけたレナだったが、アイリスの声が聞こえて彼は顔を上げた。砂煙のせいで視界は何も見えないが、気配感知と魔力感知を発動させて様子を伺う。
(何だ!?何かが近付いている!?)
砂船の後方から竜種のように強力な気配と魔力を感知したレナは危機感を抱き、まずは邪魔な砂煙を吹き飛ばすために退魔刀を抜く。風の魔法で吹き飛ばすより、剣圧による一撃で砂煙を振り払う。
「おらぁっ!!」
退魔刀を全力で振りかざすと、凄まじい剣圧によってレナの正面の砂煙が晴れた。彼は何時の間にか砂船の甲板に乗り込んでおり、砂山で砂船を食い止める際に気付かぬうちに砂船の上に着地していたらしい。甲板には船乗りたちが倒れており、それを見たレナは声を掛ける。
「大丈夫ですか!?」
「う、ううっ……に、逃げろ!!早く逃げるんだ!?」
「奴がすぐそこまで迫ってる!!こ、殺されるぞ!?」
「えっ?」
錯乱しているのか船員は砂船が停止した瞬間、甲板から飛び降りようとした。だが、それを見たレナは慌てて彼等を止める。アチチ砂漠の砂は「砂海」と称される程に砂粒が細かく、何の装備も無しに飛び込めば人間など簡単に飲み込まれてしまう。
「落ち着いて下さい!!この高さから飛び降りたら生き埋めになりますよ!?」
「は、離せ!!どうせここに残っても殺されるだけなんだ!!」
「殺されるって……」
「く、来るぞ!!奴が姿を現す!!」
砂船の後部に乗っている船員が大声をあげ、レナは視線を向けると砂船の後方の砂丘が盛り上がっている事に気が付く。まるで地中から巨大な何かが姿を現わそうとしているように見え、嫌な予感を抱いたレナは退魔刀を構える。
――オァアアアアアッ!!
地中から姿を現わしたのは全身がゴーレムのように岩石の外殻に覆われた巨大な鯨であり、火竜の何倍もの大きさを誇る。炎龍や古代龍ほどではないがこれほどまでに巨大な魔物など竜種以外で見たのはレナも初めてだった。
地竜の成体よりも大きな鯨を見てレナの脳裏に最初に浮かんだのは「土鯨」なる魔物の名前だった。アチチ砂漠には土鯨と呼ばれる魔物が潜んでいるという噂を聞いているが、まさか本当にいた事に驚きを隠せない。しかも土鯨は真っ直ぐに砂船に向かってきた。
『貴方の本職は支援魔術師、必然的に攻撃魔法よりも補助魔法を得意とする。それならば自分の長所を生かしなさい』
マリアの指導の元、レナは精霊魔法を利用して新しい魔法を生み出す。残念ながらシュンやハヤテのように風の斬撃を飛ばしたりする事はできないが、その代わりに二人にはできない方法でレナは新しい魔法を生み出す。
「風輪……とでも名付けようかな」
両足に風の渦巻を纏わせる事で高速移動が可能と成り、縮地ほど早くはないが常に移動し続ける事ができる。この魔法のお陰で無駄に体力も消費せずに移動を行えるようになり、迫りくる砂船に向かう。
流石に正面から突っ込むわけにはいかず、レナは砂船の側面へ移動を行う。今から砂船を止めるには乗船して舵を切るだけでは間に合わず、魔法の力で押し留めるしかない。
「ダインが居ればこれぐらいの船なんて止めれたんだろうけど……な!!」
影魔法の使い手であるダインならばもしかしたら砂船を止める事ができたかもしれず、彼が影魔法で巨大な影人形を作り出せば砂船を食い止められた可能性は十分にある。しかし、ダインのように影魔法を扱えないレナは自分の魔法で何とかしなければならない。
砂船を止めるためには船の勢いを落とすしかなく、岩山に激突する前に船を食い止めなければならない。そこでレナは砂船の側面に移動し、風輪を利用して船の側壁を駆け上がって船首へと移動を行う。
『風よ、力を!!』
船首に移動したレナは両手を前に構えると風の精霊を呼び出し、精霊魔法の力で大きな風の渦巻を作り出す。その結果、前方に発生した風圧によって一気に船の移動速度が低下し、岩山に衝突する前に船の移動速度を格段に落とす。
どうにか船の移動速度を落とした後、レナは今度は砂船から離れて岩山へと向かう。その途中で両手を地面に押し当てながら初級魔法の「土塊」を発動させた。
「これでどうだ!?」
砂船が衝突する前にレナは砂漠の砂を利用し、大量の砂をかき集めて砂山を作り上げる。岩山の前に現れた砂山がクッションの代わりとなり、砂船の正面衝突を防ぐ。
「わああっ!?」
「ティナ様、御下がりください!!」
「な、何だ!?何が起きてるんだ!?」
レナの活躍によって砂船が岩山に正面衝突は免れたが、砂船が砂山に突っ込んだせいで大量の砂が舞い上がる。視界が砂煙に封じられ、岩山に居た者達は慌てて避難する。
「ふうっ……一応、止まったか」
『油断しないでください!!敵が近付いています!!』
砂船を食い止めた事で安堵しかけたレナだったが、アイリスの声が聞こえて彼は顔を上げた。砂煙のせいで視界は何も見えないが、気配感知と魔力感知を発動させて様子を伺う。
(何だ!?何かが近付いている!?)
砂船の後方から竜種のように強力な気配と魔力を感知したレナは危機感を抱き、まずは邪魔な砂煙を吹き飛ばすために退魔刀を抜く。風の魔法で吹き飛ばすより、剣圧による一撃で砂煙を振り払う。
「おらぁっ!!」
退魔刀を全力で振りかざすと、凄まじい剣圧によってレナの正面の砂煙が晴れた。彼は何時の間にか砂船の甲板に乗り込んでおり、砂山で砂船を食い止める際に気付かぬうちに砂船の上に着地していたらしい。甲板には船乗りたちが倒れており、それを見たレナは声を掛ける。
「大丈夫ですか!?」
「う、ううっ……に、逃げろ!!早く逃げるんだ!?」
「奴がすぐそこまで迫ってる!!こ、殺されるぞ!?」
「えっ?」
錯乱しているのか船員は砂船が停止した瞬間、甲板から飛び降りようとした。だが、それを見たレナは慌てて彼等を止める。アチチ砂漠の砂は「砂海」と称される程に砂粒が細かく、何の装備も無しに飛び込めば人間など簡単に飲み込まれてしまう。
「落ち着いて下さい!!この高さから飛び降りたら生き埋めになりますよ!?」
「は、離せ!!どうせここに残っても殺されるだけなんだ!!」
「殺されるって……」
「く、来るぞ!!奴が姿を現す!!」
砂船の後部に乗っている船員が大声をあげ、レナは視線を向けると砂船の後方の砂丘が盛り上がっている事に気が付く。まるで地中から巨大な何かが姿を現わそうとしているように見え、嫌な予感を抱いたレナは退魔刀を構える。
――オァアアアアアッ!!
地中から姿を現わしたのは全身がゴーレムのように岩石の外殻に覆われた巨大な鯨であり、火竜の何倍もの大きさを誇る。炎龍や古代龍ほどではないがこれほどまでに巨大な魔物など竜種以外で見たのはレナも初めてだった。
地竜の成体よりも大きな鯨を見てレナの脳裏に最初に浮かんだのは「土鯨」なる魔物の名前だった。アチチ砂漠には土鯨と呼ばれる魔物が潜んでいるという噂を聞いているが、まさか本当にいた事に驚きを隠せない。しかも土鯨は真っ直ぐに砂船に向かってきた。
0
お気に入りに追加
16,534
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。