1,879 / 2,083
蛇足編
原点回帰
しおりを挟む
「――あ~あ、やっぱり取り返せばよかったかな」
誰もいない路地裏でレナは空を見上げ、ペンダントを取り返さずに立ち去った事を少しだけ後悔していた。その気になればレナはあの場に居た人間を全員捕まえ、アリアのペンダントも取り戻す事はできた。しかし、どうしてもミレトに手を出す事は彼にはできなかった。
ミレトの父親を殺したのはレナであり、その点に関してはレナも負い目を感じていた。ミレトの父親のミドルはイレアビトの右腕にして最強の配下であったため、彼を倒さなければイレアビトを捕まえる事などできなかった。それにミドルも武人としてレナとの一騎打ちに挑み、その上で敗北したのだから後悔はない。
しかし、当人同士が納得していたとしても父親を殺されたミレトにとってはレナを恨んでも仕方ない。それでも彼は何度かレナのために協力してくれた。それを考えるとレナはミレトに手を出す事ができず、今回だけは見逃した。
「……あの三人、これからどうするつもりかな」
カノンだけでも捕まえておくべきかと考えたが、アマネの口ぶりだと王妃の遺産を手に入れるには彼女だけでは力不足であり、だからこそ憎き仇であるレナをも利用しようとした。仮にもカノンは経緯はどうであれ大将軍にまで上り詰めた実力者であり、彼女が行動を共にすれば問題はないだろう。
「はあっ……」
自分のした行為が本当に正しかったのかと思う中、レナは空を見上げて考え込む。気分を晴らすためにレナは久々に旅が出たいと考えた。冒険者として仕事を受けて他の地方に向かうのではなく、自分の意思で気ままに旅をしたい気分に陥る。
「そうだ、ダイン達が監獄都市に向かうみたいだし、一緒に付いて行こうかな?」
まだダイン達は冒険都市に滞在しており、彼等はマリアの都合が付けば監獄都市に転移魔法で向かう予定だった。その旅にレナは参加し、昔のように楽しく旅をして気分を晴らそうかと考えた。だが、そんな彼の前に意外な人物が姿を現す。
「あんた、そんなところで何してんだい?」
「その声は……バル?」
声の聞えた方に視線を向けると、そこにはバルの姿があった。彼女は買い物帰りなのか大量の荷物を抱えており、レナを発見すると丁度いいとばかりに荷物を差し出す。
「あんたとここで会えたのが幸いだったね。荷物を運ぶのを手伝ってくれよ、ほら早く!!」
「え~……依頼ならちゃんと冒険者ギルドに申し込んで手続きを」
「いいからさっさと手伝いな!!上司命令だよ!?」
いくらS級冒険者といっても自分が所属するギルドのギルドマスターには逆らえず、渋々とレナはバルから荷物を受け取ると空間魔法で異空間に送り込む。彼女が買い込んだのは食料品の類であり、黒虎のギルドまで向かう。
「こうしていると懐かしいね、最初の頃はよく買い物にあんたを手伝わせていたよ」
「そういえばそうだね」
昔はレナはバルの頼みで彼女の買い物によく付き合い、荷物の類を運ぶ仕事もしていた。冒険者の仕事の合間に行い、手伝いの代わりに食堂で飯を食べさせてもらった。
今と比べてレナは黒虎のギルドに立ち寄る機会は少なく、時々S級冒険者として指名依頼がある時だけ赴く。最近は久々に冒険者の仕事をしてきたが、今は昔程に仕事を受ける理由はない。生活のために冒険者稼業に専念していたが、王族として復帰したレナはもう生活には困らない。
「冒険者か……」
「ん?何だい急に……何かあったのかい?」
「いや、冒険者というのは冒険をする者という意味なんだよね」
「まあ、間違ってはいないね。一般人からは魔物退治の専門家と思われる事が多いけど、あたし達の本文は冒険を行うのが仕事だよ」
冒険者は本来は魔物退治を主とする仕事ではなく、危険を承知で冒険を行う者を意味する。大昔は魔物がまだ今ほどに存在しない時代では、冒険者は未開の地に訪れて調査を行うのが仕事だった。
「今の時代、冒険者が冒険をする事ができる場所なんて殆ど残っていないからね。探せば何処かにまだ誰も発見していない土地もあるかもしれないけど、昔よりも魔物が増えた自体では冒険する余裕もないからね」
「そっか……」
「あんたが深淵の森で見つけた遺跡のように世界にはまだ誰も探してない土地もあるかもしれない。だけど、そんな物を探せるのは実力もあってそれでいながら暇人のやる事だよ。もう今では冒険者が冒険するなんて時代遅れさ」
「時代遅れか……」
バルの言葉を聞いてレナは空を見上げ、今まであまり意識はしてなかったがレナは自分が冒険者である事を自覚する。そしてバルの言う通り、今のレナは実力もあるのに暇を持て余している冒険者の条件に合い、彼は決意した。
「ありがとう、バルのお陰で新しい目標ができたよ」
「そうなのかい?よく分からないけど、それは良かったね」
「うん……よし、やるか!!」
目標が定まったレナは早々に黒虎のギルドへ向かい、荷物を返して自分の屋敷へと向かう――
誰もいない路地裏でレナは空を見上げ、ペンダントを取り返さずに立ち去った事を少しだけ後悔していた。その気になればレナはあの場に居た人間を全員捕まえ、アリアのペンダントも取り戻す事はできた。しかし、どうしてもミレトに手を出す事は彼にはできなかった。
ミレトの父親を殺したのはレナであり、その点に関してはレナも負い目を感じていた。ミレトの父親のミドルはイレアビトの右腕にして最強の配下であったため、彼を倒さなければイレアビトを捕まえる事などできなかった。それにミドルも武人としてレナとの一騎打ちに挑み、その上で敗北したのだから後悔はない。
しかし、当人同士が納得していたとしても父親を殺されたミレトにとってはレナを恨んでも仕方ない。それでも彼は何度かレナのために協力してくれた。それを考えるとレナはミレトに手を出す事ができず、今回だけは見逃した。
「……あの三人、これからどうするつもりかな」
カノンだけでも捕まえておくべきかと考えたが、アマネの口ぶりだと王妃の遺産を手に入れるには彼女だけでは力不足であり、だからこそ憎き仇であるレナをも利用しようとした。仮にもカノンは経緯はどうであれ大将軍にまで上り詰めた実力者であり、彼女が行動を共にすれば問題はないだろう。
「はあっ……」
自分のした行為が本当に正しかったのかと思う中、レナは空を見上げて考え込む。気分を晴らすためにレナは久々に旅が出たいと考えた。冒険者として仕事を受けて他の地方に向かうのではなく、自分の意思で気ままに旅をしたい気分に陥る。
「そうだ、ダイン達が監獄都市に向かうみたいだし、一緒に付いて行こうかな?」
まだダイン達は冒険都市に滞在しており、彼等はマリアの都合が付けば監獄都市に転移魔法で向かう予定だった。その旅にレナは参加し、昔のように楽しく旅をして気分を晴らそうかと考えた。だが、そんな彼の前に意外な人物が姿を現す。
「あんた、そんなところで何してんだい?」
「その声は……バル?」
声の聞えた方に視線を向けると、そこにはバルの姿があった。彼女は買い物帰りなのか大量の荷物を抱えており、レナを発見すると丁度いいとばかりに荷物を差し出す。
「あんたとここで会えたのが幸いだったね。荷物を運ぶのを手伝ってくれよ、ほら早く!!」
「え~……依頼ならちゃんと冒険者ギルドに申し込んで手続きを」
「いいからさっさと手伝いな!!上司命令だよ!?」
いくらS級冒険者といっても自分が所属するギルドのギルドマスターには逆らえず、渋々とレナはバルから荷物を受け取ると空間魔法で異空間に送り込む。彼女が買い込んだのは食料品の類であり、黒虎のギルドまで向かう。
「こうしていると懐かしいね、最初の頃はよく買い物にあんたを手伝わせていたよ」
「そういえばそうだね」
昔はレナはバルの頼みで彼女の買い物によく付き合い、荷物の類を運ぶ仕事もしていた。冒険者の仕事の合間に行い、手伝いの代わりに食堂で飯を食べさせてもらった。
今と比べてレナは黒虎のギルドに立ち寄る機会は少なく、時々S級冒険者として指名依頼がある時だけ赴く。最近は久々に冒険者の仕事をしてきたが、今は昔程に仕事を受ける理由はない。生活のために冒険者稼業に専念していたが、王族として復帰したレナはもう生活には困らない。
「冒険者か……」
「ん?何だい急に……何かあったのかい?」
「いや、冒険者というのは冒険をする者という意味なんだよね」
「まあ、間違ってはいないね。一般人からは魔物退治の専門家と思われる事が多いけど、あたし達の本文は冒険を行うのが仕事だよ」
冒険者は本来は魔物退治を主とする仕事ではなく、危険を承知で冒険を行う者を意味する。大昔は魔物がまだ今ほどに存在しない時代では、冒険者は未開の地に訪れて調査を行うのが仕事だった。
「今の時代、冒険者が冒険をする事ができる場所なんて殆ど残っていないからね。探せば何処かにまだ誰も発見していない土地もあるかもしれないけど、昔よりも魔物が増えた自体では冒険する余裕もないからね」
「そっか……」
「あんたが深淵の森で見つけた遺跡のように世界にはまだ誰も探してない土地もあるかもしれない。だけど、そんな物を探せるのは実力もあってそれでいながら暇人のやる事だよ。もう今では冒険者が冒険するなんて時代遅れさ」
「時代遅れか……」
バルの言葉を聞いてレナは空を見上げ、今まであまり意識はしてなかったがレナは自分が冒険者である事を自覚する。そしてバルの言う通り、今のレナは実力もあるのに暇を持て余している冒険者の条件に合い、彼は決意した。
「ありがとう、バルのお陰で新しい目標ができたよ」
「そうなのかい?よく分からないけど、それは良かったね」
「うん……よし、やるか!!」
目標が定まったレナは早々に黒虎のギルドへ向かい、荷物を返して自分の屋敷へと向かう――
0
お気に入りに追加
16,550
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記
鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身
父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年
折からの不況の煽りによってこの度閉店することに……
家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済
途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで
「薬草を採りにきていた」
という不思議な女子に出会う。
意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが……
このお話は
ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。