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蛇足編
私は負けない
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――大将軍の地位を与えられたとき、レミアは理解していた。自分はただのお飾りでしかないと彼女は気付いていた。レミアが大将軍に選ばれたのは王妃の意思であり、彼女は優れた才能を持つ子供を優遇する。だからレミアも王妃に気に入られ、大将軍の地位に就けた。
同じ大将軍でもレミアはミドルと違って大きな功績を上げたわけではなく、才能を買われて大将軍の地位を与えられたに過ぎない。何度かレミアはミドルと腕を競う機会はあったが、彼女はミドルに勝てた事は一度もない。それほどまでに二人の間には大きな実力差があった。
もう一人の大将軍だったカノンに至っては金で雇われただけの傭兵でしかなく、それでも彼女の能力は優秀なのは認めざるを得なかった。カノンは魔銃を使いこなし、時と場合によってはレミアよりも上手く立ち回る事ができる。正確はともかく、能力的には彼女は優秀な人間だと言える。
レミアは少し前までは他の大将軍であるミドルとカノンと比べ、自分が実力的に劣っていると考えていた。ミドルは歴代の大将軍の中でもシズネの父親のギランにも劣らぬ実力者であり、カノンは複数の魔銃を使いこなせるだけの技量を誇り、それに比べてレミアは二人ほどの武力も器用さも持ち合わせていない。
だから聖剣エクスカリバーを手に入れた時、レミアは強大な力を宿す武器を自分が扱える事に非常に喜んだ。この聖剣があればレミアは誰にも負けないと確信し、ようやく大将軍として相応しい力を手に入れたと考えた。相手がミドルだろうとカノンであろうと、聖剣を手にした自分ならば絶対に負けないと信じていた。
だが、そんな根拠のない自信は闘技祭で打ち砕かれた。闘技祭には聖剣などなくても強大な力を持つ人間は数多く存在し、その中の一人にレミアは完膚なきまでに敗れてしまった。彼女は聖剣の力を自分の実力だと思い込み、驕ってしまった。
闘技祭で無様に敗北した後、レミアは色々とあったが聖剣を返却して一から自分を鍛え直す事にした。聖剣を扱う事を辞めたわけではなく、彼女は聖剣を持つに相応しい人間になろうと心に誓う。
(強くなりたい……もう誰にも負けたくはない!!)
闘技祭で敗北した事でレミアは人生で一番の挫折感を味わい、それでも彼女は立ち直った。もう二度とあんな惨めな思いをしないために彼女は腕を磨き、そしてその力を発揮する時が訪れた。
「はぁあああっ!!」
『オアアッ……!?』
数十体の死霊に対してレミアは全身から聖属性の魔力を放ち、次々と死霊を浄化させていく。聖痕の力を完璧に使いこなし、彼女は自らの魔力を増幅させていく。闘技祭の時とは別人のように力を身に着けており、その姿を見たレナは驚きを隠せない。
レミアは勇者の血筋でもあり、彼女は聖痕に選ばれた人間でもある。驕りを捨てた彼女は真の実力を発揮し、地下迷宮内の死霊を一掃した――
――全ての死霊を浄化した後、レミアはレナと共に王都に存在する教会に訪れた。彼女は祈りを捧げると、改めてレナと向かい合って自分の気持ちを伝える。
「レナ王子……貴方は本当に素晴らしい御方です」
「え?い、いきなりどうしたの?」
「……貴方は生まれた時に不遇職と断定され、王族から追放されたと聞いています。しかし、貴方は実力を身に着けて王族の座を取り戻した」
「いや、別にそんな……」
「貴方は本当に凄い人間です」
修業の際にレミアは意識していたのはレナであり、彼は生まれた時に世間一般では不遇職扱いされている職業だと判明し、それを知った国王に追放された。しかし、追放後のレナは不遇職だからといって諦めずに自らを鍛え上げ、最終的には誰からも認められる程の実力者として戻ってきた。
レミアからすればレナは自分の境遇に腐らず、誰もが認める実力を身に着けて戻ってきた。今の彼を不遇職だからといって馬鹿にする人間など一人もおらず、自分の力を他人に認めさせてきたレナにレミアは憧れを抱く。
「私の人生で貴方ほど素晴らしい人間はおりません。大将軍として王族の方々に忠誠を誓うのは当然の事ですが、もしもレナ様の身に危険が及んだ場合、私の命に代えてもお守りする事を誓いましょう」
「そ、そういわれても……」
「レナ様、一つだけお願いがあります」
レミアは何時の間にかレナを王子ではなく様付けで呼んでおり、彼女は聖剣エクスカリバーを差し出す。その行為にレナは戸惑うが、レミアは彼に忠誠の証として聖剣を預ける。
「この聖剣はどうかレナ様がお預かりください」
「ど、どうして?俺じゃなくて姉上に預けた方がいいと思うけど……」
「いいえ、どうかレナ様に預かって欲しいのです」
「……そ、そう」
何だか知らない内にレミアに崇拝されているような気がしながらも、レナは彼女の言う通りに聖剣を預かる事にした。
※その後の聖剣エクスカリバー
レナ「とりあえず、包帯でぐるぐる巻きにして異空間に預けとこう」
エクスカリバー「(; ゚Д゚)エー」
同じ大将軍でもレミアはミドルと違って大きな功績を上げたわけではなく、才能を買われて大将軍の地位を与えられたに過ぎない。何度かレミアはミドルと腕を競う機会はあったが、彼女はミドルに勝てた事は一度もない。それほどまでに二人の間には大きな実力差があった。
もう一人の大将軍だったカノンに至っては金で雇われただけの傭兵でしかなく、それでも彼女の能力は優秀なのは認めざるを得なかった。カノンは魔銃を使いこなし、時と場合によってはレミアよりも上手く立ち回る事ができる。正確はともかく、能力的には彼女は優秀な人間だと言える。
レミアは少し前までは他の大将軍であるミドルとカノンと比べ、自分が実力的に劣っていると考えていた。ミドルは歴代の大将軍の中でもシズネの父親のギランにも劣らぬ実力者であり、カノンは複数の魔銃を使いこなせるだけの技量を誇り、それに比べてレミアは二人ほどの武力も器用さも持ち合わせていない。
だから聖剣エクスカリバーを手に入れた時、レミアは強大な力を宿す武器を自分が扱える事に非常に喜んだ。この聖剣があればレミアは誰にも負けないと確信し、ようやく大将軍として相応しい力を手に入れたと考えた。相手がミドルだろうとカノンであろうと、聖剣を手にした自分ならば絶対に負けないと信じていた。
だが、そんな根拠のない自信は闘技祭で打ち砕かれた。闘技祭には聖剣などなくても強大な力を持つ人間は数多く存在し、その中の一人にレミアは完膚なきまでに敗れてしまった。彼女は聖剣の力を自分の実力だと思い込み、驕ってしまった。
闘技祭で無様に敗北した後、レミアは色々とあったが聖剣を返却して一から自分を鍛え直す事にした。聖剣を扱う事を辞めたわけではなく、彼女は聖剣を持つに相応しい人間になろうと心に誓う。
(強くなりたい……もう誰にも負けたくはない!!)
闘技祭で敗北した事でレミアは人生で一番の挫折感を味わい、それでも彼女は立ち直った。もう二度とあんな惨めな思いをしないために彼女は腕を磨き、そしてその力を発揮する時が訪れた。
「はぁあああっ!!」
『オアアッ……!?』
数十体の死霊に対してレミアは全身から聖属性の魔力を放ち、次々と死霊を浄化させていく。聖痕の力を完璧に使いこなし、彼女は自らの魔力を増幅させていく。闘技祭の時とは別人のように力を身に着けており、その姿を見たレナは驚きを隠せない。
レミアは勇者の血筋でもあり、彼女は聖痕に選ばれた人間でもある。驕りを捨てた彼女は真の実力を発揮し、地下迷宮内の死霊を一掃した――
――全ての死霊を浄化した後、レミアはレナと共に王都に存在する教会に訪れた。彼女は祈りを捧げると、改めてレナと向かい合って自分の気持ちを伝える。
「レナ王子……貴方は本当に素晴らしい御方です」
「え?い、いきなりどうしたの?」
「……貴方は生まれた時に不遇職と断定され、王族から追放されたと聞いています。しかし、貴方は実力を身に着けて王族の座を取り戻した」
「いや、別にそんな……」
「貴方は本当に凄い人間です」
修業の際にレミアは意識していたのはレナであり、彼は生まれた時に世間一般では不遇職扱いされている職業だと判明し、それを知った国王に追放された。しかし、追放後のレナは不遇職だからといって諦めずに自らを鍛え上げ、最終的には誰からも認められる程の実力者として戻ってきた。
レミアからすればレナは自分の境遇に腐らず、誰もが認める実力を身に着けて戻ってきた。今の彼を不遇職だからといって馬鹿にする人間など一人もおらず、自分の力を他人に認めさせてきたレナにレミアは憧れを抱く。
「私の人生で貴方ほど素晴らしい人間はおりません。大将軍として王族の方々に忠誠を誓うのは当然の事ですが、もしもレナ様の身に危険が及んだ場合、私の命に代えてもお守りする事を誓いましょう」
「そ、そういわれても……」
「レナ様、一つだけお願いがあります」
レミアは何時の間にかレナを王子ではなく様付けで呼んでおり、彼女は聖剣エクスカリバーを差し出す。その行為にレナは戸惑うが、レミアは彼に忠誠の証として聖剣を預ける。
「この聖剣はどうかレナ様がお預かりください」
「ど、どうして?俺じゃなくて姉上に預けた方がいいと思うけど……」
「いいえ、どうかレナ様に預かって欲しいのです」
「……そ、そう」
何だか知らない内にレミアに崇拝されているような気がしながらも、レナは彼女の言う通りに聖剣を預かる事にした。
※その後の聖剣エクスカリバー
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