上 下
1,857 / 2,083
蛇足編

名刀集め

しおりを挟む
「レナ殿、ただいま戻ったでござる」
「あ、ハンゾウ……何処行ってたの?」
「少し周囲を偵察してきたでござる。何体かオオツノオークの生き残りがいたので始末もしてきたでござる」
「ありがとう」


ハンゾウが今回も護衛役としてレナと同行しており、彼女の報告を聞くと改めてハンゾウは優れた忍者だと再認識する。兄弟子のカゲマルも優秀だが、ハンゾウも彼に負けないくらい有能な忍者だった。


「レナ殿、今回の依頼が終わったら次の依頼にすぐに移行して欲しいでござる。期限が迫っている依頼があるので冒険都市に戻る前に次の依頼の達成をしないと間に合わないでござる」
「しょうがないな……それで次はどんな依頼?竜種でも倒せばいいの?」
「いや、ある意味では竜種よりも厄介な依頼でござる」
「どういう意味ですか?」


竜種を倒すよりも困難な依頼と聞かされてリンダは疑問を抱き、ハンゾウはレナ達の前に巻物を広げた。何のつもりかとレナは不思議に思うが、巻物には紅色の刀が描かれていた。


「これは和国に伝わる名刀が全て描かれている巻物でござる」
「その巻物がどうかした?」
「実は今回の依頼人はヨシテル様でござる」
「ヨシテル!?確か闘技祭に出場していた和国の代表の……」


ヨシテルは和国の将軍にして最強の剣士であり、油断していたとはいえゴウライをあと少しで倒すとこまで追い詰めた剣士でもある。ヨシテルは闘技祭が終了後は和国へ戻ったはずだが、そのヨシテルから直々に依頼が届いていた。


「ヨシテル殿の依頼は和国から脱走した犯罪者が盗み出した名刀の回収でござる」
「名刀の回収?」
「七大聖剣や七大魔剣には及ばずとも、和国ではこれまで様々な名刀が作られてきたでござる。その中でヨシテル殿が管理していた名刀の「月華」が盗まれたそうで取り返してほしいとの事でござる」
「月華……美しい名前ですね」
「でも、そんなのどうやって見つけるの?」


和国から盗まれた名刀の奪還が依頼されたが、月華が誰に盗まれたのか現在は何処にあるのか分からなけば探し様がない。しかし、それを見越してマリアは手を打っていた。


「レナ殿は緑影を覚えているでござるか?」
「うん、何度も命を狙われたからよく覚えてる」
「それはもう許して欲しいでござる……彼等は現在はマリア殿の配下として働いているでござる」
「そういえばそんな話を聞いた気がする」


ハヅキ家の跡取りとしてマリアが正式に認められた後、緑影と呼ばれるヨツバ王国が裏で育て上げてて暗殺者部隊はマリアの配下となった。現在はマリアのために動いており、その彼等の力も借りて和国から盗まれた名刀の捜索を行っているらしい。

ハンゾウとシノビも加えて緑影は調査を行った結果、名刀の在り処は発覚した。しかし、現在の名刀「月華」の所有者は厄介な事にとある組織と手を組んでいる事が発覚した。


「名刀「月華」を盗んだ犯人は旧帝国の残党と手を組んでいるのが発覚したでござる」
「旧帝国!?まだ残党が残っていたのか!!」
「あの悪名高い組織ですか……」
「何度もレナたんの狙った悪い人たちだよね!?」
「ぷるぷるっ!!」


旧帝国の名前を聞いてレナは驚き、旧帝国を支配していた王妃はもう死んだので勝手に組織も解散していると思われた。しかし、ハンゾウの調査によると旧帝国の残党は集まって何か悪だくみを仕掛けようとしているらしい。


「奴等は世界各地で封印されていた神器を回収し、それらを利用して力を手に入れようとているようでござる。拙者の調査によればどのような手段かは不明でござるが奴等は鎧型の神器を回収しているそうでござる」
「鎧型の神器?」
「何でも全身が真っ赤に染まった鎧でござる。そういえば深淵の森にある遺跡に保管されていた物と似ていたような……」
「えっ……」


深淵の森の遺跡にてレナはアダマンタイトで構成された建造物を発見し、仲を確認すると全身が真紅に染まった鎧が保管されていた。その鎧はあまりにも重たすぎてしかも人間しか装備できなかったため、持ち帰るのは断念した事を思い出す。

その鎧の神器と同じ型の神器を旧帝国は回収したらしく、その話を聞いてレナはアイリスと交信を行う。もしも旧帝国が神器を手に入れたとしたら面倒な事態に陥る。


『アイス食べたいな』
『せめて名前はちゃんと言ってください。ちなみに私はソフトクリームが大好きです』
『俺は全部チョコでできているお菓子が好きだった』
『それアイスじゃありませんから、見た目だけですから』


恒例のやりとりを行った後、レナはアイリスに旧帝国が回収した鎧型の神器を尋ねる。


『それで旧帝国の奴等は今度は何を仕出かそうとしてるの?あいつらが回収した神器は何?』
『旧帝国の残党が回収したのはレナさんが知っている鬼武者の試作品です』
『鬼武者?確か深淵の森の遺跡で保管されていた神器の名前だっけ?』
『そうです。旧帝国が手に入れたのは鬼武者が制作される前に作り出された試作品……平たく言えば失敗作です』


旧帝国の残党が入手したのはレナが発見した鬼武者が制作される前に作り出された鎧型の神器だが、彼女によれば人が扱えるような代物ではなく、旧帝国の残党が手にしたとしてもどうしようもない代物だと判明した。
しおりを挟む
感想 5,089

あなたにおすすめの小説

最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された「霧崎ルノ」彼を召還したのはバルトロス帝国の33代目の皇帝だった。現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が帝国領土に出現し、数多くの人々に被害を与えていた。そのために皇帝は魔王軍に対抗するため、帝国に古から伝わる召喚魔法を利用して異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出す。しかし、どういう事なのか召喚されたルノはこの帝国では「最弱職」として扱われる職業の人間だと発覚する。 彼の「初級魔術師」の職業とは普通の魔術師が覚えられる砲撃魔法と呼ばれる魔法を覚えられない職業であり、彼の職業は帝国では「最弱職」と呼ばれている職業だった。王国の人間は自分達が召喚したにも関わらずに身勝手にも彼を城外に追い出す。 だが、追い出されたルノには「成長」と呼ばれる能力が存在し、この能力は常人の数十倍の速度でレベルが上昇するスキルであり、彼は瞬く間にレベルを上げて最弱の魔法と言われた「初級魔法」を現実世界の知恵で工夫を重ねて威力を上昇させ、他の職業の魔術師にも真似できない「形態魔法」を生み出す―― ※リメイク版です。付与魔術師や支援魔術師とは違う職業です。前半は「最強の職業は付与魔術師かもしれない」と「最弱職と追い出されたけど、スキル無双で生き残ります」に投稿していた話が多いですが、後半からは大きく変わります。 (旧題:最弱職の初級魔術師ですが、初級魔法を極めたら何時の間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。