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蛇足編

閑話 《とある少年の物語》

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「ぷるぷる~ん♪」
「あはははっ、待ってよスラミン!!」


森の中を一人の少年とスライムが駆けまわっていた。彼等の後ろにはサイクロプスと黒狼種の群れが後に続き、少年は多数の魔物達と遊んでいた。


「キュロロロッ♪」
『ウォンウォンッ♪』
「ほら、皆こっちだよ!!」


魔物達を引き連れて少年は森の中を駆け抜けると、やがて遺跡のような場所を発見した。跳ねて移動していたスライムは何かに気付いたように立ち止まり、不思議そうな表情を浮かべる。


「ぷるんっ?」
「どうしたの?」


スライムが何かに気付いた事を見抜いた少年は彼を抱き上げると、遺跡の方に視線を向けた。少年は遺跡から何かを感じ取り、魔物達を置いて遺跡の中に入る。


「皆はここで待っててね」
「キュロッ!!」
「ウォンッ!!」


スラミンを頭に乗せて他の魔物達は待機させると、少年は遺跡の中に入ろうとした。しかし、彼が入ろうとした瞬間に遺跡の出入口の左右に並べられていた石像が目元を輝かせて動き始めた。


『ゴォオオオッ!!』
「ぷるるんっ!!」
「わっ!?ゴーレム!?」


石像がゴーレムが擬態した存在だとスラミンはいち早く気付き、少年に注意する様に頭の上で跳ねる。ゴーレムは動き出すと少年の元へと迫り、彼を押し潰そうとしてきた。

しかし、迫りくる2体のゴーレムに対して少年は両手を伸ばすと、一瞬にして掌に氷を生み出す。初級魔法の「氷塊」を利用して少年は氷の盾を作り出し、それを2体のゴーレムに打ち込む。


「ちょっとごめんね!!」
「ゴアッ!?」
「ゴオオッ!?」


ゴーレムたちは少年が造り出した氷の盾に衝突して転倒し、そのまま壁際まで近くの柱に叩きつけられる。この際にゴーレムの身体がに罅が入るが、それに気づかずに少年は何事も内容に遺跡の中へ入った。


「へえ~何だか不思議な雰囲気を感じるな……ちょっとした探検気分だね」
「ぷるぷるっ」


スラミンを頭に乗せたまま少年は遺跡の中を探索し、彼はタイムマシンの役割を持つ転移台まで辿り着く。転移台を見て少年は不思議に思い、何処かで見た覚えがあった。


「この台座、何処かで見た気がするな……そうだ!!この世界に召喚された時のあれと似てるんだ!?」
「ぷるんっ?」


実を言えば少年は地球から召喚された人間であり、自分がこの世界に転移した時の転移台とタイムマシンの転移台が似ている事に気が付く。少年は転移台を確認し、試しに上に乗ってみるが反応はしない。


「やっぱり動かないか……まあ、別に地球へは何時でも帰れるからいいけどね」
「ぷるんっ」
「でも、こんな場所にもこの台座があるなんて……不思議な話だな」


スラミンを抱えた状態で少年は台座から降りると、再び外へ戻った。外では少年が造り出した氷の盾によって柱に押し付けられたゴーレムの姿があり、必死にもがくが氷の盾はびくともしない。


『ゴオオッ!?』
「君達はそこで反省してなよ。しばらくすれば溶けると思うから」
「ぷるるんっ」


少年はゴーレムたちを破壊せずにその場を立ち去り、残されたゴーレムたちは氷が自然と消えるまで拘束されていた――





――少年が去った後、彼が乗った転移台の台座に異変が起きていた。実を言えばタイムマシンを起動させるには定期的に調整がする必要であり、本来ならば何百年も放置されていたタイムマシンが作動するはずがなかった。

しかし、タイムマシンの製作者は万が一の場合を想定して台座の上に人が乗った場合、その人間の魔力を吸い込む機能を設置した。台座を使用した人間が意識を失うのは無意識に魔力を奪われたのが原因であり、魔力を吸い上げればタイムマシンは自動に作動する。

この少年が乗った事で何百年も放置されていたタイムマシンは正常に機能を取り戻し、それどころか何百年も正常に稼働するようになった。この少年は膨大な魔力を有しており、その魔力量はマリアさえも凌駕する。歴史上で最強の魔術師でもある。



彼の名前は「ルノ」地球人ではあるが勇者と呼ばれる存在ではなく、後に初級魔法だけで世界を救った英雄と歴史に名前を刻む少年だった。



※本編でタイムマシンが何百年も放置されながら正常に起動したのはルノ君のお陰です(笑)本当はルノ君の世界にレナを送り込む案も考えたりしてました。
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