不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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蛇足編

監獄都市と海獄島

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「そういえばあいつ、人間……だったっけ？なんで人間の癖に鬼人化が使えるんだ？」
「分からない。もしかしたら巨人族の血を継いでいるのかもしれない」
「え？でも、巨人族って他の種族とは滅多に子供なんてできないんだろ？」
「ちょっとちょっと、何の話をしてるんですか？」

二人の話を聞いていたミイネは不思議そうな表情を浮かべ、ゴンゾウはジンが鬼人化の能力を扱えたのは巨人族の血をジンが継いでいるからだと思った。しかし、ミイネによればそれは有り得ない話である。

「ジンは僕の記憶が確かなら純粋な人間ですよ。監獄署長がそういっていたので間違いありません」
「え！？そうなの？」
「ええ、ジンを監獄に迎え入れる時に身元は調べています」
「馬鹿な……それならどうしてジンは鬼人化が扱えたんだ？」

鬼人化は巨人族にしか扱えない力であり、それなのに人間のジンが鬼人化を扱ったのは有り得ない話である。考えられるとしたらジンが巨人族の血を継いでいる人間ならば扱える可能性はあるが、ミイネはそれを否定した。

ジンが監獄都市に収監される際に彼の身元は調べられ、間違いなくジンの家系に巨人族はいない。そもそも巨人族は他の種族との間とは滅多に子供を設けず、第一に巨人族の血を継いだ人間の中で鬼人化が扱えた者が居たという話は聞いた事もない。

「ミイネ、ジンの事をもう少し詳しく聞かせてくれ」
「別にいいですけど……そんなに気になるんですか？」
「ああ、どうしても気になる」
「あの王妃が絡んでいるのなら僕もちょっと気になるな……」

ミイネはジンに強い興味を抱くゴンゾウとダインに困惑しながらも自分が知っている限りのジンの情報を伝える。そして驚愕の事実が判明した。

「えっ！？ちょっと待て、今なんて言った！？」
「だから……ジンが連れ出されたのは５年も前の話ですよ」
「５年、だと！？」

監獄都市からジンが王妃によって連れ出されたのは５年前の話だと判明し、その事実を聞いたダイン達は戸惑いを隠せない。彼等は闘技祭が開催される前にジンが連れ出されたのだと思ったが、実際にはそれよりもずっと前にジンが連れ出されていた事が判明した。

ジンは連れ出されたのは５年前だとしたら、まだダインもゴンゾウもレナと出会う前の話である。彼が森の中で暮らしていた時期に王妃はジンを監獄都市から連れ出し、その後の事はミイネも知らない。

「５年前に連れ出されたって……その時、僕達はまだ会ってもいないぞ！？」
「いったいどういう事だ？どうして王妃はジンを連れ出したんだ？」
「そもそも御二人の話を聞いていて不思議に思ったんですけど、ジンは確かに気が狂ってはいましたが鬼人化なんて能力は扱えませんでしたよ」
「何だって！？」

衝撃の事実がまたもや発覚し、あくまでもミイネの知る限りではジンが鬼人化なる能力を扱えた事は一度もないという。鬼人化の能力をジンが扱えるのであれば監獄都市に居た頃にミイネが知らないはずがない。ジンは普段から暴れていて看守も手を焼いていたが、鬼人化の能力を使用した事は一度もない。

「どういう事だ？ジンは監獄都市に居た頃は鬼人化を扱っていなかったのか？」
「いや、もしかしてだけど……まだ、その時は扱えなかったんじゃないか？」
「どういう事ですかダインさん？」

話を聞いていたダインは何かを思い出した表情を浮かべ、彼は忌まわしい過去の記憶を思い出す。まだダインがシャドウ家に居た頃、自分の家の人間が妙な事を話していた事を思い出す。

「僕の糞親父がずっと昔、王妃が海獄島で人体実験を行っているとか聞いた事がある。その時の僕は何の話か分からなかったけど、まさか……」
「海獄島だと！？監獄都市と同じく有名な監獄の事か！？」
「僕も母様から聞いた事がありますよ。何百年も前に無人島を監獄にした島だとか……」

海獄島の存在は有名であり、世界中の国々が犯罪を犯した人間を海獄島に送り込む。海獄島はとある竜種の縄張りであるため、船で移動する事はできないため現在では転移魔法陣などでしか移動手段はない。

監獄都市と違って海獄島に送り込まれた死刑判決が下された囚人に限り、海獄島に送り込まれた時点で死刑は執行されたに等しい。海獄島から脱走できた囚人は歴史上では一人も存在せず、過去に船を自作して逃げ出そうとした囚人の大半は海獄島の周辺の海域を縄張りにしている竜種に食い殺されるという噂だけは有名だった。

「糞親父の話が本当だとしたらもしかしてだけど、王妃がジンを連れ去ったのは海獄島に送り込んで人体実験するためだったんじゃないか？」
「人体実験……具体的に何をされるんですか？」
「そ、そこまでは知らないよ……だけどさ、ジンは監獄都市に居た頃は一応は普通の人間だったんだろ？もしかしたら人体実験を受けたせいでゴンゾウみたいに鬼人化の能力が扱えるようになったんじゃ……」
「馬鹿な……」
「でも、仮にそうだとしたら色々と納得がいくんだよ。ほら、王妃の傍に居た奴等を覚えてるか？」

ダインはゴンゾウに王妃の傍に仕えていた子供達を思い出させた。王妃はバルトロス王国の有力貴族の中でも跡継ぎになるはずだった子供達を自分の傍に置き、彼等を忠実な手駒へと育てていた。

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