上 下
1,824 / 2,083
蛇足編

デュランダルに認められた男

しおりを挟む
「……馬鹿な、我が聖剣の一撃を受け止めただと」
「受け止めたんじゃない……弾き飛ばしたんだよ」
「戯言を!!」


ギランはデュランダルの攻撃を正面から受けて生き延びたレナに動揺するが、そんな彼にレナは不敵な笑みを浮かべる。それを見たギランは激しく憤り、彼に目掛けてデュランダルを繰り出す。

退魔刀を再現したレナはデュランダルの攻撃を正面から受けると、今度は弾かれる事もなく受け切れた。先ほどのようにギランは能力は使用せず、正面から切り合う。


「はあああっ!!」
「おりゃあっ!!」
「ギ、ギラン様!?これはいったい……」
「ちょっと、貴女はギランさんの恋人でしょ!?早く何とかして下さい!!」


ミズネは起きて早々にギランが見知らぬ少年と切り合う姿を見て動揺し、そんな彼女にホネミンは早く二人を止める様に頼む。しかし、二人の戦いは更に激化していく。


「ふんっ!!」
「おっと、何度も引っかかるか!!」
「何だと!?」


縮地を発動させて背後に回ろうとしたギランに対し、それを先読みしてレナも縮地を発動して移動を行う。縮地は瞬間移動の如く高速で場所を移動する事ができるが、大柄なギランよりも小柄なレナの方が扱いこなせる。

背後に回ろうとしたギランの更に背後にレナは移動を行い、彼の背中に目掛けて蹴りを喰らわせた。思わぬ一撃を受けたギランは地面に倒れそうになるが、咄嗟にデュランダルを地面に突き刺して阻止する。一方でレナは退魔刀の効果時間がもう少しで切れる事に気が付く。


(物質変換は長くは持たない……次の攻撃でどうにかしないと)


物質変換の能力はせいぜいが数十秒しか継続せず、効果が切れると退魔刀は元の大剣に戻ってしまう。しかし、アダマンタイトで構成されたデュランダルに対抗できるのは同じくアダマンタイト製の退魔刀以外にはあり得ない。


「おのれ小僧……今度こそ吹き飛ばしてやる!!」
「……またか」


ギランはデュランダルを構えると、刃を振動させてレナに向けた。デュランダルの能力を解放すると刃が振動し、その振動が早いほどに強烈な衝撃波を繰り出す。しかし、それならばどうしてギランは最初から能力を使用しなかったのか、それは場所の問題だった。


(ここは建物がたくさんあるから聖剣の力を完全に解放したら大勢の被害が生まれる。だから聖剣を自由に扱えないんだ)


最初からギランが聖剣の力を解放させていた場合、城下町には大きな被害が生まれる。下手をしたら大勢の住民が死んでしまうかもしれず、だからこそギランはデュランダルを扱えなかった。実際の所は理由はそれだけではなく、レナのような少年に対して聖剣の力を使うなど彼の武人としての誇りも傷つく。しかし、得体のしれない能力を見せたレナを警戒してギランも本気で戦う。

現在のレナは一本道の街道に立っており、彼の後方には数十メートル先までは建物は存在しない。だからこそ聖剣で攻撃する絶好の機会ではあったが、レナは聖剣が繰り出される前に自分の退魔刀に蒼炎を再び纏う。


「来いっ!!」
「ふんっ!!今度は止められんぞ!!」
「や、止めてください!!ギラン様!!」
「危ない!?離れてください!!」


ミズネは慌てて二人の間に割り込んで止めようとしたが、それを見たホネミンが彼女に抱きついて止めた。ここまで来たらもう二人は止める事はできず、ギランはデュランダルを振りかざす。


「はぁあああっ!!」
「……不動!!」


聖剣が振り下ろされた瞬間、強烈な衝撃波がレナに向けて放たれた。それを見たレナは正面から受けるために防御の戦技を発動させ、更に退魔刀を地面に深く突き刺す。そして衝撃波を受ける寸前に自分自身も魔鎧を纏う。

退魔刀をしっかりと掴んだ状態でレナは魔鎧を纏い、衝撃波を正面から受け止めた。彼の身体が10メートルほど後退したが、それでも衝撃波を耐え凌ぐ。


『ぐぎぎっ……耐えたぁっ!!』
「ば、馬鹿なっ!?」


正拳の攻撃を受けて尚も立っているレナを見てギランは衝撃の表情を浮かべ、一方でレナの方は魔鎧と魔刀術を解除して膝を着く。流石に聖剣の攻撃を受けた影響でかなり身体に無茶をしたが、それでも生き延びる事に成功した。



――聖剣デュランダルが繰り出す衝撃波は強烈だが、カラドボルグのような雷撃やエクスカリバーの光の衝撃波程の威力はない。厳密に言えばデュランダルの衝撃波はそもそもが遠距離用の攻撃ではなく、接近戦用の攻撃に適している。相手に接近して衝撃波を直に叩き込むのがデュランダルの正しい使い方であり、距離がある相手に衝撃波を繰り出したとしても本来の威力は発揮しない。



ギランは聖剣を扱えるまでの力量を持ち合わせながら、聖剣の使い道を誤ってしまった。だが、それも仕方がない話であり、彼の人生で聖剣の能力を解放して戦う相手など何人もいない。レナという規格外の力を持つ存在だからこそ彼は聖剣を使ったが、今までに何度も聖剣所有者と戦った事があるレナは全ての聖剣の性質を理解し、有利に戦う事ができた。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界居酒屋さわこさん細腕繁盛記

鬼ノ城ミヤ(天邪鬼ミヤ)
ファンタジー
陸奥さわこ 3*才独身 父が経営していた居酒屋「酒話(さけばなし)」を父の他界とともに引き継いで5年 折からの不況の煽りによってこの度閉店することに…… 家賃の安い郊外へ引っ越したさわこだったが不動産屋の手違いで入居予定だったアパートはすでに入居済 途方にくれてバス停でたたずんでいたさわこは、そこで 「薬草を採りにきていた」 という不思議な女子に出会う。 意気投合したその女性の自宅へお邪魔することになったさわこだが…… このお話は ひょんなことから世界を行き来する能力をもつ酒好きな魔法使いバテアの家に居候することになったさわこが、バテアの魔法道具のお店の裏で居酒屋さわこさんを開店し、異世界でがんばるお話です

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。