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蛇足編

大迷宮に入る条件

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「冷静に考えればとんでもない事をしてたんだな……」
「良かったですね、偶然とはいえ私と出会えて……あ、もしかしたらアイリス様のお導きかもしれませんね」
「いや、あの時はアイリスは交信できなかったから」


アイリスは地球の人間(転生者)がいる場合、その人間の近くにレナが居た場合は未来を見通す事ができない。これは人間だけとは限らず、地球から持って来た動物や植物なども含まれる。但し、転移者や転生者がこの世界の人間と子供が授かった場合は子供の未来は見通せるため、あくまでもこの世界で生まれた存在ならばアイリスは未来を見通せる。

当時のホネミンは今のように特殊な肉体を持っていなかった事もあり、彼女の近くにいるとレナの未来を見通す事ができなかった。だからこそ大迷宮でホネミンとレナが遭遇したのは奇跡的な出会いであり、もしも彼女と出会っていなければ運命は大きく変わっていた。


「ホネミンと出会ってなかったらどうなってただろう」
「さあ、そればかりは想像もできませんね」


ホネミンと遭遇しなかった場合、レナ達は大迷宮を攻略できなかった可能性も高い。彼女の手助けもあった事でレナ達は色々と助けてもらい、また大迷宮を出た後もホネミンのお陰で窮地を脱した事もあった。少なくとも彼女が潜水船の事を教えなければ七魔将や炎龍を倒す事はできなかっただろう。


「こうして考えるとホネミンとも結構な付き合いだな……感覚的には前世から一緒に楽しくやってきた気がする」
「何故でしょうかね、私もそんな気がします。コトミンさんがスライムだったような気がしますよ」
「ははは、そんな馬鹿な」
「あはははっ」


二人でのどかに話しながらレナ達は巨大な塔に近付き、遂に目的との大迷宮へ辿り着いた。この時代から大迷宮の周囲には多数の露店が並んでおり、冒険者と思わしき人間達が行列を為していた。


「へえ、この時代から人はいるのか」
「ずっと昔からここには人が寄ってきますよ。大迷宮には魔物が近付けない仕組みですからね、だから戦えない人間も普通にやってきます」
「それなら街でも作ればいいのに」
「立地が悪いんじゃないですかね」


大迷宮は魔物が近付けない仕組みが施されており、この場所に居る限りはどんな魔物にも襲われる事はない。王国には存在しないが別の国では大迷宮の周囲に街を作る国も存在するらしい。


「朝早い時間帯ですけど、結構な人の数ですね」
「こいつら全員冒険者かな?」
「傭兵も混じっているかもしれませんが、殆ど冒険者でしょうね」


既に大迷宮の出入口には行列が並んでおり、入るには時間が掛かりそうだった。レナとホネミンは行列の最後尾に向かおうとすると、ここで行列を整理する兵士に呼び止められた。


「ちょっと待ちな!!あんたらも大迷宮に挑むつもりかい?」
「ええ、そうですけど……」
「それなら許可証か冒険者のバッジを見せてくれ」
「許可証?」
「何だ?何も知らないのか?大迷宮に挑めるのは冒険者か、許可証を与えられた人間だけだぞ。どっちも持っていないのなら大迷宮に入れる事はできない」
「えっ……そんな制度あったのか」


未来の世界ではレナは冒険者のバッジを常に身に付けていたので塔の大迷宮に挑む事ができたが、この時代では冒険者のバッジは持ち合わせていない。まさか冒険者以外の人間は許可証がなければ入れないなど知らず、仕方なく二人は行列を離れた。


「ちょっと困った事になりましたね。バッジがないと入れないとは……」
「そんな制度があったなんて……参ったな、お金を払えば入れるわけでもなさそうだし」
「近くの街に出向いて冒険者にでもなりますか?レナさんの実力なら簡単になれますよ」
「駄目だよ、冒険者になるためには身分を明かさないとならない。俺が冒険者になれたのはナオが身分を保障してくれたお陰だけど、この世界には俺の事を知っている人間なんかいないから身分も証明する事はできない」
「面倒ですね……」


レナは冒険者になれたのはナオが彼と出会った時、彼の身分を証明する事を記した証明書を渡してくれたお陰である。その証明書のお陰でナオとも知り合いのバルがレナの事を認め、彼は冒険者になれた。だが、証明書がない場合はレナは自分から身分を明かさなければならず、もしも偽れば鑑定の技能を持つ人間に見破られてしまう。

冒険者になるためにはレナが自らの正体を嘘偽りなく明かさなければならないが、彼は未来に生まれる予定の王族である事を話さなければならない。そんな話を信じてくれる人間がいるはずがなく、だからといって他の嘘を吐く事もできない。この時代で冒険者になる事は難しく、どうにか許可証とやらを手に入れなければならない。


「許可証とやらをまずは手に入れましょう。何処で貰えるんですかね?」
「お金が必要となるとまたホネミンの偽金を使うか……」
「その言い方はちょっと止めてくれませんかね」


二人は許可証を手に入れるために先ほどの兵士から話を聞く事にした。行列を整理する兵士の元に向かうと、彼は別の人間と話をしていた。
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