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蛇足編
閑話 《ギガンの夢》
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「――む、寝ていたか」
牙竜のギルドマスターのギガンは目を覚ますと、冒険者ギルドのギルド長室で寝ていた事に気が付く。彼は懐かしい夢を思い出し、身体を伸ばして首を鳴らす。
「結局、彼は何者だったんだ……」
ギガンは圧倒的な強さを誇る剣士の事を思い出し、当時の彼がもし戦いを挑んでいたら勝てたかは分からない。いや、恐らくは負けていただろう。ギガンはこれまでに数多くの剣士と相対し、その中には剣聖や和国の剣士も含まれる。だが、彼等よりもかつて一度だけ出会った剣士の方が何故か印象深かった。
剣士と別れた後に冒険都市に辿り着いたギガンは彼の事を探し回った。だが、いくら探しても彼らしき人物は見当たらず、あれから20年以上も経過したが未だに再会を果たしていない。あれほどの強さの剣士なのに彼の事を知る者はおらず、あの日の出来事は夢ではなかったのかと思う。
「……これさえなければ忘れる事もできるんだがな」
机の引き出しからギガンは石のような塊を取り出し、これはギガンが初めて倒した地竜の残骸だった。この残骸はギガンが地竜を倒した証拠でもあり、同時に例の剣士と出会った証拠でもある。この残骸が存在する限りはギガンが体験した出来事は全て現実であり、夢をみたわけではない。
「彼はいったい何者だったんだ……?」
剣士の事を思い返すだけでギガンは身体が震え、あれほどの強さの剣士があの時代に居た事に驚きを隠せない。だからこそ、彼とはもう一度会って話をしてみたかった。
「……そういえばゴンゾウの親友と似ていた気もするが、気のせいか?」
自分の弟子であるゴンゾウの友人にも優秀な剣士が存在し、闘技祭の優勝まで果たした少年の事を思い出す。夢の中で再会した剣士と容姿が非常によく似ており、もしかしたら彼の父親があの剣士ではないかと思ったが、それは有り得ない話だった。
ゴンゾウの親友の剣士はレナという名前で彼はこの国の王子だった。そんな彼の父親は先代国王であり、ギガンも顔は知っているがレナとはあまり似ていない。それに剣の達人は母親の方であって父親が何らかの武道の達人だとは聞いた事もないし、第一に先代の国王があのような荒野で地竜を相手に戦うはずがない。
「謎は深まるばかりか……」
ギガンは昔の思い出を思い返しながら引き出しに残骸をしまい、今日の政務に励む事にした――
――その頃、彼の弟子であるゴンゾウはダインとミイネと共に旅をしていた。三人は現在は獣人国を旅しており、広大に広がる森の中を彷徨っていた。
「ダイン……この道、さっき通らなかったか?」
「あ、あれ!?まさか道に迷った!?」
「もう、何してるんですか……」
ダインは地図を何度も確かめながら自分達の居場所を確認するが、そんな彼にゴンゾウとミイネは呆れてしまう。三人が森に入った理由は噂でこの森には珍しい魔物が現れるらしく、その魔物を倒して素材を手に入れれば高く売れると聞いたダインが二人を連れて森まで入ったのが切っ掛けだった。
彼は街で買った地図を頼りに進んでいたが、いつの間にか迷ってしまった。運悪く彼が購入した地図は偽物であり、その事に気付かずに森を進んでいたダインは頭を悩ませる。
「ああ、もう……こうなったら勘で進むしかない!!多分、こっちの方だ!!」
「本当に大丈夫か!?」
「まあ、ダインさんの勘は割と当たりますから……」
「ほら、行くぞ二人とも!!」
地図が当てにならないと判断したダインは自分の勘を信じて先へ進み、そんな彼に不安を抱きながらもゴンゾウとミイネは後に続く。数時間後、勘だけでダインは森の出口に辿り着いたが、結局は目当ての魔物と出会う事はなく、その代わりに森の中でたくさんの果物を手に入れて街に帰る事はできた――
※ダインも割と悪運が強いです。
~10年近く前~
バル「ああ、もう!!この地図読みにくいね!!もういい、勘で進むよ!!」
ダイン「ええっ!?」
※道に迷ったら勘を頼る癖が身に付いたのはバルのせいです
牙竜のギルドマスターのギガンは目を覚ますと、冒険者ギルドのギルド長室で寝ていた事に気が付く。彼は懐かしい夢を思い出し、身体を伸ばして首を鳴らす。
「結局、彼は何者だったんだ……」
ギガンは圧倒的な強さを誇る剣士の事を思い出し、当時の彼がもし戦いを挑んでいたら勝てたかは分からない。いや、恐らくは負けていただろう。ギガンはこれまでに数多くの剣士と相対し、その中には剣聖や和国の剣士も含まれる。だが、彼等よりもかつて一度だけ出会った剣士の方が何故か印象深かった。
剣士と別れた後に冒険都市に辿り着いたギガンは彼の事を探し回った。だが、いくら探しても彼らしき人物は見当たらず、あれから20年以上も経過したが未だに再会を果たしていない。あれほどの強さの剣士なのに彼の事を知る者はおらず、あの日の出来事は夢ではなかったのかと思う。
「……これさえなければ忘れる事もできるんだがな」
机の引き出しからギガンは石のような塊を取り出し、これはギガンが初めて倒した地竜の残骸だった。この残骸はギガンが地竜を倒した証拠でもあり、同時に例の剣士と出会った証拠でもある。この残骸が存在する限りはギガンが体験した出来事は全て現実であり、夢をみたわけではない。
「彼はいったい何者だったんだ……?」
剣士の事を思い返すだけでギガンは身体が震え、あれほどの強さの剣士があの時代に居た事に驚きを隠せない。だからこそ、彼とはもう一度会って話をしてみたかった。
「……そういえばゴンゾウの親友と似ていた気もするが、気のせいか?」
自分の弟子であるゴンゾウの友人にも優秀な剣士が存在し、闘技祭の優勝まで果たした少年の事を思い出す。夢の中で再会した剣士と容姿が非常によく似ており、もしかしたら彼の父親があの剣士ではないかと思ったが、それは有り得ない話だった。
ゴンゾウの親友の剣士はレナという名前で彼はこの国の王子だった。そんな彼の父親は先代国王であり、ギガンも顔は知っているがレナとはあまり似ていない。それに剣の達人は母親の方であって父親が何らかの武道の達人だとは聞いた事もないし、第一に先代の国王があのような荒野で地竜を相手に戦うはずがない。
「謎は深まるばかりか……」
ギガンは昔の思い出を思い返しながら引き出しに残骸をしまい、今日の政務に励む事にした――
――その頃、彼の弟子であるゴンゾウはダインとミイネと共に旅をしていた。三人は現在は獣人国を旅しており、広大に広がる森の中を彷徨っていた。
「ダイン……この道、さっき通らなかったか?」
「あ、あれ!?まさか道に迷った!?」
「もう、何してるんですか……」
ダインは地図を何度も確かめながら自分達の居場所を確認するが、そんな彼にゴンゾウとミイネは呆れてしまう。三人が森に入った理由は噂でこの森には珍しい魔物が現れるらしく、その魔物を倒して素材を手に入れれば高く売れると聞いたダインが二人を連れて森まで入ったのが切っ掛けだった。
彼は街で買った地図を頼りに進んでいたが、いつの間にか迷ってしまった。運悪く彼が購入した地図は偽物であり、その事に気付かずに森を進んでいたダインは頭を悩ませる。
「ああ、もう……こうなったら勘で進むしかない!!多分、こっちの方だ!!」
「本当に大丈夫か!?」
「まあ、ダインさんの勘は割と当たりますから……」
「ほら、行くぞ二人とも!!」
地図が当てにならないと判断したダインは自分の勘を信じて先へ進み、そんな彼に不安を抱きながらもゴンゾウとミイネは後に続く。数時間後、勘だけでダインは森の出口に辿り着いたが、結局は目当ての魔物と出会う事はなく、その代わりに森の中でたくさんの果物を手に入れて街に帰る事はできた――
※ダインも割と悪運が強いです。
~10年近く前~
バル「ああ、もう!!この地図読みにくいね!!もういい、勘で進むよ!!」
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※道に迷ったら勘を頼る癖が身に付いたのはバルのせいです
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