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蛇足編

鬼刃VS一刀両断

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――吸血鬼のゲインはレナの剣の師匠であるバルの母親の仇であり、そしてレナが剣鬼となる切っ掛けを与えた強敵でもある。剣鬼であるゲインを倒した事でレナは剣鬼の力に目覚め、もしもゲインがいなければレナの運命は大きく変わっていた。

まさかこの時代のゲインと遭遇するとは思わず、レナは反射的に空間魔法から剣を取り出す。路地裏では大剣のような大きな武器は使いにくいため、オリハルコンの長剣を取り出す。するとゲインは武器を構えたレナに対して笑みを浮かべる。


「分かる、分かるよ……君も剣鬼だね。僕の血が疼く」
「何ですかこの人……見るからに怪しい人ですね」
「いいから下がってろ……はあっ、面倒くさいな」


ゲインと向かい合ったレナは面倒そうに剣を構え、そんな彼にゲインは自分も腰に差していた長剣を抜く。二人は互いに向かい合うと、この時にゲインは両目を紅色に光らせて踏み込む。


「はああっ!!」
「くっ!?」


剣鬼の能力を発揮させてゲインは限界まで身体能力を高め、更に思考を加速させて踏み込む。ゲインの目から見たらレナはまるでスローモーションのように動いているように見えるだろうが、それを見込んでレナも剣鬼の力を覚醒させた。


「この野郎!!」
「おっと!!」


レナが剣を弾き返すとゲインは後ろに跳び、距離を置いてレナと向き合った。大剣ならば全力を出せるのだが、長剣だけで戦う場合はレナは思うように上手く実力を発揮できない。しかも相手が剣鬼とあっては手加減しようとしても身体の方が勝手に反応してしまう。


「ふふふ……君も身体が疼いているんだね。分かるよ、剣鬼同士が巡り合えばどちらかが死ぬまで戦いは終わらない。自分の意思に関係なく、身体が勝手に反応してしまう」
「それ、迷信だよ。俺は別にお前なんかどうでもいい」
「よく言うよ……まあ、君が戦いたくなくても僕は逃がすつもりはないけどね!!」


ゲインはレナに対して長剣を構えると、真っ直ぐに跳んできた。子供の頃に一度勝った相手とはいえ、前回の時はゲインの油断とアイリスの提案した奇策を用いて勝利したに過ぎない。最初からゲインが本気で戦っていれば子供の頃のレナなど相手にならなかった。

だが、今のレナにとってはゲインは強敵と呼べる程の相手ではなく、正面から踏み込んできたゲインに対してレナは片手で構えた長剣で攻撃を受ける。自分の全力の一撃を片手で防いだレナにゲインは目を見開く。


「馬鹿なっ!?」
「おらぁっ!!」
「ふぎゃっ!?」


ゴウライやゴンゾウと比べればゲインの力は圧倒的に劣り、様々な強敵との戦いを経て鍛えぬかれたレナの敵ではない。ゲインの攻撃を受けた直後にレナは拳を顔面にめり込ませ、彼を殴り飛ばす。


「ふがぁっ……ば、馬鹿なっ!?この力、本当に人間か!?」
「結構、鍛えてるんで」
「レナさん、遊んでないで早く行きましょうよ」
「お、おのれ!!調子に乗るな!!」


殴られた事で怒りを抱いたゲインは長剣を構えると、剣鬼の力を完全に覚醒させた。レナもかつて「鬼刃」という技を使っていたが、それと同じ剣技をゲインは繰り出すつもりらしい。

流石に長剣では次の攻撃は受けられないと悟ったレナは剣を地面に突き刺すと、空間魔法を発動させて大剣を取り出す。狭い路地裏では扱うのは困難だが、敵が正面から突っ込んでくる事が分かれば対処はしやすい。


「死ね!!」
「ふうっ……」


殺気を滲ませて突っ込んできたゲインに対し、反対にレナは心を落ち着かせて全力の力を引き出せるように意識を集中させる。この時にレナの瞳が元に戻ると、ゲインは全力で踏み込みながら剣を振り下ろす。


「鬼刃!!」
「一刀両断」


殺気と気合を込めて繰り出したゲインの一撃に対し、冷静で正確にレナは相手の剣に自分の大剣を叩き込む。その結果、路地裏に金属音が鳴り響くのと同時にゲインの身体が大きく吹き飛ぶ。


「ぐはぁあああっ!?」


派手に悲鳴を上げながらゲインは地面に転がり込み、彼の持っていた剣は粉々に砕け散った。一方で攻撃を仕掛けたレナは何事もなかったように大剣と長剣を異空間に戻し、倒れたゲインを一瞥してホネミンに告げる。


「早く行こう、ちょっと騒ぎ過ぎた」
「あれ、放っておいていいんですか?」
「どうせ追っては来れないよ。いくら吸血鬼でもあの怪我じゃすぐには治らない」


レナの繰り出した最強の剣技によってゲインの身体は切り裂かれはしなかったが、全身の骨に亀裂が走っていた。もしも彼が吸血鬼でなければ死んでいたかもしれない。

昔ならばゲインはレナにとっては強敵と言える存在だった。しかし、今のレナにとってはゲインはもう強敵と言える存在ではない。止めを刺そうと思えばできるが、彼が死ぬと未来に悪影響が生まれるのでここは見逃すしかなかった。


「他の人に気付かれる前に早々に立ち去ろう」
「そうですね、さっさと行きましょう」
「ウォンッ」
「ぷるんっ」


何事もなかったかのようにレナ達は気絶したゲインの横を通り過ぎ、残されたゲインは白目を剥いて倒れたまま動かなかった。




※ボツ案

ウル「ウォンッ(オシッコしたい)」
ゲイン「ぶへっ!?」

ウルにオシッコを引っかけられる書籍第二巻のラスボス
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