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蛇足編
旅行気分
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「――まさかこうしてレナさんと二人で旅行に行く日が来るとは思いませんでしたよ」
「旅行じゃなくて捜索だろ。それにプルミンもウルもいるし……」
「ぷるっくりんっ(せやで)」
「ウォンッ!!」
ヨツバ王国の領地にてレナとホネミンはウルに乗り込み、プルミンはウルの頭に乗り込む。ちなみに彼はサンドワームの胃液を吸収した事で酸性の液体を生み出せるが、最近になって直に触れても問題ないぐらいに酸性の液を操れるようになった。
「この間は驚いたよ。まさかプルミンが潜水船を運転していたなんて……」
「ぷるっくりんっ(驚いたか)」
「この世界のスライムが一番謎が多いんですよ。魔物の中ではとびぬけて頭もいいし、能力の方も個体差がありますからね」
「頭の良さならウルだって負けてないよ」
「ウォンッ?」
スライムは魔物の中でも一番に謎が多く、人語を完璧に理解して人間に対して敵意を抱かない。水場がある場所ならばどんな場所でも適応するが、熱に弱いという弱点は全てのスライムが共通している。また、寿命の概念がなくてスライムは何百年、何千年も生きられると言われている。
レナが飼っているスラミンも分裂能力を持ち合わせ、ヒトミンは元々はスラミンの分身だったがガーゴイルの核を吸収して自我を得た。プルミンはサンドワームに飲み込まれた後に胃液を吸収して生き延び、偶然にもホネミンと遭遇した。スライムの生命力の高さは侮れず、しかも変身能力まで持つ。
「そういえばレナさんは知ってますか?スライムの中にはシルバースライムという凄い経験値があるスライムが……」
「あ、見えた。あれが遺跡じゃない?」
ホネミンが言葉を言い終える前にレナは前方を指差すと、遺跡らしき建物が見えてきた。近付いてみると建物全体が苔に覆われており、大分長い時を人が出入りしていない事が伺える。
「おおっ、これは凄いですね。どうやら遺跡の様ですけど……」
「一応聞くけど、ここには遺跡を守る戦人形とかはいないよな?」
「そこら辺は何も聞いてませんね。まあ、今のレナさんの敵じゃないから話していなかっただけかもしれませんけど」
「簡単に言うなよ……」
「ウォンッ!!」
これまでの遺跡には侵入者対策として戦人形が設置されている事が多かったが、今回の遺跡にはそれらしき気配は感じられず、何事もなくレナ達は建物の中に入る事ができた。建物はかなり大きく、ウルの巨体でも問題なく入る事ができた。
「結構奥まで続いているな」
「気をつけてください、壁が迫ってきたり後ろから大岩が転がってくるかもしれませんよ」
「ぷるぷるっ(脅かすなよ)」
「この子、レナさん達のスライムと違って生意気な態度を取ってる気がします」
「急に何を言い出してるんだ」
「クゥ~ンッ……」
レナ達は通路を進むとやがて広い場所に辿り着き、以前にも遺跡の中で見かけた転移台を発見する。少し前に立ち寄った勇者の訓練場と同じく大人数が移動できる転移台が設置されており、どうやら同じ目的で造り出された機器らしい。
「ここもどうやら次世代の勇者を育成するための施設のようですね」
「じゃあ、これを使うとまた別の場所に転移するのか」
「多分、そうだと思いますけど……でも、この魔法陣の紋様が気になりますね。これ、時計みたいじゃないですか?」
「あれ、本当だ……ミレトの時の聖痕と似ているな」
転移台に刻まれた魔法陣は従来の転移魔法陣とは異なり、まるでミレトの時の聖痕と瓜二つの魔法陣だった。不思議に思ったレナは転移台に近寄ると、この時に転移台の近くにある台座が僅かに動く。
台座の異変に気付かぬまま転移台をレナが覗き込み、完全に停止しているのか触ってみても反応はない。ホネミンも転移台を調べてみるが、機能は完全に停止している。
「う~ん、見ただけじゃ壊れているかどうかは分かりませんね。だけどエネルギーが補給されていない感じです」
「ハルナを連れてきて充電させるか」
「いえ、今までの傾向から魔法陣を動かすのに必要なのは純粋な魔力です。レナさんが魔力を送り込むだけで動くかもしれません」
「魔力を?」
「確かレナさんは付与強化という技を使えましたよね?それと同じ要領で魔力を送れば反応するかもしれません。まあ、今は発動しなくて結構ですよ」
「こういうパターンだと暴走して厄介事に巻き込まれるからな……」
「ウォンッ(いつもの事)」
「ぷるんっ(厄介事を引き込む体質か)」
これまでの経験則から無暗に機器を動かすと問題事に巻き込まれてきたため、今回は不用意に転移台を作動するような真似はせずにレナは引き返そうとした。だが、この時に彼は転移台の傍の台座が動いている事に気が付く。
「あれ?この台座、何だか下に下がってない?」
「本当ですね。どうやら下に収納されてるみたいですけど……ちょっと待ってください、この形なんだか見覚えがあるような」
「形?」
ホネミンの言葉を聞いてレナは台座を観察すると、言われてみて台座の形がある物と似ている事に気が付く。そのある物とは地球ではよく見かけた物であり、台座の正体は大きな「電池」だと判明した。
「旅行じゃなくて捜索だろ。それにプルミンもウルもいるし……」
「ぷるっくりんっ(せやで)」
「ウォンッ!!」
ヨツバ王国の領地にてレナとホネミンはウルに乗り込み、プルミンはウルの頭に乗り込む。ちなみに彼はサンドワームの胃液を吸収した事で酸性の液体を生み出せるが、最近になって直に触れても問題ないぐらいに酸性の液を操れるようになった。
「この間は驚いたよ。まさかプルミンが潜水船を運転していたなんて……」
「ぷるっくりんっ(驚いたか)」
「この世界のスライムが一番謎が多いんですよ。魔物の中ではとびぬけて頭もいいし、能力の方も個体差がありますからね」
「頭の良さならウルだって負けてないよ」
「ウォンッ?」
スライムは魔物の中でも一番に謎が多く、人語を完璧に理解して人間に対して敵意を抱かない。水場がある場所ならばどんな場所でも適応するが、熱に弱いという弱点は全てのスライムが共通している。また、寿命の概念がなくてスライムは何百年、何千年も生きられると言われている。
レナが飼っているスラミンも分裂能力を持ち合わせ、ヒトミンは元々はスラミンの分身だったがガーゴイルの核を吸収して自我を得た。プルミンはサンドワームに飲み込まれた後に胃液を吸収して生き延び、偶然にもホネミンと遭遇した。スライムの生命力の高さは侮れず、しかも変身能力まで持つ。
「そういえばレナさんは知ってますか?スライムの中にはシルバースライムという凄い経験値があるスライムが……」
「あ、見えた。あれが遺跡じゃない?」
ホネミンが言葉を言い終える前にレナは前方を指差すと、遺跡らしき建物が見えてきた。近付いてみると建物全体が苔に覆われており、大分長い時を人が出入りしていない事が伺える。
「おおっ、これは凄いですね。どうやら遺跡の様ですけど……」
「一応聞くけど、ここには遺跡を守る戦人形とかはいないよな?」
「そこら辺は何も聞いてませんね。まあ、今のレナさんの敵じゃないから話していなかっただけかもしれませんけど」
「簡単に言うなよ……」
「ウォンッ!!」
これまでの遺跡には侵入者対策として戦人形が設置されている事が多かったが、今回の遺跡にはそれらしき気配は感じられず、何事もなくレナ達は建物の中に入る事ができた。建物はかなり大きく、ウルの巨体でも問題なく入る事ができた。
「結構奥まで続いているな」
「気をつけてください、壁が迫ってきたり後ろから大岩が転がってくるかもしれませんよ」
「ぷるぷるっ(脅かすなよ)」
「この子、レナさん達のスライムと違って生意気な態度を取ってる気がします」
「急に何を言い出してるんだ」
「クゥ~ンッ……」
レナ達は通路を進むとやがて広い場所に辿り着き、以前にも遺跡の中で見かけた転移台を発見する。少し前に立ち寄った勇者の訓練場と同じく大人数が移動できる転移台が設置されており、どうやら同じ目的で造り出された機器らしい。
「ここもどうやら次世代の勇者を育成するための施設のようですね」
「じゃあ、これを使うとまた別の場所に転移するのか」
「多分、そうだと思いますけど……でも、この魔法陣の紋様が気になりますね。これ、時計みたいじゃないですか?」
「あれ、本当だ……ミレトの時の聖痕と似ているな」
転移台に刻まれた魔法陣は従来の転移魔法陣とは異なり、まるでミレトの時の聖痕と瓜二つの魔法陣だった。不思議に思ったレナは転移台に近寄ると、この時に転移台の近くにある台座が僅かに動く。
台座の異変に気付かぬまま転移台をレナが覗き込み、完全に停止しているのか触ってみても反応はない。ホネミンも転移台を調べてみるが、機能は完全に停止している。
「う~ん、見ただけじゃ壊れているかどうかは分かりませんね。だけどエネルギーが補給されていない感じです」
「ハルナを連れてきて充電させるか」
「いえ、今までの傾向から魔法陣を動かすのに必要なのは純粋な魔力です。レナさんが魔力を送り込むだけで動くかもしれません」
「魔力を?」
「確かレナさんは付与強化という技を使えましたよね?それと同じ要領で魔力を送れば反応するかもしれません。まあ、今は発動しなくて結構ですよ」
「こういうパターンだと暴走して厄介事に巻き込まれるからな……」
「ウォンッ(いつもの事)」
「ぷるんっ(厄介事を引き込む体質か)」
これまでの経験則から無暗に機器を動かすと問題事に巻き込まれてきたため、今回は不用意に転移台を作動するような真似はせずにレナは引き返そうとした。だが、この時に彼は転移台の傍の台座が動いている事に気が付く。
「あれ?この台座、何だか下に下がってない?」
「本当ですね。どうやら下に収納されてるみたいですけど……ちょっと待ってください、この形なんだか見覚えがあるような」
「形?」
ホネミンの言葉を聞いてレナは台座を観察すると、言われてみて台座の形がある物と似ている事に気が付く。そのある物とは地球ではよく見かけた物であり、台座の正体は大きな「電池」だと判明した。
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