不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

技の極致

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「……お前、本当に森人族か?そんなに走れる奴なんて見た事ないぞ」
「私は生まれた時から魔法の才はありません。ですから身体だけを鍛え続けてきました。この程度の事で疲れたりはしません」
「そ、そうか……やるな」


息切れ一つせずにミノの後に続くリンダに流石のハルナも驚かされ、彼女は自分以外の人間でこれほど早く走り続けられる存在は初めて見た。ちなみに現在の移動速度は100キロを軽く超えており、マグマゴーレムの大群を振り切ろうとしていた。

このままの調子で走り続ければ目的地に辿り着けるはずだが、突如としてハルナを背負って走っていたミノの足が止まる。彼は何かを感じ取ったように立ち止まり、地面を睨みつけた。


「ブモォッ!?」
「うわっ!?何だ急に!?」
「どうしたのですか?」


マグマゴーレムの大群を振り切らなければならないときに立ち止まったミノにハルナとリンダは疑問を抱くと、ミノは地中から何かが近付いている事に気付いてその場を跳躍した。


「ブモォオオッ!!」
「おわっ!?」
「くっ!?」


唐突に跳び上がったミノにハルナは危うく背中から落ちそうになるが、リンダは即座に自分も同じように跳躍を行う。やがて3人が先ほど立っていた地面が盛り上がり、地中から巨大なマグマゴーレムが出現する。



――ゴガァアアアアッ!!



地中から出現したマグマゴーレムはゴーレムキング級の大きさを誇り、全身からマグマを噴き出していた。予想外の出現にハルナ達は驚愕するが、即座にリンダは戦闘態勢に入った。


「何だこの馬鹿でかいの!?」
「ブモォッ……!?」
「……どうやら戦うしかなさそうですね」


巨大なマグマゴーレムを前にしてリンダは振り切れないと判断し、ここで仕留める事にした。逃げた所でこれほどの巨体のマグマゴーレムが追いついたら作戦通りに進まない。超大型のマグマゴーレムに対してリンダは手始めに地面に両手を押し当てた。

闘技祭にてリンダはバルトロス王国最強の格闘家といっても過言ではない「アイラ」と対戦し、紙一重の勝利を掴んだ。あの戦い以降もリンダは自分の肉体と技を磨き続け、彼女は真の最強の格闘家と化す。


「ここは私に任せてください」
「任せろって……まさか一人で戦うつもりか!?」
「この程度の相手、私一人で十分です」
「ブモォッ!?」


自分よりも十倍以上の大きさを誇る相手に対してリンダは物怖じせず、ミノやハルナでさえも超大型のマグマゴーレムを前にして焦りを抱いているのに彼女は冷静沈着だった。そして彼女は両手を地面に押し付けた状態で気合を込め、自分が得意とする攻撃を繰り出す。


「発勁!!」
「うわっ!?」
「ブモォッ!?」
『ゴガァッ……!?』


強烈な衝撃が地面に伝わった瞬間、リンダが繰り出した発勁の戦技によって大地が文字通りに割れた。地割れを引き起こす程の発勁の衝撃によってマグマゴーレムは再び地中に落ちようとしたが、慌てて両手を左右に伸ばして落ちないように踏ん張る。


『ゴガァアアアッ!!』
「流石にこの程度では足止めにしかなりませんか。ですが、数秒もあれば十分です」
「お、おい!?何する気だ!?」


リンダは地割れに嵌まって動けないマグマゴーレムを見て目を閉じると、彼女は意識を集中させる。視覚で捉えるのではなく、心の目で彼女はマグマゴーレムの弱点を見抜く。

レナの「心眼」の技能は視覚以外の五感を研ぎ澄ませる事で相手の位置を探る事ができるが、リンダの場合は五感を研ぎ澄ませるのではなく、精神を研ぎ澄ませる事で感知能力を身に付ける。感知系の技能を極限にまで高める事と同義であり、彼女はマグマゴーレムの中に存在する核の位置を探り当てる。


(……動いていますね。なるほど、マグマの流動を利用して核を常に動かしているのですね)


マグマゴーレムもゴーレムであるため、体内には必ず弱点となる核が存在する。大抵のゴーレムの核は胸元か頭部に存在するが、マグマゴーレムは全身がマグマで構成されているため、常に核は流動するマグマによって位置は安定しない。

核が常に動き続けるのであれば狙い撃ちは難しく、しかも相手がマグマで構成されているならば素手で触れる事もできない。遠距離攻撃の手段を持っていたとしても常に動き続ける核を正確に打ち抜くには相当な技術と威力を必要とする。しかし、リンダの場合はその二つを併せ持つ。


(核の位置は見切った……ならば全身全霊の一撃で叩き壊す!!)


瞼を開いたリンダは雰囲気を一変させ、それを見ていたハルナとミノは彼女が唐突に巨人のように巨大化したように見えた。リンダは右手に力を貯めながら魔力を纏い、より精錬に磨き上げた戦技を放つ。



(――通当て!!)



リンダが拳を繰り出した瞬間、凄まじい拳圧がマグマゴーレムの頭部に目掛けて放たれた。超高速で放たれた拳から発生した風圧はマグマゴーレムの頭部を貫通し、体内に移動していた核を正確に捉えて破壊した。





※つ、強すぎる……
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