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真・最終章 七魔将編
最後の戦いへ
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――やり残した事は全て終えた後、遂にレナ達は炎龍が待ち構える地へと訪れる。マリアの転移魔法を使用して全員が移動を行うと、辿り着いた先は辺り一面が焦土と化した大地だった。
「こ、これは……」
「何と言う事だ……」
『正に焼け野原だな』
炎龍が完全復活した際に発生した火柱は山全体を崩壊させるだけではなく、周辺地域の大地さえも焼け焦がした。しかも影響はまだ完全には消えておらず、到着した瞬間に居ような熱気が襲い掛かる。
「皆さん、気をつけてください。マントを外すと火傷するかもしれませんからね」
「空気の熱で灰が焼けないように風の精霊を貴方達に付けるわ」
「何と言う熱さ……まるで竈に放り込まれた気分でござる」
あまりの熱気に何名かが体調不良を引き起こしそうになるが、事前に配られたマントとマリアが聖痕の力を利用して風の精霊を呼び寄せて全員に送り込む。戦闘の際はこの風の精霊でエルフ同士は連絡を取り合い、風の精霊が見えるレナも会話する事ができた。
風の精霊と火耐性のマントを身につけなければ満足に行動する事もできず、この熱気に耐えられるのは魔獣であるウルだけだった。ウルは暑そうに舌を出すが、他の者と違ってマントを身に付けずとも行動はできる。
「ウォンッ……」
「ウル、熱くない?水を飲みたい?」
「レナさん、ウルも心配ですけどスラミンとヒトミンもきつそうですよ」
「「ぷるるるっ……」」
ウルを心配するレナに対してホネミンは両脇にスライム達を抱えて近寄る。あまりの熱気にスラミンもヒトミンも萎れており、慌ててレナは水筒を取り出してスライム達に与える。
「よしよし、もう少しだから頑張ってくれよ」
「予想通り、ここで戦うのは私達にとっては不利ですね。これはやはりレナさんの作戦通りに行くしかないかもしれません」
「だが、本当にそんな事が可能なのか?」
「失敗すればお前等が危ないんじゃ……」
「ここまで来たら引くわけにはいきません。いいですね、レナさん?」
「ああ、大丈夫……必ず成功させる」
ホネミンの言葉にレナは頷くと、彼は空を仰いで今も監視衛星で見ているはずのリーリスを考える。リーリスは合図を送ると言ったが具体的にどのような合図を送るのかは聞いていない。しかし、彼女が援護するというのであれば信じて戦うしかない。
ウルにレナとホネミンが乗り込むとスライム達はとりあえずはホネミンの鞄の中に隠れる。他の者達も騎獣に乗り込み、この時にアインやミノにも声をかけておく。
「アイン、ミノ、無茶はするなよ」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」
アインはレナの言葉に力こぶを作り、ミノは鼻息を鳴らす。そして他の者達は炎龍を取り囲む位置に移動するために先行すると、レナ達はウルと共に炎龍が存在する場所へ向かう準備を行う。
「他の皆さんが作戦通りに位置に配置すれば私達も動きましょう」
「皆が襲われたらどうする?」
「その時は転移魔法で逃げるように指示を出しています。全員が避難すれば必ず炎龍は私達の元へ来ますから、その時は私達の手で奴を例の場所へ避難させます」
「分かった」
作戦を再確認したレナは退魔刀を取り出して刀身を確認した。ガジンによって打ち直された退魔刀はまるで新品同然に磨き上げられ、前と異なる点は退魔刀に刻まれた魔術痕には炎の紋様だけが刻まれていた。前は七種類の属性の魔術痕が存在したが、新しく打ち直す際に炎以外の紋様は消えた。
現在の退魔刀は性能だけならば聖剣にも匹敵し、今ならば完全にレナの魔刀術の力を引き出す事ができる。今回の炎龍との戦闘においてホムラと同様に火属性の魔刀術を扱うレナは不利なように思えるが、ホネミンによれば彼こそが囮役として最適だと判断する。
「恐れないでください、私も傍に居ます。いざという時はウルと共に骨だけの状態で蘇ってリーリスさんに治してもらいましょう」
「……それはちょっと面白そうだな」
「ウォンッ!!(嫌だよ!!)」
「「ぷるるんっ(自分達は骨ないから死ぬ)」」
ホネミンの言葉にレナは自分達が骨だけの姿でリーリスの元に訪れる姿を想像して笑ってしまい、緊張感が良い感じに解れた。そして改めて炎龍が待ち構えるはずの方向に視線を向けると、そこには黒色の巨大な塊が存在した。この塊の正体は炎龍によって焼け崩れた鉱山の一部であり、現在の炎龍は自分が焼け焦がした鉱山の元で眠ったように動かない。
「あっちは気付いているかな?」
「大丈夫とは思いますけど、油断はできませんね。こっちにとって都合がいいのは炎龍の存在のお陰でこの周辺地域の魔物はいなくなった事です。余計な戦闘は避けられますからね」
「魔物か……」
炎龍との戦闘の前に唯一の幸運は魔物がいなくなった事だった。圧倒的な存在感を放つ炎龍を恐れて鉱山付近の魔物は姿を消し、邪魔をされずに炎龍との戦闘に臨む事ができる。しかし、ここでレナは違和感を抱いた。
「こ、これは……」
「何と言う事だ……」
『正に焼け野原だな』
炎龍が完全復活した際に発生した火柱は山全体を崩壊させるだけではなく、周辺地域の大地さえも焼け焦がした。しかも影響はまだ完全には消えておらず、到着した瞬間に居ような熱気が襲い掛かる。
「皆さん、気をつけてください。マントを外すと火傷するかもしれませんからね」
「空気の熱で灰が焼けないように風の精霊を貴方達に付けるわ」
「何と言う熱さ……まるで竈に放り込まれた気分でござる」
あまりの熱気に何名かが体調不良を引き起こしそうになるが、事前に配られたマントとマリアが聖痕の力を利用して風の精霊を呼び寄せて全員に送り込む。戦闘の際はこの風の精霊でエルフ同士は連絡を取り合い、風の精霊が見えるレナも会話する事ができた。
風の精霊と火耐性のマントを身につけなければ満足に行動する事もできず、この熱気に耐えられるのは魔獣であるウルだけだった。ウルは暑そうに舌を出すが、他の者と違ってマントを身に付けずとも行動はできる。
「ウォンッ……」
「ウル、熱くない?水を飲みたい?」
「レナさん、ウルも心配ですけどスラミンとヒトミンもきつそうですよ」
「「ぷるるるっ……」」
ウルを心配するレナに対してホネミンは両脇にスライム達を抱えて近寄る。あまりの熱気にスラミンもヒトミンも萎れており、慌ててレナは水筒を取り出してスライム達に与える。
「よしよし、もう少しだから頑張ってくれよ」
「予想通り、ここで戦うのは私達にとっては不利ですね。これはやはりレナさんの作戦通りに行くしかないかもしれません」
「だが、本当にそんな事が可能なのか?」
「失敗すればお前等が危ないんじゃ……」
「ここまで来たら引くわけにはいきません。いいですね、レナさん?」
「ああ、大丈夫……必ず成功させる」
ホネミンの言葉にレナは頷くと、彼は空を仰いで今も監視衛星で見ているはずのリーリスを考える。リーリスは合図を送ると言ったが具体的にどのような合図を送るのかは聞いていない。しかし、彼女が援護するというのであれば信じて戦うしかない。
ウルにレナとホネミンが乗り込むとスライム達はとりあえずはホネミンの鞄の中に隠れる。他の者達も騎獣に乗り込み、この時にアインやミノにも声をかけておく。
「アイン、ミノ、無茶はするなよ」
「キュロロッ!!」
「ブモォッ!!」
アインはレナの言葉に力こぶを作り、ミノは鼻息を鳴らす。そして他の者達は炎龍を取り囲む位置に移動するために先行すると、レナ達はウルと共に炎龍が存在する場所へ向かう準備を行う。
「他の皆さんが作戦通りに位置に配置すれば私達も動きましょう」
「皆が襲われたらどうする?」
「その時は転移魔法で逃げるように指示を出しています。全員が避難すれば必ず炎龍は私達の元へ来ますから、その時は私達の手で奴を例の場所へ避難させます」
「分かった」
作戦を再確認したレナは退魔刀を取り出して刀身を確認した。ガジンによって打ち直された退魔刀はまるで新品同然に磨き上げられ、前と異なる点は退魔刀に刻まれた魔術痕には炎の紋様だけが刻まれていた。前は七種類の属性の魔術痕が存在したが、新しく打ち直す際に炎以外の紋様は消えた。
現在の退魔刀は性能だけならば聖剣にも匹敵し、今ならば完全にレナの魔刀術の力を引き出す事ができる。今回の炎龍との戦闘においてホムラと同様に火属性の魔刀術を扱うレナは不利なように思えるが、ホネミンによれば彼こそが囮役として最適だと判断する。
「恐れないでください、私も傍に居ます。いざという時はウルと共に骨だけの状態で蘇ってリーリスさんに治してもらいましょう」
「……それはちょっと面白そうだな」
「ウォンッ!!(嫌だよ!!)」
「「ぷるるんっ(自分達は骨ないから死ぬ)」」
ホネミンの言葉にレナは自分達が骨だけの姿でリーリスの元に訪れる姿を想像して笑ってしまい、緊張感が良い感じに解れた。そして改めて炎龍が待ち構えるはずの方向に視線を向けると、そこには黒色の巨大な塊が存在した。この塊の正体は炎龍によって焼け崩れた鉱山の一部であり、現在の炎龍は自分が焼け焦がした鉱山の元で眠ったように動かない。
「あっちは気付いているかな?」
「大丈夫とは思いますけど、油断はできませんね。こっちにとって都合がいいのは炎龍の存在のお陰でこの周辺地域の魔物はいなくなった事です。余計な戦闘は避けられますからね」
「魔物か……」
炎龍との戦闘の前に唯一の幸運は魔物がいなくなった事だった。圧倒的な存在感を放つ炎龍を恐れて鉱山付近の魔物は姿を消し、邪魔をされずに炎龍との戦闘に臨む事ができる。しかし、ここでレナは違和感を抱いた。
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