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真・最終章 七魔将編
囮部隊
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「はいはい!!私も一緒に行く!!」
「当然、私も」
「レナが行くなら俺も行くぞ」
「あ、それなら僕も……」
「はいはい、そこまでです」
ゴンゾウ、ティナ、コトミン、レミトが同行を立候補するが、それに対してホネミンは首を振って大人数では動けない理由を話す。
「残念ながら他の方々を連れて行く事はできません。理由は大人数で動く場合、もしも戦闘の際中にはぐれてしまったら撤退に支障が出ます。なにしろ私達はマリアさんの転移魔法を封じた水晶札で撤退する予定なので人数が多すぎるとその分だけ水晶札を用意しなければなりません」
「え~!?」
「転移魔法なら一緒に転移できるはず」
「だから言ったでしょう。戦闘の際中にはぐれて転移魔法の範囲外に出た場合に備えて単独でも戻れるように水晶札を所持しておく必要があるんです。それに聖剣で攻撃する方々も万が一の場合に備えて水晶札を所持して貰います。想定以上に聖剣の攻撃範囲が広がった場合、巻き込まれてしまう前に離脱する必要がありますからね」
「むう……俺達は足手纏いになるかもしれないという事か」
ホネミンの説明を受けてゴンゾウは苦い表情を浮かべ、水晶札の数の問題となれば流石に無理に同行を申し出る事はできない。マリアの転移魔法を封じ込めた水晶札は1日の間に2個しか作る事はできず、しかも聖剣で攻撃する側にも用意するとなると残された水晶札をほぼ全て使い切る。
マリア自身は転移魔法で退去できるので水晶札は必要ないと思われるが、実際の所は転移魔法は膨大な魔力を消費して発動まで時間がかかるため、彼女自身も事前に転移魔法を封じ込めた水晶札を所持しておかなければならない。最上級魔法を使う場面が訪れる場合を想定し、無駄な魔力は抑えきれない。しかし、ここである者が提案を行う。
「あ、あのさ……炎龍は今すぐに動き出すわけじゃないんだろ?それならさ、その……マリア、さんが最上級魔法を水晶札に封じ込めてそれを僕達で利用して炎龍に攻撃するとかはできないわけ?」
「面白い発想ね。だけどそれは無理よ、最上級魔法を水晶札に封じ込める事はできない。水晶札に封じ込められる魔法は上級魔法が限界なのよ」
ダインの発言を聞いてマリアは即座に彼の案は不可能だと説明した。彼女もかつて試した事はあったが、水晶札が封じ込められる魔力量は限界が存在し、広域魔法や最上級魔法といった高度な魔法は封じ込める事ができないらしい。
「ダイン、お前の影魔法で炎龍を拘束する事はできないのか?」
「無理無理無理!!絶対無理だって!!」
「闇の聖痕を身に付けたダインさんなら可能性はありますが、相手は火属性の魔力を宿す竜種ですからね。火炎の吐息を吐き出せば一瞬で影の拘束なんて解除しますよ」
「となるとやはり囮役に最適なのは……」
影魔法が当てにならないのであれば囮役に最適な人間は限られ、当然ながらレナに視線が向けられる。この面子の中では指折りの剣士であると同時に聖剣に匹敵する武器を持つ人物は彼だけである。
「レナさん、ウルも一緒に連れてきてください。私達も機動力が必要ですからね」
「分かった。他に必要な物は?」
「そうですね……戦闘の際中に空間魔法を使う暇がないかもしれないので水晶札は肌身離さず持っていてください」
「了解」
「レナ……いつも面倒役を任せて悪いね」
結局は今回もレナに大役を任せる事にバルルは罪悪感を抱き、この状況では彼女は力にはなれなかった。師匠でありながら弟子に全てを任せる事に彼女は気後れするが、そんな彼女にレナは親指を立てる。
「大丈夫だよ。もう慣れたから」
「そ、そうかい……本当にすまないね」
「レナ、危険だと思ったらすぐに帰ってくる」
「レナたん、気をつけてね!!私、この歳で未亡人なんて絶対に嫌だからね!!」
「旦那様、頑張って!!」
「旦那様、帰ったらいい事する」」
「あ、あの……お帰りをお待ちしています」
「……なんかまた女が増えてないかい?」
コトミン、ティナ、アンジュ、サーシャ、ジャンヌに声援を送られるレナを見てバルは苦笑いを浮かべるが、実際にレナが生きて戻ってくる可能性は作戦に参加する人間の中では一番に低い。彼は炎龍を引き寄せるために正面から挑まなければならず、圧倒的な力を持つ炎龍に挑まなければならない。
炎龍との戦闘ではホネミン以外の者は連れ出す事ができず、剣聖の称号を持つ人間でさえも足手纏いになりかねない。連れて行けるのは白狼種であるウルと回復係のホネミンだけであり、他の人間は置いていくしかない。
「レナ、肝心な時に一緒に戦えなくてすまん……」
「ゴンちゃんは十分に役に立ったよ。七魔将を倒したんでしょ?」
「だが、あれは俺一人の力では……」
「勝ちは勝ちだよ。他の皆もよく頑張ってくれた……後は俺達に任せてよ」
「まあ、レナさんは私が守りますから安心して下さい。それにいざという時は……ねえ、リーリスさん」
「ええ、ご安心ください。私の方も策を用意してますから」
「ふふふ……」
「うふふ……」
「な、何だこいつらは……」
不気味な笑みを浮かべるホネミンとリーリスに全員が引き気味になり、そんな彼女達を見て本当に大丈夫かと思いながらも最後の準備に取り掛かる――
「当然、私も」
「レナが行くなら俺も行くぞ」
「あ、それなら僕も……」
「はいはい、そこまでです」
ゴンゾウ、ティナ、コトミン、レミトが同行を立候補するが、それに対してホネミンは首を振って大人数では動けない理由を話す。
「残念ながら他の方々を連れて行く事はできません。理由は大人数で動く場合、もしも戦闘の際中にはぐれてしまったら撤退に支障が出ます。なにしろ私達はマリアさんの転移魔法を封じた水晶札で撤退する予定なので人数が多すぎるとその分だけ水晶札を用意しなければなりません」
「え~!?」
「転移魔法なら一緒に転移できるはず」
「だから言ったでしょう。戦闘の際中にはぐれて転移魔法の範囲外に出た場合に備えて単独でも戻れるように水晶札を所持しておく必要があるんです。それに聖剣で攻撃する方々も万が一の場合に備えて水晶札を所持して貰います。想定以上に聖剣の攻撃範囲が広がった場合、巻き込まれてしまう前に離脱する必要がありますからね」
「むう……俺達は足手纏いになるかもしれないという事か」
ホネミンの説明を受けてゴンゾウは苦い表情を浮かべ、水晶札の数の問題となれば流石に無理に同行を申し出る事はできない。マリアの転移魔法を封じ込めた水晶札は1日の間に2個しか作る事はできず、しかも聖剣で攻撃する側にも用意するとなると残された水晶札をほぼ全て使い切る。
マリア自身は転移魔法で退去できるので水晶札は必要ないと思われるが、実際の所は転移魔法は膨大な魔力を消費して発動まで時間がかかるため、彼女自身も事前に転移魔法を封じ込めた水晶札を所持しておかなければならない。最上級魔法を使う場面が訪れる場合を想定し、無駄な魔力は抑えきれない。しかし、ここである者が提案を行う。
「あ、あのさ……炎龍は今すぐに動き出すわけじゃないんだろ?それならさ、その……マリア、さんが最上級魔法を水晶札に封じ込めてそれを僕達で利用して炎龍に攻撃するとかはできないわけ?」
「面白い発想ね。だけどそれは無理よ、最上級魔法を水晶札に封じ込める事はできない。水晶札に封じ込められる魔法は上級魔法が限界なのよ」
ダインの発言を聞いてマリアは即座に彼の案は不可能だと説明した。彼女もかつて試した事はあったが、水晶札が封じ込められる魔力量は限界が存在し、広域魔法や最上級魔法といった高度な魔法は封じ込める事ができないらしい。
「ダイン、お前の影魔法で炎龍を拘束する事はできないのか?」
「無理無理無理!!絶対無理だって!!」
「闇の聖痕を身に付けたダインさんなら可能性はありますが、相手は火属性の魔力を宿す竜種ですからね。火炎の吐息を吐き出せば一瞬で影の拘束なんて解除しますよ」
「となるとやはり囮役に最適なのは……」
影魔法が当てにならないのであれば囮役に最適な人間は限られ、当然ながらレナに視線が向けられる。この面子の中では指折りの剣士であると同時に聖剣に匹敵する武器を持つ人物は彼だけである。
「レナさん、ウルも一緒に連れてきてください。私達も機動力が必要ですからね」
「分かった。他に必要な物は?」
「そうですね……戦闘の際中に空間魔法を使う暇がないかもしれないので水晶札は肌身離さず持っていてください」
「了解」
「レナ……いつも面倒役を任せて悪いね」
結局は今回もレナに大役を任せる事にバルルは罪悪感を抱き、この状況では彼女は力にはなれなかった。師匠でありながら弟子に全てを任せる事に彼女は気後れするが、そんな彼女にレナは親指を立てる。
「大丈夫だよ。もう慣れたから」
「そ、そうかい……本当にすまないね」
「レナ、危険だと思ったらすぐに帰ってくる」
「レナたん、気をつけてね!!私、この歳で未亡人なんて絶対に嫌だからね!!」
「旦那様、頑張って!!」
「旦那様、帰ったらいい事する」」
「あ、あの……お帰りをお待ちしています」
「……なんかまた女が増えてないかい?」
コトミン、ティナ、アンジュ、サーシャ、ジャンヌに声援を送られるレナを見てバルは苦笑いを浮かべるが、実際にレナが生きて戻ってくる可能性は作戦に参加する人間の中では一番に低い。彼は炎龍を引き寄せるために正面から挑まなければならず、圧倒的な力を持つ炎龍に挑まなければならない。
炎龍との戦闘ではホネミン以外の者は連れ出す事ができず、剣聖の称号を持つ人間でさえも足手纏いになりかねない。連れて行けるのは白狼種であるウルと回復係のホネミンだけであり、他の人間は置いていくしかない。
「レナ、肝心な時に一緒に戦えなくてすまん……」
「ゴンちゃんは十分に役に立ったよ。七魔将を倒したんでしょ?」
「だが、あれは俺一人の力では……」
「勝ちは勝ちだよ。他の皆もよく頑張ってくれた……後は俺達に任せてよ」
「まあ、レナさんは私が守りますから安心して下さい。それにいざという時は……ねえ、リーリスさん」
「ええ、ご安心ください。私の方も策を用意してますから」
「ふふふ……」
「うふふ……」
「な、何だこいつらは……」
不気味な笑みを浮かべるホネミンとリーリスに全員が引き気味になり、そんな彼女達を見て本当に大丈夫かと思いながらも最後の準備に取り掛かる――
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