上 下
1,695 / 2,083
真・最終章 七魔将編

王妃の遺産

しおりを挟む
(やっぱりこの国の奴等は抜けてるわね、こんな簡単に入れるなんて……)


王妃の部屋の前に辿り着いたカノンは内心で笑みを浮かべ、彼女は扉に手をかけた。当然ながら鍵が掛けられているが、カノンは懐から針金を取り出して鍵穴に差し込む。


「これぐらいの鍵なら……こうよ」


カノンは傭兵時代に「開錠」の技能も習得しており、慣れた手つきで王妃の部屋の扉を開いた。そして部屋に入って早々に彼女は信じ難い光景を確認する。部屋の中はまるで図書館にでも迷い込んだのかという程に大量の本棚が並べられていた。


「な、何よこれ……部屋を間違えてないわよね?」


大量の本棚を見てカノンは動揺するが、部屋を間違えたかと思ったが確かにここが王妃の部屋だった。恐る恐るカノンは本棚を確認すると、様々な種類の本が並べられていた。様々な分野の学術書、歴史書、他には子供向けの絵本なども置かれていた。

戸惑いながらもカノンは中身を確認してみると特に怪しい点はない。様々なジャンルの本が並んでいる事に彼女は不思議に思い、特に子供向けの絵本など何故ここにあるのかと不思議に思う。


「この絵本、王国だけじゃなくて他国から取り寄せたのもあるようね。あの女の趣味かしら……」


絵本の中にはヨツバ王国や獣人国の子供が読む絵本も存在し、どうして王妃がこんな物を持っているのかと気にかかる。しかし、ここでカノンは全ての絵本に共通点ががある事に気付く。


「これは……全部勇者の物語じゃない」


絵本の内容はかつて地球という世界から召喚された勇者が主人公を勤め、各時代の勇者が当時発生した大事件を解決する内容だと判明する。よくよく調べると絵本だけではなく、勇者に関わる内容の本も多数取り揃えられた。

勇者に関する情報でも探っていたのか王妃の部屋の本棚の半分近くは勇者に関わる資料だと判明した。どうして王妃が勇者に関して調べていたのかは不明だが、カノンは予想に反して金目になりそうな物がない事に落胆する。


(まあ、当然の話よね。この部屋だって王国の人間に調べられているはずだし、金目になりそうな物があるわけが……ん?)


全ての本棚を確認したカノンは違和感を覚え、本棚の数と並びを彼女は何か気付いたように部屋の隅に置かれていた脚立に視線を向けた。彼女は急いで脚立を登って近くの本棚の上に立つと、信じられない表情を浮かべる。


「こ、これは!?」


本棚の配置を上から確認すると、彼女は本棚がまるで何かの魔法陣を示すかのように並べられている事に気付く。勘が鋭いカノンだからこそ気付けたが、更に彼女は本棚の下に敷かれている銃弾に視線を向けた。


「まさか!!」


本棚から飛び降りたカノンは絨毯を覗き込む。この絨毯の下に何かあるのではないかと考えた。大量の本棚が並べられているので絨毯を捲るのは容易ではないが、彼女は隠し持っていた短剣で絨毯の一部を切り裂くと、その下から魔法陣の紋様が刻まれた床を見つけ出す。

王妃の部屋の床は絨毯で覆い隠され、大量の本棚が並べられているせいで絨毯を捲る事も困難な状態だった。だからこそ誰も絨毯の下の紋様に気付く事はなく、余程観察眼がある人間でなければ気付けなかった。


「この紋様、見た事ないわね……これは面白い物を発見したわ」


魔法陣の紋様の絵柄を見てもカノンには心当たりはなく、王妃が死ぬ前に刻んだ魔法陣を見てカノンは確かめたくなった。絨毯を切り開いて本棚が置かれていない箇所を調べると、魔法陣の中央部分に窪みが存在した。それを見たカノンは窪みの大きさを確認し、ある事に気が付く。


「これは……そう言う事ね!!」


窪みの大きさを確認したカノンは魔法陣の中央に嵌め込む物に気付き、彼女は急いで部屋を離れた――





――同時刻、ナオの妹である双子のシオンとリアナは退屈そうな表情を浮かべながら部屋の中で勉強を行っていた。王妃が亡くなった後、彼女達はアイラに育てられているがそのアイラが不在の時は他の人間の監視下で勉学に励む。


「はあっ……もう嫌だ!!こんな勉強漬けの日々なんて!!」
「シオン、落ち着きなさい……」
「リアナだってもう我慢できないでしょ!?」


アイラがいないときは勉強を強いられる事にシオンは嫌気が差し、そんな彼女を宥めるリアナも疲れた表情を浮かべていた。ここ最近の二人はアイラとは顔を合わせておらず、最近の彼女は色々と忙しいらしくて同じ王城内にいるにも関わらずに殆ど会っていない。

シオンとリアナは王妃からは本当の娘のように可愛がられていたため、彼女達は実母以上に王妃の事を慕っていた。その王妃が死んだ事で最初は酷く落ち込んでいたが、アイラが彼女達を慰めた事で立ち直った。しかし、そのアイラは現在は姉であるナオと激闘を繰り広げているなど夢にも思わない。



※その頃のナオ

ナオ「くっ!?なんという力……」
アイラ「ナオちゃん、強くなったわね……でも、私はまだ変身を残しているわ」
ナオ「な、なんだって!?」

アイラは第二形態(ビキニアーマーのさらに下から色違いのビキニアーマー)に変身していた!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。