上 下
1,673 / 2,083
真・最終章 七魔将編

黄金の扉の先には

しおりを挟む
「マリア殿は何処におられるのでござる!?」
「いや、本当にはっきりと感じたわけじゃないんだ……気のせいではないと思うんだけど」
「本当か?僕には何も感じないけど……」


マリアの魔力をレナは僅かに感じ取り、少なくともこの空間内に存在するのは確かだが何故か魔力が小さすぎて感じ取れない。マリアがもしも帝都内に存在するのならば彼女の魔力の強さならばレナが認識できないはずがない。

しかし、何故かマリアの魔力は感じ取れるがあまりにも小さすぎて居場所が特定できない。彼女の身に何かあったのか、あるいは故意にマリアが魔力を抑えているのかは不明だが、ともかく場所を特定できない以上は先に進むしかない。


「とりあえず、先に進んでみよう。もしかしたら叔母様も扉の奥に居るかもしれないし」
「でも、その黄金の扉は鍵が掛かってたんだろ?鍵だって僕達が見つけたんだから先に居る可能性は低いんじゃないのか?」
「叔母様なら鍵くらい開けるかもしれないし、もしかしたら別の場所から扉の中に入る方法があるかもしれない。もしくは何らかの方法で鍵を開けたけどオートロックの可能性もあるし……」
「お、おうとろっく?」


レナの言葉にハンゾウは戸惑うが、話している間にもレナ達は黄金の扉の前に辿り着く。扉を開く前にレナは鍵を取り出し、念のためにアイリスと交信を行う。


『アイリス、この先は?』
『おっ、遂にここまで辿り着きましたか。おめでとうございます!!ここが訓練場のゴールですよ!!』
『ゴールという事は……』
『はい、この扉を開けば訓練は終了されます』


アイリスの話を聞いてレナは安堵し、この扉を開けば勇者の訓練は終了して解放されるらしい。しかし、解放されるといっても全員が集まっていない以上は先に帰る事はできない。


『この扉を抜ければ元の世界に戻れるわけ?』
『そういう事になりますね。鍵を開けば扉を開けっぱなしにしておいてください。もしも閉じたら鍵は元の場所に転移されちゃうので気をつけてください』
『なるほど……ならここで休ませてもらうか』
『そうしたい所でしょうが、まだ用事は残っていますよ』
『え?何かあったっけ?』


ようやく訓練から解放される事にレナは安心仕掛けたが、アイリスは彼が出て行く事を止めた。この訓練場には隠された秘宝があり、それの回収を告げた。


『この訓練場には勇者を鍛えるためだけではなく、勇者を強くするための道具も隠されています。それを忘れずに回収しましょう』
『回収と言われても、一通り見て回ったけどそれらしい物はなかったよ』
『何言ってんですか、レナさんの目の前にある扉を見てください』
『扉って……これ?』


黄金の扉にレナは視線を向けると、改めてみるとこれまでに彼が通過した黒門と比べて豪勢な門だった。全体が黄金で構成されており、しかも世界に伝わる全ての聖剣の紋様が刻まれている。これらの聖剣は初代勇者が残した聖剣であり、その中にはレナが触れた聖剣が幾つも存在する。

扉を見てアイリスが何を言いたいのか不思議に思ったレナだったが、よくよく観察すると扉の聖剣の紋様は窪みのようにも見えた。聖剣の形をした窪みが扉に刻まれているといった表現が正しく、その窪みを見てレナはある事を思いつく。


『この窪み、まさか……!?』
『そうです。この扉の使い道は二つ、一つは黄金の鍵で扉を開く事で外へ脱出する事……そしてもう一つが扉に刻まれた窪みに全ての聖剣を嵌め込む事で別の空間に通じる新たな門へと変化します』
『新しい扉!?』


黄金の扉の窪みにそれぞれの聖剣を嵌め込めば新しい空間に繋がる出入口となるらしく、アイリスの目的はレナをその場所まで案内する事だった。炎龍との戦闘ではレナも参加しなければならないが、聖剣を持たない彼が炎龍と戦うためには今以上の力を身に着ける必要があった。


『炎龍と戦う以上はレナさんも強くならなければなりません。しかし、レナさんのレベルは99ですので肉体的に成長は見込めません。つまりは今のレナさんはステータスがカンストした状態なんです』
『ならどうしたらいいんだよ……』
『ステータスを上げる事ができないのであれば武器と防具に頼るしかありません。この扉を開く事ができればそこにはレナさんに相応しい武器を作り出す材料があるはずです』
『材料がある?』
『初代勇者は亡くなる前、聖剣を作り出すために世界中から集めた貴重な素材をこの訓練場に隠したのです。もしも他の人間に渡れば悪用される恐れがありましたからね。その材料をレナさんが利用すればレナさんだけの最強の武器を作り上げる事ができます。退魔刀や鏡刀を上回る最強の武器の誕生です!!』
『最強の武器……』


アイリスも興奮しているのか今まで以上に熱がこもった言葉をかけるが、そもそもの話としてレナ達は黄金の扉を開ける手段を持ち合わせていない。なにしろ扉を開けようにも必要な聖剣の数が足りないのだ。
しおりを挟む
感想 5,087

あなたにおすすめの小説

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。