上 下
1,667 / 2,083
真・最終章 七魔将編

岩山の主

しおりを挟む
『ふむ、とりあえず入ってみるか』


黒門を前にしたゴウライは力尽くで開くと、何の躊躇もなく入り込む。次の瞬間、ゴウライが立っていたのは巨大な岩山の上だった。


『ぬおっ!?何処だここは……む、あの子供は何処に消えた!?』


岩山の頂上に移動したゴウライは周囲を見渡しても子供の姿は見当たらず、山頂から地上を見下ろす。しかし、地上を確認しようとしたゴウライだったが何故か地面の底が見えず、真っ暗な空間が広がっていた。


『何!?これはどういうことだ!?』


巨大な穴の中心部にそびえたつ岩山の上にゴウライは転移したらしく、彼女は穴の底が見えない事に驚き、もしも落ちたらいくら彼女でも命はないかもしれない。ゴウライは落ちないように気をつけながら子供を探すと、下に続く道を発見した。

岩山はまるで削岩機のように螺旋状の窪みというよりも道が存在し、どうやら下まで続いている様子だった。ゴウライは不思議に思いながら下に続く道を発見したので急ぎ足で向かう。


『ここを通ったのか?追いかけっこもそろそろ飽きてきたぞ!!』


いい加減に子供の正体が気になってきたゴウライは急いで後を追いかけると、彼女は走っている途中で岩山に振動が走る。驚いた彼女は落ちないように岩壁に手を伸ばすと、何かぬめぬめとした物に触れた。


『ぬあっ!?な、何だ!?』


岩壁が妙に濡れている事に気付いたゴウライは気持ち悪そうに離れると、振動は徐々に強まっていく。落ちないようにゴウライは気をつけながら進もうとした時、彼女は足元が滑って坂道を転がっていく。


『のわぁあああっ!?』


まるでピンボールのように岩山の螺旋状の窪みの中を転がり込み、岩山の底に目掛けて降りていく。彼女は目を回しながらも武器だけは手放さなかった――





――それから数分後、ゴウライは暗闇に覆われた空間に倒れ込む。どうやら岩山の底に辿り着いたようだが、日の光が届かない位置まで転げ落ちたらしく、彼女は兜を外すと口元を膨らませ、慌てて吐き出す。


「うおぇっ……げほっ、げほっ……な、何という恐ろしい罠だ。これが勇者の訓練場か……恐ろしい場所だな」


勝手に全て転んだにも関わらずに自分が罠に嵌まったような言い方をするゴウライだが、彼女はひとしきり吐くと改めて周囲を見渡す。暗黒空間が広がっているので普通の人間には何があるのか分からないだろうが、彼女は暗視の技能を利用して周囲の光景を確認する。

岩山の底はクレーターのような窪みが存在し、この時ゴウライは異様な気配を感じた。まるで巨大な生物の口の中に放り込まれたような感覚を覚え、ゴウライは兜を付け直してデュランダルを引き抜く。


『今度は何が出てくる!?ゴーレムか、それとも……』


ゴウライは何故か期待した表情を浮かべて周囲を警戒すると、やがて岩山が震え出す。先ほども振動が走ったが、今度は先ほどよりも振動が激しく、やがて岩山の側面から巨大な蛇のような魔物が姿を現わす。



――ジュラァアアアッ!!



岩山から出現したのは巨大なサンドワームであり、しかも全体がゴーレムのような岩石の外殻を纏っていた。外の世界に存在するサンドワームの何倍もの大きさを誇り、岩山の窪みにサンドワームの胴体が巻き付き、それを見たゴウライは自分が道だと思い込んでいた窪みはサンドワームが岩山を締め付ける事で出来上がった窪みだと知る。

サンドワームはゴウライの存在に気付いているのか顔を向け、大量の唾液を放つ。どうやら岩山の岩壁や地面のぬめりはサンドワームの唾液が原因だったらしく、ゴウライが滑り落ちた理由はサンドワームの唾液で転んでしまった事が発覚した。


『貴様がこの空間の主か!!危うく死にかけたぞ!!』
「ジュラァッ……!!」


ゴウライがサンドワームに怒鳴りつけると、サンドワームはゴウライに大して大口を開き、大量の消化液を吐き出す。それを見たゴウライは慌てて逃げ出すと、消化液が降りかかった場所の地面が溶けて大穴を形成する。


『ぬおおっ!?き、汚いぞ貴様!!二重の意味で!!』
「ジュラァッ!!」


サンドワームの消化液は強力な酸性を含み、触れるだけであらゆるものを溶かしてしまう。いくらゴウライがアダマンタイト製の防具を身に付けているといってもまともにあたれば隙間に消化液が流れ込み、流石の彼女も致命傷は避けられない。

巨体を生かしてサンドワームはゴウライに大量の消化液を振りかけ、地上にいる限りはゴウライは必死にサンドワームの酸を避け続けなければならない。だが、先ほど転がり回ったせいでゴウライの体調は悪く、走り回る際中に吐きそうになった。


『うぷっ……いかん、吐きそうだ……ちょ、ちょっとタンマ!!』
「ジュラァアアアッ!!」


ゴウライは駄目元でサンドワームに声をかけるが、当然ながらそんな言葉をサンドワームが聞くはずがなく、大きな口を開いて大量の消化液を吐き出そうとした。しかし、サンドワームが消化液を吐き出す前に何者かが岩山の上空に現れ、サンドワームに目掛けて斧のような形をした刃の剣を繰り出す。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜

ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……? ※残酷な描写あり ⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。 ムーンライトノベルズ からの転載です。

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

孤独な令嬢は狼の番になり溺愛される

夕日(夕日凪)
恋愛
アルファポリス様より書籍化致しました!8月18日が出荷日となっております。 第二部を後日更新開始予定ですので、お気に入りはそのままでお待ち頂けますと嬉しいです。 ルミナ・マシェット子爵家令嬢は、義母と義姉達から虐待を受けながら生きていた。しかしある日、獣人国の貴族アイル・アストリー公爵が邸を訪れ…。「この娘は私の番だ。今ここで、花嫁として貰い受ける」 そう言われその日のうちに彼に嫁入りする事になり…。今まで愛と幸せを知らなかった彼女に突然の溺愛生活が降りかかる…!

モブだった私、今日からヒロインです!

まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。 このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。 そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。 だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン…… モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして? ※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。 ※印はR部分になります。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

【R-18】踊り狂えその身朽ちるまで

あっきコタロウ
恋愛
投稿小説&漫画「そしてふたりでワルツを(http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/630048599/)」のR-18外伝集。 連作のつもりだけどエロだから好きな所だけおつまみしてってください。 ニッチなものが含まれるのでまえがきにてシチュ明記。苦手な回は避けてどうぞ。 IF(7話)は本編からの派生。

【完結】淫魔なのに出乳症になってしまった僕の顛末♡

虹色金魚 (旧 怪盗枝豆 )
BL
娼館で男妾として働く淫魔で、かわいい系美少年のラミュカ(♂)は、ある日突然おっぱいからミルクが出てきてしまった!!お客には喜ばれるが心の中では嵐が吹き荒れる。 そんなラミュカに、同期で友人の同じく淫魔のロゼが、魔界の病院を紹介してくれた。 そこでの診察結果は………… ※実はかわいいものが大好き美しい悪魔先生(カタリナ)×かわいい系淫魔ラミュカ ※ラミュカ(受)が出乳症という病気(?)になって、男の子なのにおっぱいからミルクが出て来て困っちゃうお話です。 ※ラミュカは種族&お仕事上客とエッチをガッツリしてます。 ※シリアスではありません。 ※ギャグです。 ※主人公アホかと思います。 ※1話だいたい2000字前後位です。 ※こちらR-18になります。えっちぃことしてるのには☆印、えっちしてるのには※印が入っています。 ※ムーンライトさんでも掲載しています。 ※宇宙のように広いお心でお読みください※

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。