不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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真・最終章 七魔将編

帝都

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「――何だ、ここ?」
「えっ……えっ!?ここってまさか……ぼ、冒険都市!?」


光が収まるとレナ達は何時の間にか別の場所に転移しており、彼等は見覚えのある景色が視界に広がった。二人が立っている場所は冒険都市に存在する噴水広場であり、最初は二人とも冒険都市に転移してしまったのかと思った。

レナとダインは周囲を見渡しながら他に人間がいないのかを探すが、いくら探しても人は見当たらない。試しにレナが気配感知と魔力感知を作動させても反応はなく、しかも噴水広場の中心には二人が見慣れない石像が建っていた。


「何だろうこれ……ここにこんなのあったっけ?」
「お、おい!?これってもしかして……そうだ、初代皇帝の石像だぞ!!」
「初代皇帝?皇帝という事はもしかして……」
「バルトロス帝国の皇帝の石像だよ!!」


噴水広場の中心にそびえたつ石像はバルトロス帝国の初代皇帝を模しており、ダインによればこの石像はバルトロス帝国が崩壊した時に共に取り壊されたらしい。だが、その皇帝の石像がどうして冒険都市に存在するのかとレナ達は疑問を抱く。


「何で皇帝の石像が冒険都市に……」
「冒険都市は元々は帝国時代の首都だったんだ。石像もここに建てられたけど、帝国が崩壊した時に都市は一度滅んでその後に冒険都市ルノという名前に変わったと僕も聞いた事があるけど……うわっ!?」
「どうしたの?」
「あ、あれ!!あれを見ろよ!!なんであんなのがここにあるんだ!?」


ダインの言葉にレナは不思議に思って彼が指し示す方向に視線を向けると、そこには見た事もない城が建っていた。現代の王都の王城よりも遥かに大きく、正に国の象徴と言っても過言ではない立派な城が建っていた。


「あ、あれ……そうだ、帝国時代の王城だ!!昔、本で見た事があるぞ!!」
「あれが帝国の王城……という事はここってもしかして」


レナは冒険都市には存在しないはずの石像や城が存在する事に疑問を抱き、彼は力を込めて思いっきり跳躍を行う。獣人族顔負けの跳躍力を発揮して冒険都市と思われた場所の上空に跳ぶと、そこにはレナの知る冒険都市とは大きく異なる風景が映し出された。

噴水広場の周囲は冒険都市とそれほど変わりはないが、その他の部分は見た事もない建物が並んでおり、本来ならば存在するはずの「黒虎」「氷雨」「牙竜」の冒険者ギルドも消えていた。その代わりに別の場所に大きな建物が存在し、こちらが帝国時代の冒険者ギルドだと思われた。


(どうなってるんだ!?ここは帝国時代の冒険都市……いや、帝都を模して造られた空間なのか!?)


冒険都市とは似て非なる都市を見てレナは帝国時代に築き上げられた都市に自分達が訪れたのかと考え、厳密に言えばここは本物ではなく、あくまでも帝国時代の帝都を模した空間である。地上に戻ったレナは混乱するダインに自分が見た光景を話す。


「ダイン、ここは俺達の知っている冒険都市じゃない。帝国時代の帝都……を参考に作り出された空間だよ」
「そ、そうか……そうだよな。僕達が昔の帝国に転移したとかじゃないよな」
「それはないと思うよ、多分」


過去にタイムスリップする技術までも過去の勇者が編み出しているとは思えず、この空間はあくまでも帝国時代の帝都を参考にして造られた空間でしかない。実際にこれだけの広さの都市に人間が一人も住んでいないのが証拠であり、この空間はこれまで二人が通り抜けた空間と同じく勇者の訓練場である事は間違いない。

しかし、偽物であろうと帝国時代の帝都を拝見できる日が来るなど夢にも思わず、この際に少しだけレナは帝都を見て回りたいと思った。ここが訓練場ならば何処かにこの空間の主が潜んでいるはずなのでその主を探すのも兼ねてダインに告げる。


「とりあえず、城に行ってみよう」
「えっ!?城?なんで城なんだよ?」
「こういう場合、お城とかにラスボスが潜んでるもんだよ」
「どういう理屈だよ!?」
「もしかしたら城の中には金目になりそうな物や役に立ちそうな魔道具もあるかもしれないけど……」
「よし、行くぞ!!」


レナの言葉にダインは真っ先に駆け出し、そんな彼の行動の早さに苦笑いを浮かべながらもレナも後に続く――





――ダインと共にレナは帝都の城へ辿り着くと、城の規模は異なるが王都の城と外観は酷似していた。バルトロス王国は元々は帝国を収める帝族の一人が築き上げた国であり、もしかしたら敢えて城の外観を寄せているのかもしれない。

城に辿り着いたが門は何故か開け開かれており、見張りの類も存在しない。この場所には誰も住んでいないので防犯の意味はないと判断したのか、城の何処でも自由に出入りできた。


「うわぁっ……凄いな、王都の王城よりも広いぞ」
「でも、やっぱり人はいないな……ホネミン達もまだここには来ていないのかな?」


城の中を歩き回りながらレナ達は他の仲間を探すがまだ到着していないのか見当たらない。やがて二人は大きな扉の前に立ち、そこは玉座の間と記されていた。
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