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真・最終章 七魔将編

ラストの実力

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「な、何で……何でしないのよ!?」
「……無駄だ」


バルカンによって撃ち込まれた魔石弾は全て火属性の魔石を加工した代物であり、本来であれば衝撃を受けた時点で爆発する代物だった。だが、何故かラストの身体に触れた魔石弾は一瞬にして色を失い、そのまま地面に落ちて砕け散る。

魔石弾が爆発せずに地面に砕け散る様を見てカノンは恐怖を抱き、今まで様々な相手と戦ってきたが魔石弾を無効化するラストを見て彼女は逃げ出してしまう。長年の直感が目の前の男に戦闘を挑むのは危険だと告げていた。


(こいつは危険過ぎる!!すぐに逃げないと……)


先ほどまでの余裕は一切なくなったカノンは必死に逃げ出し、その様子を見たラストは黙って掌を構えた。そして彼はカノンが撃ち込んだ魔石弾からを集中させ、凝縮させた魔力の塊を放つ。


「お前の魔力、返してやろう」
「ひっ……!?」
「燃えろ」


カノンの背中に向けてラストは火属性の魔力の塊を放つと、それを見たカノンは目を見開く。ラストが放った魔力の塊は移動するにつれて徐々に膨らみ、やがて爆発を引き起こす――





――爆発が発生した後、黒煙がラストの視界を塞ぎ、彼は煙を振り払いながらカノンが立っていた場所に赴く。そこには彼女の魔銃が砕け散った状態で地面に散らばっており、肝心のカノンの姿は見えなかった。


「……逃げたのか?」


カノンの姿が消えた事にラストは意外に思うが、この時に彼は地面に散らばる破片の中から水晶の欠片のような物を拾い上げる。その水晶の欠片を見てラストはカノンが消えた理由を悟り、彼は炎龍が封印されている洞窟に視線を向けた。


「逃したか。だが、問題はない」


仮に逃げ出したカノンが他の人間に連絡するとしても幾ばくかの猶予があり、かりに王国の軍勢が押し寄せてきたとしてもラストのやる事に変わりはない。彼の目的は炎龍の復活であるため、むしろ炎龍復活の贄となる存在が向こうから来てくれてた方が都合が良い。

水晶の欠片を放り捨てるとラストは拘束しているホムラの元へ向かい、いつも通りに彼女から魔力を奪おうと考えた。だが、ホムラの元に訪れるとそこに彼女の姿は存在せず、彼女の武器も消えていた。


「今の騒動に紛れて逃げ出したか……やるな」


ホムラが姿を消した事にラストは動じる様子もなく、正直に言えばホムラはもう彼にとっては用済みだった。炎龍の復活を速めるために火属性の聖痕を持つ彼女を生かしてはいたが、そろそろ彼女の力は必要ないと感じていた。

カノンが今日運んできた多数の魔石があれば炎龍の復活を早められ、仮に王国が軍勢を送り込んだとしても間に合わない。仮に聖剣の使い手を送り込んでこようとラストには勝算があった。


「そろそろこの力にも慣れてきたな」


ラストは自分の腕に手を伸ばすと、そこにはあるはずのない紋様が浮かび上がっていた。彼の右腕にはこの世には一人しか存在しないはずの火属性の聖痕が浮かび上がり、彼はその力を利用して炎龍の完全復活を企む。

魔力を奪う能力だけではなく、他人の能力までも彼は使いこなす。本来であれば各属性の聖痕の持ち主はこの世に一人しか存在しないが、ラストの場合は聖痕を分析して自分の肉体に馴染ませる。この能力で彼は七魔将の長となった。


「さあ、もうすぐだ……これで我の目的を果たせる」


胸元に手を伸ばした状態でラストの口調が代わり、彼は笑みを浮かべながら空を見上げた。ラストの胸元には水晶が埋め込まれ、この水晶こそが彼を七魔将なる存在に変貌させた存在その物である――





――同時刻、半死半生の状態でカノンは何処かの洞窟の中に倒れていた。彼女は全身に酷い火傷を負い、衣服も焼けて全裸の状態だった。それでも彼女は必死に身体を動かし、事前に洞窟に隠していた回復薬を手にした。


「はあっ、はあっ……うああああっ!?」


火傷の箇所にカノンは回復薬を流し込むと彼女は悲鳴を上げ、激痛に耐えながらも身体が回復するのを待つ。普通の怪我ならばともかく、火傷の類は回復薬を以てしても完治するのに時間が掛かり、直るまでの間は痛みが襲う。

歯を食いしばりながらカノンは必死に全身に薬を振りかけ、全ての回復薬を使い切る頃には彼女は意識は半ば飛んでいた。それでも彼女は気絶する事を拒み、洞窟の中に隠していた魔道具に手を伸ばす。


「死にたくない……誰か、助けて」


カノンが手にした魔道具は彼女が自作した代物であり、煙を噴き出す機能を持つ。本来は敵から逃げる煙幕として開発した代物だったが、彼女は助けを求めるために洞窟の外に放り込む。

洞窟の外に投げ込まれた魔道具が煙を噴き出し、もしも人間が煙を目に擦れば必ず誰かが確かめに訪れる。しかし、もしも誰かが気づかなければカノンはこのまま意識を失って死ぬ可能性が高い。それでも彼女は最後の賭けに命を託して洞窟の中で気絶した。
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