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真・最終章 七魔将編

港町の様子

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偵察から戻ってきた二人の報告を受けた後、レナ達は港町に入る事にした。二人の言う通りに道を行き交う人々は元気がなく、何処の店も閉まっていた。中には大荷物を荷車に乗せて街から出て行こうとする人間もちらほらと見えた。


「聞いてはいたけど本当に活気がないわね」
「どこの店も閉まってるな……」
「この港町は漁業が盛んで獣人国の中でも人気があったようでござる。しかし、魚人のせいで漁にも出られなくなったからこんな有様に……」
「とりあえず、港の方に行きますか?それとも宿でも借ります?」
「宿もこの様子だと締まってるかもしれないけどね……」


港に行くがてらにレナ達は宿屋らしき建物を探すが、何処の店も閉まって営業していなかった。そして港の方に辿り着くと、報告通りに港には大きな船は一隻も見当たらなかった。


「本当に船が見当たらないわね……」
「人の姿もないでござる」
「本当に漁に出る事もできないのか……」


この港町にレナ達が訪れたのは海底王国へ向かうためだが、それにはどうしても海を移動する船が必要だった。しかし、港には大船は一隻も存在せず、せいぜい数人乗りの小さな小舟しか浮かんでいない。

船がなければ海に出る事はできず、まさか船無しで泳いで海底王国に向かうわけにはいかない。マリアは神器ウィングを所持しているので空を飛んで移動できるが、まさか彼女だけ行かせるわけにもいかない。


「人を探しましょう。街を襲ってきた魚人の事をもう少し詳しく聞きましょう」
「そうでござるな」
「ん?ちょっと待って……」
「レナ、どうしたの?」


レナは海の方に視線を向けて違和感を覚えた。他の者は特に何も気づいていないが、レナは海面に視線を向けて違和感の正体を探る。確かに海の方で何かが見えたレナは目つきを鋭くさせて様子を伺う。


「今、何か見えたような……」
「見えた、ですか?」
「……風の精霊も騒いでいるわね」


海面に何かが見えたような気がしたレナは魔力感知と気配感知を発動させて警戒すると、マリアは右手を伸ばして周辺に漂っている風の精霊を感じ取る。すると彼女も精霊たちが何かに反応している事に気付き、両手を構えて魔法の準備を行う。


「いったい何を感じ取ったのでござる」
「まだ分からない……でも、嫌な予感がする」
「ちょ、ちょっと待てよ?この状況で嫌な予感がするって……まさか!?」
「……構えなさい!!」
『むむっ!?何か来るぞ!!』


全員が港の前で警戒態勢に入ると、唐突に海中に人影が現れて派手な水飛沫を舞い上がる。海面から出現したのは魚人の群れであり、様々な海の生物の顔と人間のような胴体をした生物が港に上がる。


『ギョエエエエッ!!』


奇怪な鳴き声を上げながら数十体の魚人が出現すると、それを見たレナ達は咄嗟に武器を構える。魚人たちは手には銛のような武器を構えており、港に訪れたレナ達を取り囲む。

魚人の群れに取り囲まれた形になったレナ達は武器を抜こうとすると、最初に動いたのはマリアだった。彼女は風の聖痕を利用して風の精霊を呼び寄せると、自分達の周囲に竜巻を形成して魚人の群れを吹き飛ばす。


「邪魔よ」
『ギャアアアアッ!?』
「あっ……戦闘終了ですね」
「早すぎない!?」


いきなり現れた魚人の群れをマリアは軽く手を振り払う動作だけで竜巻を作り出し、それに巻き込まれた魚人の群れは次々と遠く離れた海面に落ちていく。戦闘を開始して数秒も経過しない内にマリアが魚人の群れを吹き飛ばしてしまい、他の者たちは何もする事ができなかった――





――魚人の群れを蹴散らした後、レナ達は港の方に流れ着いて来た魚人の拘束を行う。唐突に港町に現れた竜巻を見て異変に気付いた街の住民達が駆けつけると、そこには魚人を拘束するレナ達の姿を見て彼等は非常に驚く。しかし、すぐに港町の町長らしき人物が現れてレナ達に感謝した。


「ありがとうございます!!冒険者様、我々を助けに来てくれたのですね!!」
「冒険者?」
『うむ、確かに吾輩達は冒険者だが……ここへ来たのは偶々だ。旅の途中で立ち寄っただけだぞ』
「えっ……では、我々が依頼した他の街の冒険者様ではないのですか?」


町長はレナ達が自分達が雇った冒険者だと勘違いしていた様子だが、それに対してマリアが対応を行う。立場的には彼女はバルトロス王国の冒険者ギルドの代表であり、他国であまり目立ちすぎると色々とまずい。


「私達は観光目的でここへ来た王国の冒険者よ。ここで何が起きたのか教えてくれないかしら?」
「おお、王国の冒険者の方でしたか……いやはや、お恥ずかしい話なのですが、実は一か月ほど前から魚人がこの港町に現れるようになり、そのお陰でこの有様でして……」


町長の話は事前にリンダとハンゾウが調べた情報以上の事は分からず、彼等も急に現れて襲い掛かってきた魚人の群れに困っている様子だった。いったいどうして魚人がこの街を襲うようになったのかも分からずに困っているという。
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