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真・最終章 七魔将編

食材の調達

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「ハルナに元気を出させるには……やっぱり、美味しい料理かな?」
「料理ならここにあるじゃないか」
「いや、ハルナの好物は肉だから」


レナの言葉にティナとコトミンが作ったおにぎりをゴンゾウが差しだすが、ハルナは大の肉好きであるため、彼女が元気を出す料理は肉類しか有り得ない。しかし、今の街の状況では新鮮な食材の調達は難しい。

七魔将の騒動のせいで現在の街は被害が大きく、復興作業の際中である。マリアが戻った事で安全は確保されたが、少し前までは外部の人間が立ち寄る事もできない場所だった。そのせいで食材を輸入する商人も訪れられず、今の街にはハルナを満足させる食材は残っていない可能性もある。


「ここ最近、色々とあったからな、街で食材を調達するのは難しいんじゃないのか?」
「確かにそうだね、なら外に出て久々に狩猟でもするか」
「それなら俺達も一緒に行くぞ」
「そうね、刑務所に閉じ込められていたせいで私も身体が鈍っていた所だし……」
「僕はちょっと疲れたからここに残るよ……」
「私も狩りは得意じゃないから……」


狩猟に向かうというレナの発言にゴンゾウとシズネが同行する事を継げ、一方で疲弊したダインは屋敷に残り、狩りはあまり好きではないティナも残る事にした。当然ではあるが彼女の護衛役のリンダも残る事になり、その代わりにコトミンもレナ達と一緒に行く事にした。


「レナ、外に行くならウルとスラミンとヒトミンの散歩もした方がいい」
「散歩って、別に遊びに行くわけじゃないけど……まあ、いいか。ウルが一緒なら獲物をすぐに見つけてくれるし」


狩猟の際はウルの力を借りる事になるかもしれず、コトミンの言う通りにレナはペットたちも共に連れていく事にした。ちなみにアンジュとサーシャはこの場にはおらず、二人は長老と共にヨツバ王国の森人族と色々と話し合いを行っている。

二人は普段の言動はともかく、一応は戦士長という達がを務めている。そのために長老と共に過去に因縁があったヨツバ王国の森人族と話し合いを行い、これから両種族がどのように接していくのか話し合う必要があるらしい。尤も因縁といってもダークエルフ側もヨツバ王国側も争う気はなく、和解を前提とした話し合いであるとレナは聞いていた。


「そういえばミレトは何処に行ったの?」
「途中までは一緒だったんだが……なんでも家に戻るそうだ」
「そっか……」


ゴンゾウと行動を共にしていたはずのミレトは何時の間にか姿を消し、彼も一応は「聖痕」の所有者であるため、七魔将との最後の戦いではミレトの力を借りる場面が訪れるかもしれない。しかし、まずはハルナの元気を出させるためにレナ達は街の外へ向かう――





――街を抜け出すとレナ達は草原の様子を伺い、手ごろな魔物がいないのかを探したが何故か魔物は一匹も姿を見えなかった。普段ならば草原に赴けば魔物など簡単に見つかるはずなのだが、今回に限っては姿が見えない。


「魔物がいないな……」
「きっと、ブラクのせいだよ。あいつが黒雲と同化して暴れ回ったせいで周辺一帯の魔物達が逃げ出したんだ」
「そうね、その考えが一番可能性が高そうね」
「消えた後も迷惑」
「クゥ~ンッ(しょんぼり)」
「「ぷるぷるっ(よしよし)」」


ブラクが出現した影響で冒険都市の周辺地域の魔物達は逃げ出してしまったらしく、これでは狩猟どころではなかった。魔物を探し出して狩るにしてもこの状況では難しく、他に魔物が居る場所に向かわなければならない。


「仕方ないな、こうなったら少し遠いけど深淵の森に戻ろうか」
「あそこまでわざわざ戻るの?」
「だって、この近くで魔物が残っていそうなのはあの森しかないし……」
「確かにあの森なら食べ応えのある魔物はたくさんいるな」
「でも、時間はかかるわよ」
「大丈夫、叔母様から新しい水晶札を貰って来たから」
「……ちゃっかりしてる」


出発前にレナはマリアの元に訪れて都市の外に離れる事を告げると、マリアはすぐに水晶札を渡してくれた。レナが受け取った水晶札はいつも通りに「転移魔法陣」が刻み込まれ、これを利用すれば一度訪れた場所なら一瞬で移動できる。

事前に冒険都市の近くにてレナは「空間魔法」を発動させ、この場所に何時でも戻れるように黒渦を作り出す。そして深淵の森にある遺跡を思い浮かべ、転移魔法陣で転移を行う。


「よし、皆しっかりウルにしがみついててね」
「こうか?」
「ク、クゥ~ンッ」
「ちょっと、苦しがってるでしょ!!首を絞めるのは止めなさい!!」
「す、すまん……」
「よしよし……スラミンとヒトミンも離れないようにくっついて」
「「ぷるぷるっ」」


レナはウルを中心に転移魔法陣を発動させようとすると、全員がウルに身体を寄せる。そして転移魔法陣を発動した瞬間、レナ達の身体が光の柱に飲み込まれる――
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