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真・最終章 七魔将編

肉体の構造変化

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精霊魔法とは風の精霊の存在を感じ取るだけでは成り立たず、そもそも厳密に言えば精霊だけの力では魔法を生み出す事はできない。精霊とは言わば自然界に存在する魔力と言っても過言ではなく、精霊魔法とは分かりやすく言えば自然の中に存在する魔力と自分の魔力を組み合わせる事で発動できる。

例えばレナの「支援魔法」は他の人間の魔法を強化する事もできるが、支援魔法の本質は魔力を送り込む事である。仮にレナが他の人間の魔法を強化する場合、その人間の身体かあるいは魔法その物に魔力を送り込まなければならない。そして精霊魔法とは自然界に存在する魔力を利用し、それを自分の魔法と組み合わせる事で己の魔法を強化する。

精霊魔法は自分自身の魔力に精霊の力を借りる事で発揮する「合成魔術」と言っても過言ではなく、仮に使用者が全く魔力を持たない場合は精霊魔法を発動する事もできない。尤も精霊を体内に受け入れれば魔力を回復させる事もできるが、精霊を体内に受け入れるのは非常に困難な技術であり、それこそ聖痕の所有者でもなければほぼ不可能な芸当だった。


「レナ、どうやら貴方は聖痕を継承した時に身体の構造が変化したのよ。普通なら人間の貴方が精霊を視認するどころかその力を借りる事はできない」
「でも、今は……」
「話は最後まで聞きなさい。私が言っているのはという事よ。今の貴方の身体は聖痕を受け入れた時に構造が変化したのよ」
「ちょ、それって大丈夫なのか?」


マリアの言葉にダインが心配するが、マリアは考えた末にレナならば問題はないと判断する。レナが普通の人間ならばともかく、ハヅキ家の血を継いでいる事だからこそ起きただと考える。


「恐らくだけど、貴方が聖痕を継承した時に身体の構造が人間から森人族に近付いたのよ。普通の人間では精霊魔法は操る事はできないけど、ハヅキ家の血筋である貴方には森人族の血も流れている。そして聖痕を吸収した時、身体の構造が変化して精霊魔法も扱えるようになった」
「へえ……あ、そういえば聖痕を継承した時に上手く魔法が発動できない時期があったんだけど、それも何か関係しているのかな?」
「恐らく、身体の構造が急に変化したせいで今までの体内の魔力の流れが大きく変化したのね。だけど、時間が経過するにつれて貴方自身が無意識に新しい魔力の流れを順応した事で魔法がまた使えるようになったはずよ」
「そうだったのか……」


レナは聖痕を受け継いだばかりの時に魔法の不調を引き起こしたが、あれは聖痕を軽傷した事で身体の構造が変化し、上手く魔力が練れない状態だった。そのせいで一時期は一部の能力を除いて魔法を使う事ができなかった事が判明するが、今では特に問題なく扱える。

だが、マリアの説明ではレナは聖痕を受け継いだ時に精霊魔法が扱える肉体の構造に変化したはずだが、聖痕を譲渡した後は彼は精霊を感じ取る事も精霊魔法を扱う事もできなかった。


「でも叔母様、聖痕のお陰で俺は精霊魔法を使えるようになったのならどうして今まで精霊を見る事はできなかったの?」
「いいえ、貴方は既に聖痕が無くても精霊魔法を扱える器はできていた。だけど、今まで聖痕を利用して風の精霊を呼び出す方法しかなかったから貴方は精霊魔法の使い方が分からなかった。けれど私の魔力を貴方の中に送り込んだ時、貴方の中に眠っていた精霊を司る機能が芽生えたのよ」
「叔母様の魔力のお陰で?」
「風の精霊魔法を操れるのは森人族だけ……普通の人間ならば精霊魔法を扱う事はできない。だけど貴方は森人族の血筋でしかも森人族である私の魔力を受け取った。そのお陰でようやく眠っていた才能が開花したのよ」
「才能……」


レナは試しに指先を伸ばすと、空中に浮かんでいた風の精霊が集まる。今までは精霊はレナが触れようとすると逃げ出していたはずだが、今は精霊の方からレナの元に寄ってきた。


(本当だ、聖痕を使っていた時と同じように風の精霊を感じ取れる……むしろ、前よりもはっきりと見える気がする)


聖痕を所有していた時よりもレナは風の精霊の存在を感じ取り、今ならば精霊魔法も扱える気がした。聖痕がなくなってもレナは聖痕の所有していた頃と何ら変わりない能力を持ち合わせ、むしろ前よりも魔法の力が磨かれた気がした。


「まさか人間の兄貴が精霊を扱えるなんて……やっぱり兄貴はすごいっす!!」
「凄い、どころではないだろう……」
「おいおい、ちょっと待てよ……精霊を操れるという事は坊主も風属性の魔法や魔法剣を強化できるようになるのか!?」
「…………(←開いた口が塞がらない)」
「何だかよく分からないけど……流石はレナたんだね!!」
「さすレナ」
「久々に聞いたな、その単語……」


精霊魔法さえも扱えるようになったレナに森人族組は驚き、他の者たちは混乱していた。マリアにとってもレナが人間でありながら精霊魔法を扱える事は彼女も予想外の出来事だった。
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