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真・最終章 七魔将編

思いもよらぬ副産物

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(精霊が……見える?そんな馬鹿な……)


人間であるレナは精霊を感じ取る事も見る事もできない(精神を集中すれば薄っすらと見える事はあったが)。風の聖痕を宿していた時は精霊を視認する事はできたが、その聖痕は今はマリアに譲渡している。それにも関わらずにレナは自分の前に漂う風の精霊を見て戸惑う。

最初は幻覚の類かと思ったが、試しに掌を伸ばすと風の精霊が彼の手元に漂う。聖痕が無い時に風の精霊に触れようとした時は避けられたはずだが、何故か今は風邪の精霊はレナに触れられても離れようとしない。


(どうなってるんだ?どうして風の精霊がこんなにはっきりと見えるんだ?それに触れる事まで……)


風の精霊を完璧に視認できるどころか、精霊が離れない事からレナは不思議に思う。これまでは人間の自分は精霊魔法を完璧に扱えないと思い込んでいたが、今ならば何となくだが精霊魔法さえも使えるような気がした。


「……風よ」
「えっ!?」
「何っ!?」
「嘘だろっ!?」
「っ……!?」
「まさか、そんな……?」


レナが無意識に言葉を口にした瞬間、風の精霊が集まって彼の手元に小さな風の渦巻が誕生した。その光景を見て驚いたのはエルフたちであり、見物人の中に混じっていたエリナ、ハシラ、シュン、ハヤテ、そしてマリアでさえも驚く。

本来ならば風属性の精霊魔法は森人族だけしか扱えず、例外があるとすれば風の聖痕を継承した人間だけであり、普通の人間が風の精霊を従える事はできない。しかし、今現在のレナは風の精霊を確かに操って魔法を生み出していた。しかも彼の扱った魔法はこの世界に訪れて初めて目にした魔法である。


(これはアリアの……)


幼少期、新年の森の屋敷の中でレナは共に暮らしていたアリアという名前のメイドの事を思い出す。アリアはレナにとっては姉のような人物で昔一度だけ屋根の上から落ちそうになった時に助けてくれた。屋根の上から落ちてきたレナを見てアリアは咄嗟に精霊魔法を発動させ、彼を救い出した。

生まれて初めて見た魔法にレナは感動を覚え、何時の頃からか彼女のように魔法を使いたいという気持ちを抱く。そして今のレナは彼女と同じように精霊魔法さえも扱えた。


(どうして今更……)


風の聖痕を宿していた時もレナは精霊魔法を完璧に扱えたとは言えず、結局は身体の負担になるという理由でマリアの譲渡している。しかし、今のレナは風の聖痕も無しで精霊を視認し、精霊魔法を扱う事もできる。その事に驚いているのは彼だけではなく、森人族であるエリナ達も同じだった。


「兄貴、また風の精霊を見えるようになったんですか!?」
「信じられん……人間が風の精霊を見える所か、力を借りるなど……」
「坊主……お前には本当に驚かされるわ」
「…………(←睨みつける)」
「……天才、といった表現だけでは説明できないわね」
「いや、そう言われても……」
「どうしたんだい、あんた達……急に騒ぎ出して何かあったのかい?」


レナが風の精霊を操る姿を見たのは森人族だけであり、他の者たちは風の精霊の力を借りて彼が魔法を発動させた事も理解していない。しかし、最も魔法の才能を持つティナはレナの元に訪れて何かに気付いたように声をかける。


「レナたん……」
「ティナ?」
「その……よく分からないけど、レナたんから前みたいに力を感じるの」
「力?それはどういう意味だよ、姫さん?」
「シュン、貴様……ティナ様になんて口を」


シュンの言葉に北聖将のハシラは眉をしかめるが、ティナは特に気にもせずにレナの腕を掴んで何かを確認するように目を閉じた。その行為にレナ達は戸惑うが、ティナは何かを確信したように頷く。


「うん、やっぱりレナたんの中に聖痕の力を感じるよ」
「えっ……聖痕?でも、俺はもう聖痕は……」
「なるほど、そういう事ね……」


ティナの言葉にレナは呆気に取られるが、マリアは納得したように頷く。彼女は自分の宿した風の聖痕に視線を向け、先ほどレナが魔法を発動した際に風の聖痕が反応した事を説明する。


「レナ、貴方は気付いていないようだけど、聖痕と同じ力が眠っているのよ」
「えっ!?いや、でも聖痕は叔母様に渡したはず……」
「確かに聖痕は私が継承したわ。でも、貴方が聖痕を宿していた時に肉体のほうにも変化が起きていたのよ」
「どういう意味ですか?」
「今から伝える事は私の推測よ。それを理解した上で聞きなさい」


マリアの言葉に全員が頷き、今のレナの肉体に何が起きているのか彼女は説明を始めた。彼女の話はレナにとっては正に衝撃の内容だった――





――人間であるレナは本来であれば森人族のように風の精霊を視認する事や存在を感じ取る事も不可能である。しかし、彼の場合は祖母がハヅキであり、4分の1は森人族の血を継いでいる。そのお陰で普通の人間と違ってレナは意識を集中させれば風の精霊を感じ取る事はできた。しかし、それでは風の精霊を扱えるとは言えない。
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