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真・最終章 七魔将編

青の剣聖の覚醒

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「ほらほら、さっきまでの威勢はどうしたの?」
「くっ……」
『ふはははっ!!殺せ、殺すのだ!!』


アルドラはシズネに対してクリムゾンを振りかざし、闇の鞭を叩き付けようとした。シズネは回避に専念するが、闇の鞭は軌道を変化させて彼女を狙う。少しでも触れたらシズネの生命力は奪われ、しかも厄介な事に闇の鞭が地面や建物に叩き付ける度に闇属性の魔力の残滓が飛び散る。

戦闘が始まってから数分も経過すると周囲に闇属性の魔力で構成された「黒霧」が広がり、シズネは吸わないように口元を覆い込む。この黒霧を吸い込めば彼女の身体は呪詛に侵され、触れる事すら危ない。しかもアルドラの方はブラクの影を宿しているせいか黒霧が近付いてこない。


(あの女の周りだけ不自然に霧が避けている……それに視界が悪くなって上手く動けないわね)


シズネは黒霧のせいで視界が封じられ、彼女は仕方なく「心眼」を発動させようとした。心眼の技能を使用すれば目を閉じて居ようと周囲の状況を把握できるため、目を閉じながらシズネは動き回る。


「心眼を身に付けているようね。でも、無駄よ……その程度では私には勝てない」
「ちっ……おしゃべりな女ね」
「…………」


アルドラはシズネに対して何か言いかけたが、すぐに口を閉じて攻撃を続行した。シズネはアルドラの反応に疑問を抱いたが、彼女は振り払われた闇の鞭を見て回避する。


(早く勝負を付けないとこっちがまずいわね……けど、どうすればいいの?)


闇属性の魔力に対してシズネは対抗手段を持たず、彼女の雪月花は聖剣と違って闇属性の魔力を払う力はない。仮にレナならば聖剣を作り出して反撃できたかもしれないが、生憎とシズネに彼の真似はできない。

シズネは考えた末にアルドラを倒すためには自分も無茶をしなければならず、彼女は全身に意識を集中させる。この時に彼女の身体に青色の魔力が宿り、シズネは「魔鎧術」を発動させた。


「はあああっ!!」
「何っ!?」
『何だと!?』


闘技祭の前に魔刀術を習得しているシズネは当然ながらに魔鎧術も扱える。しかし、彼女の魔力容量はレナと違って少なく、魔鎧術のように全身を魔力で覆い込む術は魔力消費が激しすぎて実戦では滅多に使えない。しかし、アルドラの血に寄って吸血鬼の能力を疑似的に扱えるシズネは魔力が大幅に増えており、全身に魔力を纏った状態で突っ込む。


(この状態ならしばらくは大丈夫なはず!!)


黒霧だろうと闇の鞭だろうと全身に魔力の鎧を纏えば身体が侵される事はなく、アルドラに目掛けてシズネは一直線に突っ込む。黒霧の影響で視界が悪いのは相手も同じであり、彼女は全力の力でアルドラに突きを繰り出す。


「刺突・閃!!」
「くぅっ!?」
『ちぃっ!!』


シズネが凄まじい速度で突きを繰り出すと、アルドラは顔を反らして回避するのが精いっぱいであり、この時に彼女の頬に切り傷が生まれる。咄嗟にアルドラは近づいて来たシズネに矢の鞭を振り払うと、シズネは直撃を避けるために雪月花を地面に突き刺す。


「凍り付きなさい!!」
「はああっ!!」


雪月花が地面に突き刺された瞬間に氷塊が誕生し、それに対してアルドラは闇の鞭を払う。氷塊によって闇の鞭は防がれたが、クリムゾンは大量の闇属性の魔力を放出し、本格的に屋敷全体に広がり始める。

氷塊が闇の鞭を防いでいる間にシズネは後退するが、クリムゾンの放出する闇の瘴気が屋敷全体に広がり始め、一瞬でも魔鎧術を解除できない状態に陥る。シズネは魔鎧術で守られているが、それでも永遠に魔鎧術を維持できるわけではない。


『死ねっ!!小娘が!!』
「……いいえ、死ぬのは貴方よ」
『何だと!?』


何処からか聞こえてくるブラクの影に対してシズネは笑みを浮かべ、彼女は既に勝負を決したと確信していた。その証拠に何処からか金属音が鳴り響き、苦し気な声が聞こえてきた。


「あああああっ!?」
『なっ、馬鹿な……何故だ、こんなっ……!?』
「もう貴方達は終わりよ」


シズネは金属音が鳴り響いた方向に向けて歩くと、彼女の前に徐々に身体が凍り付いていくアルドラの姿があった。先ほど、シズネの攻撃を受けた時にアルドラは既に身体が凍り始めていた。そして彼女の身体に宿るブラクの影も同様に凍らされようとしていた。

いくらブラクの影が実体を持たないと言っても憑依している相手が凍り付けば無事では済まず、アルドラの額の髑髏は逃げ出そうとする。この際にアルドラの肉体に宿っていた瘴気も髑髏と共に引き剥がされ、髑髏は黒霧と化してアルドラから解き放たれた。


『おのれぇえええっ!!』
「消えなさい、悪霊!!」


最後の悪あがきのつもりか髑髏はシズネに目掛けて飛んできたが、シズネは冷静に雪月花を構えて切り裂く。髑髏は雪月花によって見事に切り裂かれ、一瞬にして凍り付いて空中で砕け散ってしまう。それを見たアルドラは身体が凍り付き始めながらも自分の代わりに忌々しいブラクの影を倒してくれた彼女に笑みを浮かべる。
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