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真・最終章 七魔将編

鬼を越えろ

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「があああああっ!!」
「ぐおおおおおっ!!」


ゴンゾウとオウガは殴り合い続け、既にお互いの顔は腫れていた。だが、腕力は互角だとしても身体の凶刃さは鬼人族であるオウガが上回り、彼は止めの一撃を喰らわせるためにゴンゾウの頭を掴む。


「くたばれっ!!」
「ぶふぅっ!?」


オウガの膝蹴りを受けたゴンゾウは顔面が陥没し、この時に彼の鬼人化が解け始めていた。皮膚の色が戻り始め、凝縮されていた筋肉が元に戻ろうとする。しかし、ゴンゾウは薄れていく意識の中、ゆっくりと迫る地面を捉えた。

自分の身体が倒れようとしている事に気付いた彼は目を見開き、どうにか踏み止まる。確実に彼を倒したと思っていたオウガは呆気に取られるが、ゴンゾウはそんな彼の胸元に掌を伸ばす。


(これが俺の……最後の悪あがきだ!!)


隙を見せたオウガの胸元にゴンゾウは掌を押し当てると、その行為にオウガは意味が分からなかった。しかし、彼は野生の本能で危険を感じ取って反射的にゴンゾウの腕を振り払おうとした。


「きさっ――!?」
「発勁!!」


ゴンゾウは繰り出したのは相手の内部に衝撃を伝える「発勁」の戦技であり、オウガの心臓に直接に衝撃を与える。オウガは思いもよらぬ攻撃を受けて目を見開き、彼は攻撃に集中し過ぎて自分の肉体に「魔鎧」を纏っていなかった。

発勁の戦技は本来は巨人族の格闘家が扱う戦技ではなく、力技を好む巨人族にとっては発勁などの戦技は小手先の技術として忌み嫌われている。しかし、ゴンゾウは力だけ磨いても真の格闘家にはなれないと考え、闘技祭の前から練習して習得していた。


(通じた!!)


発勁を受けたオウガは心臓に直接に衝撃を与えられた事で身体が硬直した。しかし、ゴンゾウの発勁はアイラやリンダ程の威力はなく、相手を痺れさせる程度の威力しか出せない。それでも心臓に直接当てれば数秒だけだが相手は動けずに隙を生む。


(この拳に全てを込めろ!!)


ここまでの戦闘でゴンゾウは全身の骨に罅が入り、鬼人化の影響で筋肉組織も傷ついている。それでも彼はここで諦めるわけには行かない。かつてオウガは巨人族の「鬼人化」は自分達の種族の真似事だと言ったが、ゴンゾウはそれを否定するために戦う。


(俺達は……鬼を越える人族だ!!)


巨人族の鬼人化は決して「鬼人族」に近付くための技術ではなく、鬼を越える力を身に付けるために開発された技術だとゴンゾウは信じていた。それを照明するためにはここで倒れるわけには行かず、彼は渾身の一撃を繰り出す。


「うおおおおおおおおっ!!」
「がはぁああああああっ!?」


ゴンゾウの最後の力を振り絞った一撃がオウガの顔面を捉え、見事に打ち抜いた。オウガはゴンゾウの一撃によって意識が奪われ、地面に倒れ込む。その様子をゴンゾウは倒れずに立ったまま見下ろし、自分の拳を見て砕けた事を知る。

倒れたオウガとそれを見下ろすゴンゾウ、怪我の具合は明らかにゴンゾウの方が重傷だった。それでも意識を失ったオウガと最後まで立って戦ったゴンゾウの勝負の勝敗は明白であり、遂にゴンゾウは鬼人将オウガを打ち倒した。


「勝った……」
「ゴンゾウさん!!」
「なんとっ……信じられん!!勝ったのか、この男に!?」


何とか勝利の言葉を口にしたゴンゾウの元にゴウライとミレトが駆けつけ、倒れているオウガを見て二人は驚いた表情を浮かべる。まさかオウガが敗れるなど夢にも思わず、彼を打ち倒したゴンゾウ自身も実感が湧かない。だが、オウガが気絶した時点でこの勝負はゴンゾウの勝利で間違いなかった。

ゴウライは倒れているオウガを確認し、意識は失っているが生きている事を知ると安心する。ゴウライとしてはオウガとは決着を付けなければならず、彼が生きていた事に安堵した。その一方でミレトはゴンゾウの怪我を見て急いで薬を取り出す。


「ゴンゾウさん!!これを飲んでください!!」
「それは……回復薬か?」
「はい、出かける前にレナさんがくれた薬です!!」


作戦開始前にレナはホネミン特製の回復薬を皆に渡しており、ゴンゾウも所持しているはずだが彼は戦闘の最中になくしてしまい、ミレトが所有していた回復薬を受け取ろうとした。しかし、ゴンゾウは鬼人化の影響でまともに動く事ができず、少し身体を動かすだけで激痛が走った。


「ぐううっ!?」
「ゴンゾウさん!?」
「むっ!?こら、無理をするな!!仕方がない、ここを離れるぞ!!」
「えっ……!?」


ミレトを押し退けてゴウライはゴンゾウに近付くと、彼の身体を持ち上げる。その姿を見てレミトは驚き、ゴンゾウの巨体をゴウライは軽々と持ち上げる彼女の怪力に呆気に取られ、負傷したゴンゾウを連れて彼女は歩む。

二人の後に続こうとミレトは慌てて追いかけようとした時、不意に彼は背後から気配を感じ取った。驚いたミレトは振り返ると、そこには完全に気絶していたはずのオウガが起き上がろうとしていた。
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