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真・最終章 七魔将編

諦めも肝心

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「そ、そんな!!聖剣が通じないなんて……くっ!?」
「レミア様!?大丈夫ですか!?」


聖剣の力を無理に引き出しすぎた影響か、レミアは膝を着いて顔色を青くさせる。慌ててジャンヌは彼女の肩を掴んで安否を確認するが、そんな彼女の手を振り払ってレミアは聖剣を構えた。


「まだです!!まだ、私は……」
「駄目です!!これ以上にその聖剣を使えば危険です!!」
「止めないでください!!例え、この命が尽きようと……!!」
「止めんかっ!!」


無理やりにでも聖剣の力を引き出そうとするレミアに対して何者かが彼女の頭を小突き、頭に大きなたんこぶができたレミアは声にならない悲鳴を上げて座り込む。驚いたジャンヌは振り返ると、そこには冒険都市に残ったゴウライの姿が存在した。


「ゴウライ様!?どうしてここに!?」
「うむ、嫌な魔力を感じて来てみればそこの娘が騒いでいたからな」
「じゃ、邪魔をしないでください!!あの雲を何とかできるのは私だけなんです!!」
「いいから落ち着け」


レミアは涙目を浮かべながらも聖剣を使おうとしたが、そんな彼女の頭を掴んでゴウライは無理やりに振替させる。彼女の圧倒的な腕力で強制的に振り返らされたレミアは驚いた表情を浮かべるが、自分の邪魔をする彼女に怒鳴りつける。


「は、離してください!!何故、邪魔をするのですか!?」
「なら逆に聞くが、お前一人であの雲を何とかできると思っているのか?」
「できるできないの話ではありません!!何とかしなければいけないんです!!」
「話にならんな……ジャンヌ、この小娘を連れていくぞ」
「え、あ、あの……」


ゴウライは聞く耳持たずにレミアを抱きかかえ、そのまま城壁から降りようとした。そんな彼女の行動を見てジャンヌは戸惑い、他の兵士達もどうすればいいのか分からずに混乱する。

必死にレミアはゴウライから逃げようとするが、ゴウライと彼女では力の差が大き過ぎて離れる事ができない。それでもレミアはここで自分が黒雲を何とかしなければ大勢の人間に被害が出る事を訴えた。


「離してください!!あの黒雲を何とかしないと大勢の人間が被害を受けます!!それは貴方も御存じなのでしょう!?」
「分かっている。だが、今のお前ではあの雲を何とかできるとは思えん。無駄死にさせるぐらいならばこのまま連れていくぞ」
「無駄死になんて……!!」
「レミア様、落ち着いて下さい。私もゴウライ様の言う通りだと思います」


ジャンヌもレミアを説得するように語り掛けると、彼女さえも自分の力を信じられないのかとレミアは衝撃を受けた表情を浮かべる。しかし、いくら言われようとレミアは諦めるつもりはなかった。


「離しなさい!!私はもう逃げるわけにはいかないんです!!」
「駄目だ、お前をここで死なせるわけにはいかない」
「何を勝手な……私が死んでも貴女には何も関係ないはず!!」
「吾輩は、な……だが、周りの兵士達はどう思う?」
「それは……!?」


ゴウライの言葉を聞いてレミアは周囲に存在する兵士に視線を向けると、彼等は悲痛な表情を浮かべて跪いていた。この場に存在する兵士達はレミアが王都から連れ出した兵士達であり、彼女に忠誠を誓っている。兵士達はレミアがこれ以上に無理をしないように懇願する。


「レミア様、もうお辞め下さい!!」
「これ以上無理をすれば死んでしまいます!!」
「貴女が死ねばこの国はどうなるとお思いですか!?無暗に命を捨てるような真似は止めてください!!」
「あ、貴方達……」
「これを見てもまだ死にたいという気か?」


兵士達の言葉を受けてレミアは正気を取り戻し、確かに黒雲を止めなければ大勢の被害者が生まれるかもしれない。しかし、大した効果を見込めないのに聖剣の力を無暗に引き出して攻撃する行為は愚かでしかない。

一番最悪なのはレミアがここで死亡すれば誰も黒雲を止める事ができず、結局は大勢の人間に被害が被る。しかし、ここで引けばレミアは死なずに黒雲を打ち消す方法も見つかるかもしれない。冷静になったレミアはゴウライに下ろして貰うと、自分が取り乱していた事を謝罪する。


「申し訳ありません……少し、頭に血が上り過ぎていたようです」
「うむ!!分かればいいのだ!!」
「あの黒雲が冒険都市にまで到達するのにまだ幾ばくかの猶予はあります。それまでに別の方法を考えましょう」


レミアが落ち着きを取り戻すとゴウライは頷き、ジャンヌは冷静に雲の動きを観測して冒険都市に黒雲が迫るまでの時間を把握する。本物の雲と違って闇属性の魔力で構成された黒雲は進行速度が遅く、まだ僅かではあるが時間は残されていた。


「こんな状況に備えて冒険都市の市民には黒雲が迫った時、建物内に避難するように言いつけています。しかし、雨が降り続ければ建物内も安全とは言い切れません」
「ならばいっその事、地下の下水道に逃げるのはどうだ?」
「いいえ、それは駄目です。下水道は逃げ場がなく、闇属性の魔力が充満すると助かる見込みはありません。実際に前の時に下水道に生息していた鼠が大量死しています」


前回の黒雨が降った際、地面に染み込んだ闇属性の魔力が下水道内にも広まり、その影響で下水道に生息していた大量の鼠が死亡していた。そのために地下に逃げる事は得策ではなく、やはり大きな建物に隠れるのが一番だった。
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