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真・最終章 七魔将編

王都の急変

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(ここでこいつを始末できれば……いや、無理か)


シノビは弱っているアルドラを見て武器に手を伸ばそうとしたが、背後から感じた気配に気づいて振り返とそこにはハヤテが音もなく立っていた。彼女は既に刀に手を伸ばしており、その気になればシノビを一瞬で仕留めきれる距離まで詰めていた。

現在のハヤテはアルドラの血の影響で彼女の配下と化しており、他の者と違って彼女は呪詛に侵されていない。そのために正気は取り戻しておらず、アルドラの意のままに操る事ができた。


「生憎だったわね……私を殺せばその子が貴方を殺すわ」
「ハヤテ……」
「…………」


現在のハヤテは拡音石のペンダントは取り上げられており、声が小さすぎて彼女が何を語っているのかはシノビでさえも聞き取れない。しかし、もしもアルドラに手をかけようとすればハヤテは間違いなくシノビを斬るだろう。

剣聖の中でもゴウライやシズネに並ぶ実力者であり、かつてはレナを追い詰めた相手でもある。シノビでは分が悪く、ここは退いて他の仲間と合流する必要があった。


「……俺は行かせてもらうぞ」
「好きにしなさい。私達もここを離れるわ……言っておくけど、仲間を連れて私を探そうとしても無駄よ。こういう状況は慣れているんだから」
「そんな事をせずともお前の身体はいずれ呪詛でくたばるだろう」
「そうね……」


シノビの言葉にアルドラは言い返せず、現在の彼女は呪詛に徐々に身体が侵されている。何の治療も施さなければあと数日の命であり、彼女が助かる方法があるとすれば数日中にブラクを見つけ出して倒すしかない。呪詛を生み出した元凶を打ち倒せば彼女の身体は治る可能性はあるが、数日中に姿をくらましたブラクを見つけ出す事など不可能に等しい。

アルドラとハヤテを置いてシノビは地上へ戻って仲間達の報告へ向かい、当然だがこのままアルドラとハヤテを見逃すつもりはない。いくら弱っていようとアルドラの能力は厄介なため、このまま放置すればまた何を仕出かすか分からない。特に彼女に操られている者も多数残っているはずであり、早々に始末する必要があった。


(こいつらを生かすわけにはいかん……最悪の場合、ハヤテを始末する事になるかもしれん)


ハヤテとシノビは氷雨の結成時からの付き合いではあるが、敵に操られていようと邪魔をするのならば始末する覚悟はあった。当然だがハヤテの方も命を狙われるならば抵抗するため、次に遭遇した時はお互いの命を奪い合う可能性がある事を二人とも考えていた――





――同時刻、聖水香が炊かれた部屋の中にてレナはベッドで横たわっていた。先日の一件でレナは大部分の魔力を消耗し、回復するのに相当な時間が掛かった。しかし、聖水香は肉体の回復機能を強化させる効果もあるらしく、レナは目を覚ますと自分の肉体が羽のように軽くなった気分を味わう。


「うっ……ここは何処だ?」
「う~ん……」
「レナたん……」


レナは目を覚まして早々に自分のベッドの中にティナとコトミンが潜り込んでいる事に気付き、どうやら二人ともレナを心配して一緒に眠っていたらしい。この時にレナはティナとコトミンの胸を鷲掴みしている事に気付き、二人が目覚める前に揉んでおく。


「おおっ……二人とも前より成長しているな」
「やんっ……」
「あんっ……」


ふにふにと二人の胸を揉みながら堪能すると、悪ふざけはここまでにしておいてレナは炊かれている聖水香に視線を向けて不思議に思う。見た事もない植物が湯気のような物を発しており、それが部屋全体を包み込んでいた。

この湯気の正体はすぐにレナは聖属性の魔力の霧のような物だと知り、この部屋の中にいると聖属性の魔力が一定の感覚で補給され、そのお陰で肉体の疲労や魔力の回復が高まっている事を知る。状況把握のためにレナはティナとコトミンの胸を強く掴んで起こす。


「ほら、起きて二人とも……起きないと尻も撫でまわすぞ」
「いやんっ……」
「はうっ……」
『珍しくセクハラしてますね。結婚してからたかが外れてませんか?』
「え、その声は……ホネミン?」


何処からか聞こえてきた声にレナは振り返ると、部屋の扉を開いて何故かガスマスクのような物を装着したホネミンが中に入り込んできた。その珍妙な格好を見てレナは唖然とするが、ホネミンはすぐに説明してくれた。


『ああ、この格好の事は気にしないでください。ちょっと特殊な薬の調合を行っていたので……』
「いや、それよりもどうしてホネミンがここに……自分探しの旅に出るとか言ってなかった?」
『その旅から戻ってきたら何だか大変そうな事になってたんですよ。それよりもレナさん、アイリス様と交信できますか?』
「え?何言ってんの、ホネミンがいるのにできるわけが……」
『いいからいいから、試してくださいよ』


ホネミンの言葉にレナは驚き、地球人の魂を持つホネミンが傍にいる限りはレナはアイリスとは交信できない事を彼女は知っているはずである。仕方なくレナはいつもの調子で交信を行おうとすると、予想外の出来事が起きた。
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