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真・最終章 七魔将編

師匠の教え

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「ゴンゾウ……お前はかつて俺に勝った時の事を覚えているか?」
「えっ……」
「王妃にそそのかされて俺はお前達の敵となった。だが、お前は仲間を守るためにたった一人で俺に挑み、そして打ち破った。あの時のお前は今よりも弱く、本来ならば俺がお前に負ける要素はなかった……それでも勝てたのはどうしてだと思う?」
「そ、それは……」


ギガンの言葉にゴンゾウは言われてみればどうしてあの時の自分は遥か格上のはずのギガンを打ち倒す事ができたのか分からなかった。しかし、ギガンはそんなゴンゾウに対して答えを告げる。


「あの時のお前は自分のためではなく、仲間のために命をかけて戦っていた。例え、相手が自分よりも強い存在だったとしても戦わなければならない時がある。あの時のお前は俺からすれば一番強く思えた」
「師匠……」
「力が劣っているからどうした、そんな物は技で覆せばいい。相手の方が強靭な肉体を持っているから勝てない?そんなのはただの負け惜しみだ、悔しければ鍛錬を繰り返して自分の力で強靭な肉体を作り上げればいい……いいか、巨人族が鬼人族に劣っている事は事実かもしれない。しかし、だからといってお前がそのオウガとやらに負ける理由にはならない。劣っているのならばそれを覆す力や技術や肉体を鍛錬で身に付ければいいだけの話だ」
「っ……!?」
「俺と戦った時のお前にあって今のお前にはない物……それは敵に立ち向かうだ。お前はオウガの話を聞かされた時、自分自身に疑問を抱いてしまった。そのせいで心と肉体が一致せずに力を発揮できなかった……迷うな、お前はもっと強くなれる」
「師匠……!!」


ゴンゾウはギガンの言葉を聞いてオウガに負けた理由を悟り、彼はオウガの話を聞かされた時に心に迷いが生まれた。その迷いのせいで本来の実力を発揮できず、オウガに敗れた事を悟るとゴンゾウは自分の未熟さを痛感する。

自分の話を聞いて表情を変化させたゴンゾウを見てオウガは笑みを浮かべ、黙って彼の肩に手を置いて頷く。そんなギガンに大してゴンゾウは力強く胸元を叩き、もう自分は迷わない事を心に誓う。


「師匠……俺は強くなります!!」
「その意気だ……もうお前に教える事は俺にはない。ゴンゾウ、仲間のために……そしてお前自身のためにオウガを倒せ」
「はい!!」


オウガを倒す事を目標に定めたゴンゾウはギガンの言葉に頷き、すぐに彼は自分自身を鍛え直すために部屋を後にした。彼を見送ったギガンは自分の時代はもう終わりをつげ、次の世代が新しい時代を作る事を予期した――





――ゴンゾウが奮起する中、監獄に収監されているシズネの方も新しい能力の修行に励んでいた。彼女はアルドラの血を与えられた事で吸血鬼の力に目覚めているが、まだその能力は完全に使いこなしたとは言えない。


「うっ……きついわね」


アルドラによってシズネは吸血鬼の力を利用して今まで以上の身体能力を引き出せるようになった。これまでの彼女は身体能力という点ではレナや他の剣聖に劣る部分があったが、吸血鬼の力を使えば他の人間以上に力を引き出せる。

これまでのシズネの戦い方は突き技を重点に置いていたが、吸血鬼の能力を使用すれば今まで以上の力を発揮して戦える。彼女が突き技を磨き上げたのは格上の相手にも通じる技を造り出す際、殺傷能力が秀でた突き技の方が有効的だったからに過ぎない。

しかし、吸血鬼の能力で身体能力を引き出せばこれまでは軽視していた「斬撃」の攻撃も有効的であり、彼女は武器はないが虚空に目掛けて剣を振り下ろす動作を行う。自分がアルドラに敗れたせいで多くの人間に迷惑を掛けたこと恥じる一方、彼女は新たに得た能力で更なる強さを求める。


(もうこれ以上……レナに無様な姿は見せられないのよ)


シズネは二度と想い人に迷惑を掛けないために吸血鬼の能力を操作して強くなる事を誓う。この能力はアルドラを倒せば失われる事は承知の上であり、彼女を倒すまでの間はシズネは吸血鬼の能力を思う存分に使う事にした――





――同時刻、冒険都市内の地下通路では疲弊しきったアルドラが横たわっていた。彼女はオウガによって地下の下水道に逃げ込む事に成功したが、現在の彼女は疲弊しきって到底まともに動ける状態ではなかった。


「くっ……最悪ね」


アルドラの肉体には「呪詛」が侵された人間と同じく所々に皮膚が黒色化しており、実は下水道に逃げる際に彼女は黒雨を受けて弱り切っていた。最初の内は身体の一部だけだったが、現在は呪詛の侵攻が進んで彼女は衰弱化していた。

このままではアルドラは呪詛に侵されて死んでしまうが、今の状態で地上に抜け出すのは危険過ぎた。万全な状態ならばともかく、弱り切った今の彼女では地上に出たら一般人にさえも勝てずに取り押さえられる可能性もあった。。しかし、そんな彼女に味方する人物が存在し、アルドラはその人物達が戻ってくるのを待つ。
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