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真・最終章 七魔将編

聖水香の効力

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「な、何だいこれは……こんな物で本当に治せるのかい?」
「治せますよ。この煙はただの湯気ではありません、聖属性の魔力その物なんです」
「聖属性の魔力?という事はまさか……」
「そうです、室内でこの聖水香を置けば部屋の中は聖属性の魔力で充満されます。その場所に呪詛に侵された人間を置けばどうなるのか……後は分かりますね?」


ホネミンの言葉に全員が衝撃を受けた表情を浮かべ、部屋の中全体に聖属性の魔力が満ち溢れれば呪詛で侵された人間も身体全体に聖属性の魔力を浸透させる事ができる。呪詛に侵された人間は常に聖属性の魔力が放出され続けて衰弱化していくが、既に部屋全体が聖属性の魔力に溢れていた場合は抜け落ちていく聖属性の魔力が抑え込まれる可能性はある。

早速だがホネミンはギルド内の空き部屋を借りて聖水香を置くと、呪詛の侵攻が激しい人間を運び出して治療を行う。ほぼ全身に呪詛が回った男性をベッドの上に寝かせると、この際に身体中に聖属性の魔力が行き届くように半裸の状態でベッドに横たわらせた。


「よし、これで準備は完了です。後は1時間ぐらいすればこの人は治りますよ」
「1時間!?そんな短い時間で治るのかい?」
「治ります。但し、部屋の中の聖属性の魔力が抜け出ないようにしっかりと密封して下さい」
「でも、それだと酸欠で倒れたりしないのか?」
「大丈夫です。聖水香の花は光合成して新鮮な空気を常に生み出しますから」


部屋の中に患者と聖水香を置いてホネミン達は部屋の外で待機する。ホネミンの予想では1時間ほどで効果が実証されるらしく、その時が来るまで全員固唾を飲んで待ち続けた――





――それから30分後、ホネミンの予想よりも早くに部屋の中から呪詛に侵された人間が姿を現した。その男性は何が起きたのか分からないといった表情でベッドのシーツで身体を隠しながらも部屋から出てきた。


「あ、あの……ここは何処ですか?どうして私は裸でこんな場所に……」
「あ、あんた……平気なのかい!?」
「まさか、本当に治ったのか!?」
「早く身体を調べろ!!」


部屋から自ら出てきた人物にバル達は動揺を隠せず、すぐに身体の検査を行うと30分前まではほぼ全身の皮膚が黒色化していたはずの男性は元の姿に戻っていた。呪詛は跡形もなく消え去り、それどころ身体の痛みや疲労が無くなっていた。


「いや、本当に身体が軽いんですよ!!私は腰痛持ちなんですが今は全く痛くありません!!」
「当然ですね、聖水香には疲労回復と肉体の負荷を治す機能もありますから」
「な、何てことだ……まさか本当に呪詛を治せるとは」
「こうしてはいられない!!早く次の患者を連れてくるんだ!!」
「やるじゃないかいあんた!!今までの無礼は詫びるよ、本当に大した奴だね!!」
「はぐぅっ!?」


聖水香のお陰で症状が悪化していた患者が無事に治ったのを見てバルはホネミンの背中を叩いて褒め称えるが、当のホネミンは背中を強打されて苦し気な表情を浮かべる。


「バル、聖水を全部スラミンに渡して。今から他の水瓶にも与えてくる」
「ああ、分かったよ!!他の奴等も文句はないね!?」
「あ、ああ……」
「教会の方にも連絡する必要がありますね。新しく出来上がった聖水もすぐに渡す様に話を付けておきます」
「よし、これでもう大丈夫なんだな!?」
「まだ油断はできんぞ……ここからは時間との勝負だ」


他の者たちも新しい聖水香を造り出すために動き、呪詛に侵された人間達をすぐに黒虎のギルドに運び込む手配を行う。教会にも新しく作り上げた聖水を渡す様に連絡を行い、他にも手が空いている人間達を呼び寄せて手伝いをさせる。

ホネミンのお陰で呪詛に侵された人間の治療はどうにかなりそうだが、問題はまだまだ残っていた。それは姿を消した七魔将の捜索、そしてハヤテとカゲマルの行方も追わなければならない。これまでは呪詛に侵された人間の治療のために後回しにしていた仕事もやらなければならない。


「さてと……あたし達はここから本格的に七魔将の奴等を追わないといけないのは分かってるね?」
「アルドラもオウガも結局は取り逃がしてしまいましたからね……特にアルドラを逃したのは痛いですね」
「たくっ……あの吸血鬼女のせいで大変な目に遭ったぜ」
「くっ……忌々しい吸血鬼め!!」


黒虎のギルドの会議室にてバル達は再び集結し、これまでに起きた出来事を整理する。まずは七魔将に関してはレナの活躍で既に「牙人将ガオウ」は討ち取り、これで残りの七魔将は「五人」となった。七魔将の内の「魔眼将メドゥーサ」も過去にレナが討ち取っている。

残された敵は五人の七魔将だが、レナが意識を失う前に七魔将同士が争っていたという話はバル達も聞かされている。七魔将といっても一枚岩というわけではなく、特にオウガとブラクは互いに殺し合う程に憎み合っている事は判明した。
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