1,436 / 2,083
真・最終章 七魔将編
聖水香の効力
しおりを挟む
「な、何だいこれは……こんな物で本当に治せるのかい?」
「治せますよ。この煙はただの湯気ではありません、聖属性の魔力その物なんです」
「聖属性の魔力?という事はまさか……」
「そうです、室内でこの聖水香を置けば部屋の中は聖属性の魔力で充満されます。その場所に呪詛に侵された人間を置けばどうなるのか……後は分かりますね?」
ホネミンの言葉に全員が衝撃を受けた表情を浮かべ、部屋の中全体に聖属性の魔力が満ち溢れれば呪詛で侵された人間も身体全体に聖属性の魔力を浸透させる事ができる。呪詛に侵された人間は常に聖属性の魔力が放出され続けて衰弱化していくが、既に部屋全体が聖属性の魔力に溢れていた場合は抜け落ちていく聖属性の魔力が抑え込まれる可能性はある。
早速だがホネミンはギルド内の空き部屋を借りて聖水香を置くと、呪詛の侵攻が激しい人間を運び出して治療を行う。ほぼ全身に呪詛が回った男性をベッドの上に寝かせると、この際に身体中に聖属性の魔力が行き届くように半裸の状態でベッドに横たわらせた。
「よし、これで準備は完了です。後は1時間ぐらいすればこの人は治りますよ」
「1時間!?そんな短い時間で治るのかい?」
「治ります。但し、部屋の中の聖属性の魔力が抜け出ないようにしっかりと密封して下さい」
「でも、それだと酸欠で倒れたりしないのか?」
「大丈夫です。聖水香の花は光合成して新鮮な空気を常に生み出しますから」
部屋の中に患者と聖水香を置いてホネミン達は部屋の外で待機する。ホネミンの予想では1時間ほどで効果が実証されるらしく、その時が来るまで全員固唾を飲んで待ち続けた――
――それから30分後、ホネミンの予想よりも早くに部屋の中から呪詛に侵された人間が姿を現した。その男性は何が起きたのか分からないといった表情でベッドのシーツで身体を隠しながらも部屋から出てきた。
「あ、あの……ここは何処ですか?どうして私は裸でこんな場所に……」
「あ、あんた……平気なのかい!?」
「まさか、本当に治ったのか!?」
「早く身体を調べろ!!」
部屋から自ら出てきた人物にバル達は動揺を隠せず、すぐに身体の検査を行うと30分前まではほぼ全身の皮膚が黒色化していたはずの男性は元の姿に戻っていた。呪詛は跡形もなく消え去り、それどころ身体の痛みや疲労が無くなっていた。
「いや、本当に身体が軽いんですよ!!私は腰痛持ちなんですが今は全く痛くありません!!」
「当然ですね、聖水香には疲労回復と肉体の負荷を治す機能もありますから」
「な、何てことだ……まさか本当に呪詛を治せるとは」
「こうしてはいられない!!早く次の患者を連れてくるんだ!!」
「やるじゃないかいあんた!!今までの無礼は詫びるよ、本当に大した奴だね!!」
「はぐぅっ!?」
聖水香のお陰で症状が悪化していた患者が無事に治ったのを見てバルはホネミンの背中を叩いて褒め称えるが、当のホネミンは背中を強打されて苦し気な表情を浮かべる。
「バル、聖水を全部スラミンに渡して。今から他の水瓶にも与えてくる」
「ああ、分かったよ!!他の奴等も文句はないね!?」
「あ、ああ……」
「教会の方にも連絡する必要がありますね。新しく出来上がった聖水もすぐに渡す様に話を付けておきます」
「よし、これでもう大丈夫なんだな!?」
「まだ油断はできんぞ……ここからは時間との勝負だ」
他の者たちも新しい聖水香を造り出すために動き、呪詛に侵された人間達をすぐに黒虎のギルドに運び込む手配を行う。教会にも新しく作り上げた聖水を渡す様に連絡を行い、他にも手が空いている人間達を呼び寄せて手伝いをさせる。
ホネミンのお陰で呪詛に侵された人間の治療はどうにかなりそうだが、問題はまだまだ残っていた。それは姿を消した七魔将の捜索、そしてハヤテとカゲマルの行方も追わなければならない。これまでは呪詛に侵された人間の治療のために後回しにしていた仕事もやらなければならない。
「さてと……あたし達はここから本格的に七魔将の奴等を追わないといけないのは分かってるね?」
「アルドラもオウガも結局は取り逃がしてしまいましたからね……特にアルドラを逃したのは痛いですね」
「たくっ……あの吸血鬼女のせいで大変な目に遭ったぜ」
「くっ……忌々しい吸血鬼め!!」
黒虎のギルドの会議室にてバル達は再び集結し、これまでに起きた出来事を整理する。まずは七魔将に関してはレナの活躍で既に「牙人将ガオウ」は討ち取り、これで残りの七魔将は「五人」となった。七魔将の内の「魔眼将メドゥーサ」も過去にレナが討ち取っている。
残された敵は五人の七魔将だが、レナが意識を失う前に七魔将同士が争っていたという話はバル達も聞かされている。七魔将といっても一枚岩というわけではなく、特にオウガとブラクは互いに殺し合う程に憎み合っている事は判明した。
「治せますよ。この煙はただの湯気ではありません、聖属性の魔力その物なんです」
「聖属性の魔力?という事はまさか……」
「そうです、室内でこの聖水香を置けば部屋の中は聖属性の魔力で充満されます。その場所に呪詛に侵された人間を置けばどうなるのか……後は分かりますね?」
ホネミンの言葉に全員が衝撃を受けた表情を浮かべ、部屋の中全体に聖属性の魔力が満ち溢れれば呪詛で侵された人間も身体全体に聖属性の魔力を浸透させる事ができる。呪詛に侵された人間は常に聖属性の魔力が放出され続けて衰弱化していくが、既に部屋全体が聖属性の魔力に溢れていた場合は抜け落ちていく聖属性の魔力が抑え込まれる可能性はある。
早速だがホネミンはギルド内の空き部屋を借りて聖水香を置くと、呪詛の侵攻が激しい人間を運び出して治療を行う。ほぼ全身に呪詛が回った男性をベッドの上に寝かせると、この際に身体中に聖属性の魔力が行き届くように半裸の状態でベッドに横たわらせた。
「よし、これで準備は完了です。後は1時間ぐらいすればこの人は治りますよ」
「1時間!?そんな短い時間で治るのかい?」
「治ります。但し、部屋の中の聖属性の魔力が抜け出ないようにしっかりと密封して下さい」
「でも、それだと酸欠で倒れたりしないのか?」
「大丈夫です。聖水香の花は光合成して新鮮な空気を常に生み出しますから」
部屋の中に患者と聖水香を置いてホネミン達は部屋の外で待機する。ホネミンの予想では1時間ほどで効果が実証されるらしく、その時が来るまで全員固唾を飲んで待ち続けた――
――それから30分後、ホネミンの予想よりも早くに部屋の中から呪詛に侵された人間が姿を現した。その男性は何が起きたのか分からないといった表情でベッドのシーツで身体を隠しながらも部屋から出てきた。
「あ、あの……ここは何処ですか?どうして私は裸でこんな場所に……」
「あ、あんた……平気なのかい!?」
「まさか、本当に治ったのか!?」
「早く身体を調べろ!!」
部屋から自ら出てきた人物にバル達は動揺を隠せず、すぐに身体の検査を行うと30分前まではほぼ全身の皮膚が黒色化していたはずの男性は元の姿に戻っていた。呪詛は跡形もなく消え去り、それどころ身体の痛みや疲労が無くなっていた。
「いや、本当に身体が軽いんですよ!!私は腰痛持ちなんですが今は全く痛くありません!!」
「当然ですね、聖水香には疲労回復と肉体の負荷を治す機能もありますから」
「な、何てことだ……まさか本当に呪詛を治せるとは」
「こうしてはいられない!!早く次の患者を連れてくるんだ!!」
「やるじゃないかいあんた!!今までの無礼は詫びるよ、本当に大した奴だね!!」
「はぐぅっ!?」
聖水香のお陰で症状が悪化していた患者が無事に治ったのを見てバルはホネミンの背中を叩いて褒め称えるが、当のホネミンは背中を強打されて苦し気な表情を浮かべる。
「バル、聖水を全部スラミンに渡して。今から他の水瓶にも与えてくる」
「ああ、分かったよ!!他の奴等も文句はないね!?」
「あ、ああ……」
「教会の方にも連絡する必要がありますね。新しく出来上がった聖水もすぐに渡す様に話を付けておきます」
「よし、これでもう大丈夫なんだな!?」
「まだ油断はできんぞ……ここからは時間との勝負だ」
他の者たちも新しい聖水香を造り出すために動き、呪詛に侵された人間達をすぐに黒虎のギルドに運び込む手配を行う。教会にも新しく作り上げた聖水を渡す様に連絡を行い、他にも手が空いている人間達を呼び寄せて手伝いをさせる。
ホネミンのお陰で呪詛に侵された人間の治療はどうにかなりそうだが、問題はまだまだ残っていた。それは姿を消した七魔将の捜索、そしてハヤテとカゲマルの行方も追わなければならない。これまでは呪詛に侵された人間の治療のために後回しにしていた仕事もやらなければならない。
「さてと……あたし達はここから本格的に七魔将の奴等を追わないといけないのは分かってるね?」
「アルドラもオウガも結局は取り逃がしてしまいましたからね……特にアルドラを逃したのは痛いですね」
「たくっ……あの吸血鬼女のせいで大変な目に遭ったぜ」
「くっ……忌々しい吸血鬼め!!」
黒虎のギルドの会議室にてバル達は再び集結し、これまでに起きた出来事を整理する。まずは七魔将に関してはレナの活躍で既に「牙人将ガオウ」は討ち取り、これで残りの七魔将は「五人」となった。七魔将の内の「魔眼将メドゥーサ」も過去にレナが討ち取っている。
残された敵は五人の七魔将だが、レナが意識を失う前に七魔将同士が争っていたという話はバル達も聞かされている。七魔将といっても一枚岩というわけではなく、特にオウガとブラクは互いに殺し合う程に憎み合っている事は判明した。
0
お気に入りに追加
16,534
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。