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真・最終章 七魔将編

コトミンの説得

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「……もう一度聞くよ、あんたの言う薬を造り出すためにはこの聖水を使わないと駄目なんだね?」
「そうですよ」
「本当にあんたの薬なら全員の命を助けられるのかい?絶対に助けると約束できるのかい?」
「約束はできませんね、全員が助かる可能性が作り出せるだけです」
「なら駄目だね、約束できないのならこいつを渡せないね」


バルはホネミンの話を聞いて聖水が入った瓶を取り上げると、そんな彼女の態度にホネミンはため息を吐く。だが、意外な人物が二人に声をかける。


「試す価値はあると思う」
「コトミン……あんた、何時の間にいたんだい?」
「コトミンさん?」


二人の間に割って入ったのはコトミンであり、彼女が割り込んできた事にバルとホネミンも意外な表情を浮かべた。一方でコトミンはバルが抱えている聖水に視線を向け、彼女はホネミンが用意した水桶の中に埋められた種を確認した。


「ホネミン……この植物を育てれば本当に皆を救える?」
「約束はできませんね、ですけど全員を助けるにはこれ以外に方法はないと思っています」
「分かった……ならバル、それを渡して」
「あんた……話を聞いていたのかい?あたしは絶対に助けると約束できないのなら渡せないと言ったんだよ」


コトミンの言葉を聞いてバルはため息を吐きながら首を振り、ホネミンが信用に値する人間かどうか彼女には分からない。だが、このまま話し合っていて埒が明かない事は明白だった。


「バル、それを渡して」
「駄目だね。こいつは渡せない……これは最後の希望なんだよ」
「信じて」
「信じろと言われてもね……あたしはこいつの事を殆ど知らない。いきなり現れて偉そうに命令して挙句の果てに聖水を渡せ?いくらレナの友人だかなんだか知らないけどね、こいつを信用できる人間と判断するまではあたしは聖水を渡せないよ」
「やれやれ……仕方ありませんね」


いくら仲間の頼みであろうとバルは聖水を渡す事ができず、彼女はホネミンが信頼に値する人間だと判断しない限りは渡さない事を告げる。そんなバルの強情な態度にホネミンは腕を組み、意を決したように彼女はバルの元に近付く。

自分の元に歩み寄るホネミンに大してバルは警戒し、まさかとは思うが力ずくで聖水を奪うつもりなのかと彼女は考えたが、ホネミンは机の上に置かれた空のコップを手にするとバルに差し出す。


「聖水を全部渡してとは言いません。ですけど、ほんの少しでいいので分けて下さい」
「何だって?」
「この水瓶の内の一つの緑聖花を聖水で育てます。コップ一杯分で十分です、それを見た上で協力するかどうか考えてください」
「……嫌だと言ったら?」
「私はここを出て行くだけです。二度と皆さんの前には姿を現しません」
「バル……ホネミンを信じて」


ホネミンの言葉を聞いてバルは難しい表情を浮かべ、コップ一杯分の聖水を渡すだけならば量は殆ど減らない。コトミンも一緒に頼み込むとバルは自分が悪者のような気分に陥り、彼女はため息を吐きながら聖水の瓶を差し出す。


「1杯だけだよ……もしも失敗すればあんたは二度とこの都市に足を踏み入れさせないよ」
「約束します……コトミンさん、ありがとうございます」
「んっ……」


親指を突き立てるコトミンにホネミンはお礼を言うと、バルから彼女は聖水を受け取ろうとした。だが、この時に二人の足元に近付く影が存在し、その正体は最近は姿を見せなかったスラミンだった。


「ぷるぷるっ!!」
「うわっ!?な、何だい!?」
「あれ……あなたはスラミンさん?」
「どうしたのスラミン?」


唐突に現れたスラミンにバル達は驚くが、スラミンは聖水が入った瓶と植物の種が植えられた水瓶を交互に見る。何かを訴えかけるようにスラミンは身体を震わせ、口を大きく開いてコトミンの頭の上に移動する。


「ぷるぷるぷ~るっ!!」
「な、何なんだい急に!?」
「何か伝えようとしているみたいですけど……生憎と私はスライム語は分かりません」
「待って……スラミン、どうしたの?」
「ぷるるんっ!!」


普段からスラミンとヒトミンの面倒を見ているコトミンだけはある程度の意思疎通ができるため、彼女はスラミンを抱きかかえると彼が何を伝えたいのかを尋ねる。スラミンは頭に生えている耳のような触手で最初に聖水の入った瓶を指差し、次に土と肥料と種が埋められた水瓶を示す。

これらの行動を見てコトミンはスラミンが何を伝えたいのか理解したが、その内容を知って彼女は驚いた表情を浮かべる。だが、すぐにコトミンはスラミンの意思を汲み取ってバルにスラミンを差し出す。


「バル、聖水を頂戴」
「は?な、何言ってんだい?」
「ちょっとちょっと、どういう事ですか?」
「ふざけているわけじゃない……スラミンに聖水を飲ませてあげて」
「ぷるんっ!!」
『はあっ!?』


コトミンの思いもよらぬ言葉に全員が唖然とするが、当のスラミンは珍しく勇ましい表情を浮かべていた。
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