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真・最終章 七魔将編

現れたのは……

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『……随分と好き勝手しているようだな』
「何っ……!?」
「この声は……ブラク!?」


オウガとアルドラの前方の地面に誰も立っていないのに人型の影ができると、その内部から七魔将の一人である「死人将ブラク」が現れる。袂を分かったはずのブラクが現れた事にオウガとアルドラは動揺を隠せず、そもそもこのような日中にブラクが現れた事に驚きを隠せない。

ブラクは以前と外見が異なり、現在の彼は若々しい青年のような姿をしていた。その姿は何処となく「ダイン」の姿を思わせ、禍々しい魔力を纏いながら現れたブラクにオウガは睨みつける。


「ブラク……貴様、その姿はどういう事だ?また、のか?」
「馬鹿を言うな、そんな簡単に肉体を入れ替える事はできん。まあ、若返ったという方が正しいかな」
「若返り……そんな事までできるの?」


青年の様な姿に変わり果てたブラクにアルドラは動揺を隠せず、その一方でオウガはブラクを前にするだけで眉をしかめる。昔からブラクとは犬猿の仲であり、正直に言ってお互いに嫌い合っていた。


「今更何の用だ。俺達の前に現れるとは……」
「ふん……一匹狼を気取っていた貴様がアルドラと組むとはな。正直、予想外だったぞ」
「……悪いけど世間話に付き合っている暇はないわ。用件だけを伝えなさい」


ここにいる全員が七魔将とはいえ、現在の彼等は別に仲間同士ではない。そもそも七魔将自体も解散されており、アルドラとオウガは他の3人の七魔将とは離別した。これは七魔将の筆頭である「魔人将ラスト」が決めた事である。

魔人将のラストは七魔将の中でも最も人望が厚く、牙人将のガオウや死人将ブラクに至っては魔王よりも彼を崇拝していた。竜人将のガイアも彼の命にだけは従い、オウガもラストに対抗心は抱いてはいたが実力は認めており、アルドラでさえもラストに逆らった事はない。そのラストが七魔将の解散を宣言し、オウガとアルドラ両名の離脱を許した。


「貴様等が好き勝手に暴れてくれたせいで我々の計画が狂いそうなのでな……これ以上、騒ぎを起こす前に忠告しにきた。これ以上に目立つ真似をするな、七魔将の存在を現在の国々に知られるわけにはいかん」
「何を言ってるのか意味が分からないわね。七魔将はもう解散したのよ、どうして私達が貴方達の言う事を聞かないといけないのかしら」
「その通りだ……今更お前等の言う事を聞く義理はないな」
「ふん、お前達が素直に言う事を聞くとは思っていない」


ブラクの言葉にオウガとアルドラは反感を示し、かつての同胞であろうと今の自分達の行動を咎められる謂れはない。しかし、わざわざ二人の元まで訪れたブラクはこのまま引き下がるつもりはない。


「言っておくが我々の言う事を聞かないのであれば貴様等も容赦はせんぞ……あの御方の邪魔だけはさせん」
「笑わせるな、お前程度の力で俺に勝てると思っているのか?」
「力ずくで言う事を聞かせるというのなら……こっちも容赦はしないわよ」


アルドラとオウガはブラクの発言を聞くと戦闘態勢に入り、アルドラの肉体の負傷は既に完治していた。吸血鬼の中でも彼女は特別な能力を持ち合わせており、再生能力も高く怪我は完璧に治っていた。彼女は魔剣に手を伸ばすとオウガは拳を鳴らしてブラクと向き合う。

元七魔将である二人はブラクの能力を把握しており、敵にすると厄介な相手だとは理解しているがオウガとアルドラは対抗策を持っている。ブラクの方も自分一人ではこの二人を抑えきる事はできない事は承知しており、彼はここで自分の影の中に隠していた武器を取り出す。


「アルドラ……お前の七大魔剣「夜叉」は確かに強力だ。だが、お前の夜叉をも上回る力をこの剣は持っているぞ」
「何を馬鹿な事を……!?」
「この魔力は……馬鹿なっ!?」


ブラクの言葉を聞いてアルドラは訝し気な表情を浮かべたが、ブラクが取り出した漆黒の剣を見た瞬間、彼女の手にした七大魔剣「夜叉」が震え始める。まるで魔剣その物が怯えているかのように刃が振動し、その反面にブラクが取り出した漆黒の件は禍々しい魔力を放つ。


「冥途の土産に教えてやろう……この剣のかつての名前は「羅刹」そして今の時代の人間共は別の名前を名付けた。その名は……クリムゾンだ!!」


漆黒の剣をブラクが掲げた瞬間、刀身から黒い煙のような魔力が噴き出す。まるで黒雲のように魔力は上空へと拡散し、その様子を見ていたアルドラとオウガは唖然とした――





――冒険都市の上空に禍々しい魔力を放つ黒雲が広がる光景は都市内に存在する人間全員が確認し、この時に戦闘を繰り広げていたアルドラに洗脳された者達やレナ達の味方も何事かと空を見上げる。そして数秒後、この黒雲は恐るべき事態を引き起こす事になるなど誰も想像しなかった。
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