上 下
1,422 / 2,083
真・最終章 七魔将編

現れたのは……

しおりを挟む
『……随分と好き勝手しているようだな』
「何っ……!?」
「この声は……ブラク!?」


オウガとアルドラの前方の地面に誰も立っていないのに人型の影ができると、その内部から七魔将の一人である「死人将ブラク」が現れる。袂を分かったはずのブラクが現れた事にオウガとアルドラは動揺を隠せず、そもそもこのような日中にブラクが現れた事に驚きを隠せない。

ブラクは以前と外見が異なり、現在の彼は若々しい青年のような姿をしていた。その姿は何処となく「ダイン」の姿を思わせ、禍々しい魔力を纏いながら現れたブラクにオウガは睨みつける。


「ブラク……貴様、その姿はどういう事だ?また、のか?」
「馬鹿を言うな、そんな簡単に肉体を入れ替える事はできん。まあ、若返ったという方が正しいかな」
「若返り……そんな事までできるの?」


青年の様な姿に変わり果てたブラクにアルドラは動揺を隠せず、その一方でオウガはブラクを前にするだけで眉をしかめる。昔からブラクとは犬猿の仲であり、正直に言ってお互いに嫌い合っていた。


「今更何の用だ。俺達の前に現れるとは……」
「ふん……一匹狼を気取っていた貴様がアルドラと組むとはな。正直、予想外だったぞ」
「……悪いけど世間話に付き合っている暇はないわ。用件だけを伝えなさい」


ここにいる全員が七魔将とはいえ、現在の彼等は別に仲間同士ではない。そもそも七魔将自体も解散されており、アルドラとオウガは他の3人の七魔将とは離別した。これは七魔将の筆頭である「魔人将ラスト」が決めた事である。

魔人将のラストは七魔将の中でも最も人望が厚く、牙人将のガオウや死人将ブラクに至っては魔王よりも彼を崇拝していた。竜人将のガイアも彼の命にだけは従い、オウガもラストに対抗心は抱いてはいたが実力は認めており、アルドラでさえもラストに逆らった事はない。そのラストが七魔将の解散を宣言し、オウガとアルドラ両名の離脱を許した。


「貴様等が好き勝手に暴れてくれたせいで我々の計画が狂いそうなのでな……これ以上、騒ぎを起こす前に忠告しにきた。これ以上に目立つ真似をするな、七魔将の存在を現在の国々に知られるわけにはいかん」
「何を言ってるのか意味が分からないわね。七魔将はもう解散したのよ、どうして私達が貴方達の言う事を聞かないといけないのかしら」
「その通りだ……今更お前等の言う事を聞く義理はないな」
「ふん、お前達が素直に言う事を聞くとは思っていない」


ブラクの言葉にオウガとアルドラは反感を示し、かつての同胞であろうと今の自分達の行動を咎められる謂れはない。しかし、わざわざ二人の元まで訪れたブラクはこのまま引き下がるつもりはない。


「言っておくが我々の言う事を聞かないのであれば貴様等も容赦はせんぞ……あの御方の邪魔だけはさせん」
「笑わせるな、お前程度の力で俺に勝てると思っているのか?」
「力ずくで言う事を聞かせるというのなら……こっちも容赦はしないわよ」


アルドラとオウガはブラクの発言を聞くと戦闘態勢に入り、アルドラの肉体の負傷は既に完治していた。吸血鬼の中でも彼女は特別な能力を持ち合わせており、再生能力も高く怪我は完璧に治っていた。彼女は魔剣に手を伸ばすとオウガは拳を鳴らしてブラクと向き合う。

元七魔将である二人はブラクの能力を把握しており、敵にすると厄介な相手だとは理解しているがオウガとアルドラは対抗策を持っている。ブラクの方も自分一人ではこの二人を抑えきる事はできない事は承知しており、彼はここで自分の影の中に隠していた武器を取り出す。


「アルドラ……お前の七大魔剣「夜叉」は確かに強力だ。だが、お前の夜叉をも上回る力をこの剣は持っているぞ」
「何を馬鹿な事を……!?」
「この魔力は……馬鹿なっ!?」


ブラクの言葉を聞いてアルドラは訝し気な表情を浮かべたが、ブラクが取り出した漆黒の剣を見た瞬間、彼女の手にした七大魔剣「夜叉」が震え始める。まるで魔剣その物が怯えているかのように刃が振動し、その反面にブラクが取り出した漆黒の件は禍々しい魔力を放つ。


「冥途の土産に教えてやろう……この剣のかつての名前は「羅刹」そして今の時代の人間共は別の名前を名付けた。その名は……クリムゾンだ!!」


漆黒の剣をブラクが掲げた瞬間、刀身から黒い煙のような魔力が噴き出す。まるで黒雲のように魔力は上空へと拡散し、その様子を見ていたアルドラとオウガは唖然とした――





――冒険都市の上空に禍々しい魔力を放つ黒雲が広がる光景は都市内に存在する人間全員が確認し、この時に戦闘を繰り広げていたアルドラに洗脳された者達やレナ達の味方も何事かと空を見上げる。そして数秒後、この黒雲は恐るべき事態を引き起こす事になるなど誰も想像しなかった。
しおりを挟む
感想 5,089

あなたにおすすめの小説

最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された「霧崎ルノ」彼を召還したのはバルトロス帝国の33代目の皇帝だった。現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が帝国領土に出現し、数多くの人々に被害を与えていた。そのために皇帝は魔王軍に対抗するため、帝国に古から伝わる召喚魔法を利用して異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出す。しかし、どういう事なのか召喚されたルノはこの帝国では「最弱職」として扱われる職業の人間だと発覚する。 彼の「初級魔術師」の職業とは普通の魔術師が覚えられる砲撃魔法と呼ばれる魔法を覚えられない職業であり、彼の職業は帝国では「最弱職」と呼ばれている職業だった。王国の人間は自分達が召喚したにも関わらずに身勝手にも彼を城外に追い出す。 だが、追い出されたルノには「成長」と呼ばれる能力が存在し、この能力は常人の数十倍の速度でレベルが上昇するスキルであり、彼は瞬く間にレベルを上げて最弱の魔法と言われた「初級魔法」を現実世界の知恵で工夫を重ねて威力を上昇させ、他の職業の魔術師にも真似できない「形態魔法」を生み出す―― ※リメイク版です。付与魔術師や支援魔術師とは違う職業です。前半は「最強の職業は付与魔術師かもしれない」と「最弱職と追い出されたけど、スキル無双で生き残ります」に投稿していた話が多いですが、後半からは大きく変わります。 (旧題:最弱職の初級魔術師ですが、初級魔法を極めたら何時の間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。