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真・最終章 七魔将編

時の聖痕の能力

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――イレアビトから時の聖痕を継承したミレトだが、根本的にイレアビトとは能力が異なる。イレアビトの場合は時間を停止させる能力だが、ミレトの場合は事項を「加速」する事が行える。例えばミレトが敵から攻撃を受けようとした場合、自分の肉体に流れる時間を加速させる。

テレビの早送りのようにミレトは自分だけが他の人間の倍以上も加速して動く事ができる。加速している間はミレト自身の意識もあり、彼の目から見れば他の人間が急にスローモーションのようにゆっくりと動いているように見える。また、時間を加速させている間はミレトは急速に年齢を重ねており、この能力のお陰で彼はここまで生き延びてきた。

碌に戦える力もなかった少年が生き延びる事ができたのは時の聖痕のお陰であり、彼の実年齢はまだ10才にも満たない。それでも肉体の方は実年齢よりもずっと上に成長しており、そのお陰で彼の正体を見破れる人間はもうレナ以外いにはいない。彼を攫ったシノビでさえもミレトの存在は気付いていない。

加速している間のミレトは時間の流れが異なり、加速する事にミレトは肉体の成長が早まり、既に数年分の成長を果たしている。今はまだいいかもしれないが、過度にこの能力を使い続ければいずれミレトは他の人間よりもずっと早く死んでしまう。

しかし、この能力のお陰で逆に肉体が成長した事によってミレトは自分自身を守り抜く力を得た。母親の聖痕、そして父親であるミドルからは槍の才能を受け継ぎ、その力は若き頃のレナにも劣らない。


『ミレトがいる間はレナさんは私との交信を控えてください。これ以上に私が時間に干渉すると、ミレトに何らかの影響を与えるかもしれません』


アイリスによれば彼女がレナと交信を行う間はこの世界の時に干渉し、時間を停止させているという。しかし、時の精魂を所有するミレトが近くにいると彼女の力の影響を受けてミレトに何らかの不具合が発生する可能性もあり、ミレトが側にいる間はレナは彼女の力を借りれない。

それでもレナは事前にアイリスと相談を行い、できる限りの作戦を立ててきた。そして都市内に侵入した時点で作戦の第一段階は終了し、ここからは第二段階へと移行する。カノンに化けたレナはルナに化けたミレトと共に氷雨のギルドに到着し、緊張した面持ちで建物を乗り込む。


(ここにはよく遊びに来たけど……今日はいつもよりも大きく見えるな)


マリアが管理する氷雨のギルドにはレナも遊びにきたり、仕事の用件で何度も訪れた事がある。しかし、現在の都市を管理しているのはマリアではなく、七魔将のアルドラである事を知るとまるで見慣れている建物も悪魔の巣窟のように見えてくる。


「ミレト、行くぞ」
「はい……」


既にの準備を終えたレナとミレトは緊張した面持ちで中に入り込もうとした時、ここで建物の前に立っていた冒険者が立ちふさがる。建物の前には女性冒険者が数名待ち構えており、彼女達はカノンとルナの格好に変装したレナ達を見て訝し気な表情を浮かべた。


「誰だ、お前達は?見かけない顔だが……」
「待て、そっちの女は見覚えがあるぞ……そうだ、確か元大将軍のカノンか」
「カノン!?あの落ちぶれ大将軍の……」
「……酷い言われようね」


冒険者の言葉にレナは若干カノンに同情し、こんな冒険者達の間でもカノンの事は噂になっているらしい。カノンがアルドラと協力関係を築いているのは知っているのか、冒険者の一人が不満そうな表情を浮かべて告げる。


「戻る時は連絡しろと言っただろう。それで、首尾はどうだ?深淵の森に隠れた奴等の居所は?」
「……奴等は深淵の森の奥にある遺跡に隠れていたわ」
「遺跡!?そんな物があるのか?」
「ええ、そうよ」


レナは声音をカノンに寄せて話そうと努めるが、どうやら話しぶりから彼女達はカノンとは面識がないらしく、レナのカノンの声真似を聞いても全く怪しんでいない。そしてレナは怪しまれないように真実を交えて報告を行う。


「都市から逃げた奴等は深淵の森に隠されている王族の屋敷に逃げたようだけど、あいつらは拠点を遺跡に変えていたわ」
「あの森にそんな屋敷があったのか……」
「そういえば噂に聞いた事があるぞ。問題を起こした王族を隔離するための屋敷があるとか……」
「マリア様も一時期その屋敷の情報を探し回っていたような……」


マリアはレナが生まれた日に姉のアイラが王城から隔離されたという話を聞き出し、彼女なりに冒険者達に命じて屋敷の居所を探していた。結局は見つけた時には既にレナは脱走しており、アイラも別の場所へ隔離されていたので無駄骨だったが、屋敷の捜索は冒険者達も行っていたのであっさりと話を信じてくれた。

嘘を吐く時は人間は態度を変えるため、真実を少し交えて話す方が疑われにくく、ここでレナは深淵の森に逃げた都市からの脱走者は屋敷から遺跡に拠点を変えた事までは告げる。しかし、そこから先は嘘の報告を行う。
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