上 下
1,367 / 2,083
真・最終章 七魔将編

都市への潜入

しおりを挟む
「悪いけど、カノンの事は皆に任せるよ。ウル、お前も手伝ってやれ。カノンの臭いは覚えてるな?」
「ウォンッ!!」
「……そう言う事ならカノンの事は俺に任せろ、ハンゾウ!!お前はレナの手助けをしてやれ!!そっちの方がいいだろう!!」
「確かにそうでござるな、それではレナ殿。拙者も共に戻るでござる」
「うん、頼りにしてるよ」
「あの……僕も一緒に行っていいですか?」


都市に戻る前にシノビはハンゾウにレナの事を任せ、忍者である彼女ならば潜入活動の際も色々と手助けしてくれると思い、レナは彼女を受け入れる。しかし、この時にミレトも挙手してレナの同行を願い出ると、他の者は驚いた様に彼に視線を向けた。


「ミレト……気持ちは有難いけど、俺達はこれから潜入活動をするんだよ?大丈夫?」
「はい、昔から隠れて行動するのは得意なので……一応、気配遮断と隠密と無音歩行の技能も覚えています」
「え、それは凄いね……よく覚えてたね」
「……色々とありまして」


ミレトが潜入に役立つ技能を覚えていた事にレナは驚き、言われてみれば先に行動を共にしていた時も足手まといになる事はなかった。ゴンゾウは残念ながら体格的にも潜入には向いておらず、改めてレナはハンゾウとミレトと共に都市へ戻る事にした。


「よし、それじゃあカノンの事は任せるよ」
「ああ、任せろ……お前も頼りにしているぞ」
「ウォンッ!!」


シノビの言葉にウルは鳴き声を上げ、この二人は意外と気が合うらしく、彼等に任せれば逃げ出したカノンも捕まえるのも時間の問題たと思われた。そもそも古代遺跡は深淵の森の奥部に存在し、簡単に森からは抜け出せないため、カノンが逃げたとしても人の足では今日中に森を抜け出す事は出来ない。

不安はあるが、カノンの事は古代遺跡に残る人間に任せるしかなく、改めてレナは冒険都市に繋げた黒渦を展開し、再びフェリス商会が管理する建物へと帰還した――





――当面の目標は都市からの脱出であり、こちらの方が行きに利用した下水道を通じてレナ達は都市から脱出を試みるが、先にレナ達が残した悪臭を嗅ぎ分けた獣人族の冒険者が他の人間にも報告を行い、街の警備が強化されていた。

下水道に通じる抜け道には兵士や冒険者が配置され、見張りを行う。これでは下手に下水道に移動しようとすれば見つかってしまい、簡単に都市には抜け出せない。仮に強行突破すれば当然だが他の冒険者にも気づかれ、更に逃げるのが困難になる。


「困ったでござるな、ここも見張られているでござる」
「どうしましょうか……」
「ふうっ……別の場所を探すしかないか」


レナ達は屋根の上に身を潜め、地上の様子を伺う。時刻は深夜を迎えそうだというのに兵士達が忙しなく動き回り、中には一般人らしき人間も存在した。どうやらアルドラは一般人も駆り出したらしく、街の住民達を起こして兵士は警戒を怠らない様に告げた。


「いいか!!侵入者が現れた、もしも発見した場合はすぐに我々に報告しろ!!」
「は、はい……分かりました」
「言っておくが侵入者を匿えば死刑に処すからな!!忘れるな!!」
「ひいっ!?わ、分かりましたよ……!!」


建物の一軒一軒に兵士は尋ね、中の住民に注意を行う。その様子を見てレナは街の住民に迷惑を掛けた事に心が痛むが、今はどうにも出来ず、アルドラを倒すために拠点を探すしかなかった。


『アイリス、一応は聞くけど……このままアルドラのいる所に乗り込んで皆を呼び出してアルドラを倒すのは無理かな?』
『ほぼ不可能ですね。アルドラの傍にはゴウライとシズネが待機していますし、他にも冒険者がわんさかいます。それにアルドラの傍には他の七魔将もいるようです』
『誰の事?』
『七魔将オウガです。実力は七魔将の中でも一、二を争いますし、ゴウライとシズネが操られたのもこの男の仕業です』
『……そんな奴までいるのか』


アルドラの傍にはゴウライとシズネだけではなく、七魔将のオウガも滞在しているらしく、現状の勢力では太刀打ちできないらしい。それを知ったレナは仕方なく強行突破を諦め、無難に都市の外へ抜け出す算段を考える。

とりあえずは街の中を移動し、人気のない廃墟を見つけだす。元々は教会であり、かつてレナがアリアと争って焼け崩れた廃墟と化していた。まさかこの場所に戻ってくる事になるとは思わず、レナは表情を引き締めた。


「どうやらここは人がいない様でござるな……しばらくはここで休めそうでござる」
「そうですね」
「……うん」


焼け崩れた廃墟にレナ達は足を踏み入れ、この時にレナは瓦礫の山を伺う。今から2年近く前、この場所でレナはアリアと死闘を繰り広げ、彼女に勝利した。そしてアリアを殺めた場所であり、ここに彼女の墓を作った。

アリアの墓は二つ存在し、一つはこの場所、もう一つはかつてレナが暮らしていた深淵の森の屋敷に存在する。アリアの事を思い出すとレナは胸が痛くなり、気持ちを切り替えようと頭を振る。





※コミカライズ版の更新は12月に延期になりました。南条先生の体調回復をお祈りします。
しおりを挟む
感想 5,089

あなたにおすすめの小説

最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された「霧崎ルノ」彼を召還したのはバルトロス帝国の33代目の皇帝だった。現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が帝国領土に出現し、数多くの人々に被害を与えていた。そのために皇帝は魔王軍に対抗するため、帝国に古から伝わる召喚魔法を利用して異世界から「勇者」の素質を持つ人間を呼び出す。しかし、どういう事なのか召喚されたルノはこの帝国では「最弱職」として扱われる職業の人間だと発覚する。 彼の「初級魔術師」の職業とは普通の魔術師が覚えられる砲撃魔法と呼ばれる魔法を覚えられない職業であり、彼の職業は帝国では「最弱職」と呼ばれている職業だった。王国の人間は自分達が召喚したにも関わらずに身勝手にも彼を城外に追い出す。 だが、追い出されたルノには「成長」と呼ばれる能力が存在し、この能力は常人の数十倍の速度でレベルが上昇するスキルであり、彼は瞬く間にレベルを上げて最弱の魔法と言われた「初級魔法」を現実世界の知恵で工夫を重ねて威力を上昇させ、他の職業の魔術師にも真似できない「形態魔法」を生み出す―― ※リメイク版です。付与魔術師や支援魔術師とは違う職業です。前半は「最強の職業は付与魔術師かもしれない」と「最弱職と追い出されたけど、スキル無双で生き残ります」に投稿していた話が多いですが、後半からは大きく変わります。 (旧題:最弱職の初級魔術師ですが、初級魔法を極めたら何時の間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。