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弱肉強食の島編

白牛将と対決の前に

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「お前、まさかとは思うけど裏切って白牛将に味方するつもりじゃないだろうな」
「へへっ……そんな事するはずないだろうが」
「レナ、こいつは信じられない。仲間の情報を簡単に吐くような奴は裏切る」
「だから俺は何も喋ってないだろうが!!」
「往生際が悪いぞ、このクズ!!」
「そうだそうだ!!」


黒牛将のギュウカクはアンジュの言葉を聞いて怒鳴り返すが、他のミノタウロス達は彼の事を信頼などしていない。レナの策略によって現在のギュウカクは仲間を売った裏切り者として認識されている。

ギュウカクからすれば身に覚えがないのに裏切り者扱いされてたまったものではないが、レナは彼を追い詰めるために威圧を発動させて見下ろす。ギュウカクは唐突にレナの身体が大きくなったように錯覚し、怯えてしまう。


「お前の考えなんてお見通しだ。言っておくが、俺が何もせずにここへお前を連れてきたと思っているのか?」
「な、何だと……どういう意味だ!?」
「白牛将にはもう1枚の手紙を残してきた。内容はお前が裏切って俺達に味方して、あいつの仲間を捕まえた事をな」
「なあっ!?」


レナの言葉にギュウカクは驚愕の表情を浮かべ、実はレナの言葉は嘘ではなく、本当に隠れ里の方に白牛将が読むように手紙を置いてきたのだ。ちなみに手紙の方は白牛将の部下が所持していた道具を利用し、書き記した物である。

牛人族は特殊な花の蜜と昆虫を利用して他の種族には分からない方法で手紙を書き、それを仲間に渡す。それを利用してレナは白牛将の仲間のふりをして手紙を置いてきたのだ。


「手紙の内容はお前が裏切って白牛将の仲間は捕まったと書いてある。だから、白牛将はお前の事を裏切り者だと思って殺しにかかるだろうな」
「で、でたらめだ!!」
「でたらめなんかじゃない。今頃は手紙を読んでいるはずだよ……多分ね」
『安心して下さい、白牛将もちゃんと気づいていますよ』


心の中でアイリスが語り掛け、白牛将は既にレナが残してきた手紙を確認し、激しく激怒していた。隠れ里を捜索していた彼の配下がが手紙を見つけ出し、それを白牛将に渡した。

手紙を記したのは仲間だと思い込んだ白牛将は怒りを抑えきれず、それと同時に自分達の行動が読まれたのは黒牛将が裏切ったからだと判断した。ギュウカクが裏切ったとなれば白牛将が送り込んだ仲間も捕まり、彼等の手紙を利用されたのも納得できる。



――既に白牛将は黒牛将が裏切り者だと思い込み、自分の仲間が捕まったのは彼のせいだと思っていた。そうでもなければ優秀な自分の部下達が手紙の事をダークエルフ達に漏らすはずがなく、彼はギュウカクを殺す事を決意した。



「お前等、本当は仲は悪いんだろ?お互いに長の座を狙って争っているのは知ってるよ」
「ぐぐぐっ……」
「さあ、どうする?仮に俺達を裏切ってもお前は白牛将に殺されるぞ。嘘だと思うなら今から解放してやるけど、どうするんだ?」
「ふ、ふざけるな!!兄貴がお前なんかの嘘に騙されるはずが……」
「俺の言う事を聞かなくても他の奴等の言う事は聞くだろう?」


レナの言葉を聞いてギュウカクは歯っとした表情を浮かべ、彼は後方を振り返るとそこには白牛将に捕まった仲間達がいた。彼らはもうギュウカクを敵だと思い込み、もしも彼等がギュウカクの事を白牛将に報告したら当然だが白牛将は彼等を信じるだろう。


「借りに俺達が敗れてもここにいる彼等が白牛将の元に戻ればお前が裏切った事は判明するんだ。そうなった場合、白牛将がお前を生かすと本気で思っているのか?」
「そ、それは……違う、俺は裏切ってなんか!!」
「往生際が悪いぞ、ギュウカクよ」


ここで長が遂に口を挟み、彼はギュウカクの元へ向かうと溜息を吐きながら彼を見下ろす。ギュウカクはそんな長の態度に悔しく思うが、今の彼は長に殴り掛かる事も出来ない。


「お主はもう負けたのだ。ならば牛人族の掟に従い、負けた者に従う。それが我々の鉄則の掟じゃ……そしてお主が白牛将に負けた時からお主は奴に従う事を誓った。それなのに裏切るとは嘆かわしい……」
「お、俺は……」
「もういい、お前のような奴を仲間とは認められん。今を以てお主を追放する!!」
「つ、追放だと!?」
「そうだ。お前はもう仲間ではない……もしも戻って来た今度こそ我々の手で始末するぞ」
「……という事で、お前はもういらないよ」


長の言葉にギュウカクは顔色を青ざめ、他の牛人族も彼が追放する事を止めない。レナはギュウカクの拘束を解除すると、彼は戸惑いの様子で自由になった自分の手足を覗き込む。


「さあ、行きなよ。白牛将の元に向かうか、それとも一人でこれから生きていくのか……どっちにしてもかなり辛い事になるだろうね」
「ま、待て……待ってくれ!!頼む、それだけは……」
「見苦しいぞ、早く行け!!」
「ぐえっ!?」


アンジュに蹴り飛ばされたギュウカクは悲鳴を上げ、その情けない姿にヨウは頭を抑え、他のミノタウロス達はいい気味だとばかりに鼻を鳴らす。
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