不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

カタナヅキ

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弱肉強食の島編

白牛将

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「……レナ、良く見ておいて。あいつが白牛将」
「あれが……」

筏船に乗って現れた白牛将は身体の大きさだけならば黒牛将と同じかそれ以上の体躯を誇り、彼は手にしていた網を水中に投げ込み、しばらくの間は船を動かす。やがて魚が網にかかったのか白牛将は気合の雄叫びを上げて引っ張り上げた。

「ぬぅうんっ！！」
「シャアアッ！！」

網に引っかかったのは額に角を生やした鮫であり、どうやらこの島に生息する固有種らしく、レナも見るのは初めてだった。鮫は額の角が網に引っかかったらしく、必死に抜け出そうとするが白牛将は手放さない。

やがて鮫が動き出して筏船が引っ張られるが、白牛将は決して手放さず、身体中の血管を浮き上がらせながら引き寄せる。その姿はまるでゴンゾウの「鬼人化」を想像させ、白牛将は鮫を引きずり出した。

「ぬおおおっ！！」
「シャアアッ！？」

白牛将が力ずくで引っ張り上げると、鮫は岸辺にまで投げ飛ばされる。圧倒的な腕力にレナは驚かされ、サーシャでさえも冷や汗を流す。

「あんなデカい獲物を投げ飛ばすなんて……」
「間違いなく、あいつは牛人族の中でも一番強い……前に何度か戦った事があるけど、私と姉者の二人がかりでもあいつを倒す事は出来なかった」
「なるほど……つまり、あいつを何とかしない限りは勝ち目はないか」

黒牛将と同様に白牛将は他の部族を攻め滅ぼすつもりであるため、交渉を行うにしても対戦は免れない相手だった。一先ずは様子を確認したレナ達は引き返す事を決める。現状で島に乗り込もうとしてっも白牛将と彼の手下に阻まれ鵜のは目に見えていた。

「一旦退こう、場所を確認すればいいよ」
「分かった」

二人は森の中へと引き換えし、この時に痕跡を残さない様に気を付けて置く。念のために気配感知や魔力感知を発動させて尾行されていない事を確認し、レナ達は隠れ家へ引き返した――

――隠れ家へ戻ると、ミノタウロス達を閉じ込めた建物にダークエルフ達が集まり、黒牛将を除いたミノタウロス達を引き出して取り囲んでいた。いったい何事かと思ったレナは慌てて駆けつけると、ハルナが二人に気付いて事情を話す。

「レナ、戻って来たのか！！丁度良かった、こいつらの話を聞いてくれよ」
「話？」
「ふん、こんな奴等の言葉なんて信用できるか！！」

ハルナの言葉を聞いてレナはどういう意味なのかとミノタウロス達に視線を向けると、彼等はアンジュに睨みつけられて顔色を青くしながらもレナに懇願する。

「た、頼む……殺さないでくれ。俺達だけでも解放してくれ」
「解放してくれればなんでも話す！！」
「こんな場所で死ぬのは嫌だ……」
「……さっきまでの威勢はどうした？」

最初の頃はミノタウロス達は拷問されようと仲間の情報を吐かないと言い張っていたが、急に自分の命を惜しむような発言にレナ達は怪しみ、何か企んでいるのではないかと思う。

しかし、ミノタウロス達は嘘を吐いているようには見えず、既に彼等の心は俺掛かっていた。その理由はレナのせいであり、もう既に彼等は自分達の目的を知られていると思って語り出す。

「あんた、黒牛将から情報は聞き出したんだろう？俺達の正体が今回の作戦は黒牛将と白牛将が仕組んだ事だって……」
「ああ、全部聞いたよ」
「な、なら俺達がいくら頑張っても無駄じゃないか……いたぶられた所で俺達はこれ以上の情報なんて知らない。それならもうあんたらに降伏した方がマシだ」
「黒牛将の馬鹿野郎が……簡単に仲間を売るような奴なんて、もう仲間じゃねえ」

この場に存在するミノタウロス達は完全に黒牛将を見限ったらしく、彼に巻き込まれて自分達も死ぬのは御免だと思ったらしい。その様子を見てレナは考え、ミノタウロス達に話しかける。

「確か、お前等は白牛将の部下だったな？」
「ああ、そうだが……」
「なら、お前等を連れて行けば白牛将と会えるのか？」
「えっ！？」
「レナ、本気か！？こいつらを解放するつもりか？」

レナの言葉に全員が驚き、アンジュは信じられない表情を浮かべるが、レナの目的は違った。白牛将の部下を解放して白牛将と取引を行ったところで無駄な事は既に把握している。

(白牛将が抗争を仕掛ける事を企んでいるなら、俺達の取引何て応じないはずだ。なら、残された手は……)

色々と考えた末に牛人族との抗争を避けるためには白牛将を何とかしなければならない。そう考えたレナは彼等に対して白牛将を呼び出す役目を与えた。

「白牛将に連絡しろ、ダークエルフの隠れ家を見つけたから来てくださいとな」
「ま、まかか……あの人を罠に嵌めるつもりか！？」
「そうか、ここへ呼び出して白牛将を捕まえるんだな！？」
「悪くない考えかも……待ち伏せ出来れば勝機はある」
「罠か……う~ん」

レナの言葉に他の者達は驚愕の声を上げ、アンジュとサーシャは感心した様子だが、ハルナは敵を罠に嵌める事に若干の抵抗を覚える。

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