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ダイン 監獄都市編

邪魔をするな!!

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「ど、どうして義母さんがここに……?」
「それはね、私の屋敷からお酒を盗んでしかも女の子たちの着替えを覗いた悪い子にお仕置きするために来たのよ」
「えっ……覗き?」
「ひっ!?」


覗きという言葉を聞いてミイネはダインにこれまでにない冷たい視線を向け、その視線を向けられたダインは背筋が凍り付く。だが、この状況では流石にミイネもダインを叱りつける事は出来ず、何としてもダインが盗んだ事は気づかれない様にしなければならない。

この状況下で一番追い詰められているのはギルであり、そもそも彼がパールの屋敷から酒を盗む事を提案した張本人である。仮に計画がバレたらまずいのは彼であるため、ギルはダインに視線を向ける。


(お、おい坊主……大丈夫だよな?ちゃんとリックの奴が持っていた短剣は置いてきたんだよな?)


彼の計画では酒を盗んだ犯人はリックと思わせ、当然ながら彼の主人であるグシャスに疑いが向けられるようにダインに指示していた。一応はダインもギルの言う通りに従ったが、パールが何処まで調べた上でここへ来たのかが問題だった。


「あの義母さん、それで犯人は見つかったんですか?」
「いいえ、犯人の顔をはっきりと見た子はいなかったわ。でも、手がかりは残ってたわ」
「手がかり?」


ミイネの言葉にパールは短剣を取り出すと、それを見たダインはギルに言われておいてきたリックの短剣だと気付いた。どうやらダインが置いてきた短剣をパールは見つけ出していたらしいが、彼女は短剣以外にもある物を取り出す。


「私がお酒を保管している場所にこの短剣が落ちていたの。だけど、他にも気になる物があったわ。それが……この髪の毛よ」
「か、髪の毛!?」
「あっ……!?」


パールの言葉にはダイン達は衝撃を受けた表情を浮かべ、彼女が取り出したのは「黒色の髪の毛」だった。この髪の毛は酒が盗まれた場所に落ちていたらしく、パールは短剣と髪の毛を摘まみながら不思議そうに首を傾げる。


「兵士さんに調べてもらったところ、この短剣の方はリックという囚人が所持していた物で間違いないわ。でも、不思議な事にそのリックは今は懲罰房で捕まっているし、この短剣も兵士達が押収していたはずなの。なのに彼の短剣が私の屋敷で見つかった。おかしいとは思わない?」
「そ、そうなんですか。初耳ですね……」
「あら?ミイネちゃんはリックの事を知っているんでしょ?そこにいる貴方の囚人さんが試合で戦っていると聞いたわ」
「ああ、そういえばそんな事もありましたね……あの囚人の事でしたか」


ミイネは表面上は普通に接するように徹しているが、内心は焦りを抱き、どうにかして誤魔化そうと必死だった。しかし、パールの方は既に調べが付いているらしく、このリックの短剣は押収品である事、そしてリックが現在も懲罰房で捕らえられているという事実は判明していた。

この計画の大きな穴を突かれ、まさかこんなにも早くパールに気付かれるとは思わなかった。もしもダインが屋敷の囚人に見つからず、上手く逃げ遂せていればここまで早く調査される事もなかっただろう。


「さっき、私もリックの所に行って彼に色々と聞いてみたけど……どうやら本当に何も知らない様子だったわ。という事は誰かが彼を嵌めた事にいなるのだけど……いったい、誰かしら?」
「うっ……」
「ふん、大方我等に罪を被せようとしたんだろうが残念だったな……ギル、酒を盗んだのは貴様だろう!!」
「な、何を言ってやがる!!証拠はあるのか!?」


グシャスは話を聞いて状況を理解すると、すぐにこんな計画を立てるのはギルしかいないと判断して彼を指差す。疑われたギルは焦った声を上げるが、そんな彼にグシャスは告げた。


「証拠だと?ならば貴様が暮らしているあの住居を調べ上げればいいだけの話だ。きっと、盗まれた酒があるだろう!!大方、全て飲みつくされて空瓶になっているだろうがな!!」
「て、てめぇっ……!!」
「もう、私が話しているのに邪魔をしちゃ駄目でしょ~」


ギルはグシャスを黙らせようとしたが、その前にパールが動き出すとギルも流石に何も出来ない。状況は一変し、パールと看守の介入によってダイン達は追い詰められる。


(や、やばい……どうすればいいんだ?)


ダインは駄目元でミイネに視線を向けるが、ミイネもこの展開は流石に予想外らしく、彼女も思い悩んだ表情を浮かべる。もう駄目かと思われた時、ここで今まで黙っていたガルルが叫び声を上げる。


「貴様等ぁっ!!いい加減にしろ!!」
「うわっ!?な、何だよ!?」
「酒?覗き?盗まれた?そんな事はどうでもいい、小僧!!まだ俺との決着が付いてないだろうが!!」
「決着って……もう付いてるだろ?」


ガルルは現在はダインの影魔法によって拘束されており、碌に身体を動かす事も出来ない状態だった。しかし、彼の戦意は衰えておらず、ダインに対して血走った目を向ける。その様子を見てパールは何故か面白そうな表情を浮かべた。
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