不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

ダイン 監獄都市編

上等だ！！こうなったら全員ぶっ飛ばしてやる！！(やけくそ)

「なるほど、その反応から察するにどうやらあの情報は嘘じゃないようですね」
「えっ……マジであの情報屋が言っていた事、本当だったのか？」
「貴様等……！！」


ガルルは明らかに動揺した様子を見てミイネは笑みを浮かべ、ダインも信じられない表情を浮かべる。三巨頭の中でも一番の武闘派だと恐れられている男の弱点、そんな情報が他の囚人に出回ったら威厳も何もない。

ミイネは情報を頼りにガルルを追い込めると考え、ここで彼に取引を持ちかけようとした。しかし、ガルルは何としても自分の秘密を知ったダインとミイネを始末するため、グシャスに尋ねる。


「おい！！あのガキ二人は俺が始末するぞ！！」
「ふむ……まあ、いいじゃろう」
「えっ！？お、おい！！ちょっと待てよ！！僕達はお前の弱点を知ってるんだぞ！！」
「そうですね、１歩でも近付けば貴方の弱点を晒しますよ？」


ガルルの言葉を聞いてダインは慌てふためき、ミイネもこの男は阿保なのかと思うが、そんな二人に対してガルルは首の骨を鳴らし、拳同志を叩きつけると怒鳴りつけた。


「言えるものなら言ってみろ……その時はここにいる全員を皆殺しにするまでだ」
「な、何だと！？」
「気が狂ったか、ガルル！！」
「うるせえっ！！俺をここに連れてきた事を後悔しやがれ！！」


ギルとグシャスはガルルの言葉を聞いて驚くが、ガルルはどうやら本気でこの場の全員と戦うつもりらしく、彼は最初に今回の騒動を引き起こした原因であるダインと向かい合う。


「小僧！！まずはお前から殺してやる！！」
「ダインさん、下がって下さい。こんな奴の相手をする必要なんて……」
「いや……ここは僕に任せろよ」
「坊主！？何を言ってるんだ！？」
「本気で言ってるのか！？」
「いくらなんでも危険過ぎるぞ……」
「ギギィッ(何か作戦があるの！？)」


ミイネはダインは庇おうとしたが、その前にダインは彼女を退かしてガルルと向き合う。そのダインの行動に全員が意外に思うが、ダインの方もガルルを見て今までに溜まっていた鬱憤を晴らす機会だと考えた。

これまでダインがこの監獄都市で囚人に追い掛け回されたり、吸血鬼もどきが住む地下を移動したり、闘技場で命を狙う羽目になったり、最終的には看守長が管理する屋敷に侵入して酒を盗み出す事になったのも全ての原因はガルルがダインに絡んできたからである。

ガルルさえいなければダインは平穏に凄し、こんな目には遭わなかった。そう考えるとダインとしてもガルルに恨みを抱くのは当然であり、彼はガルルに対して今までの怒りを発散する事を決めた。


「僕もお前のせいで大変な目に遭ってきたんだ……ここで決着を付けてやる！！」
「ふん、良い度胸だ……ガキがっ！！」
「ダインさん、大丈夫ですか？勝算はあるんですか？」
「ギギィッ……(いざという時は加勢するぞ)」


ダインの言葉を聞いてミイネもゴブも止めようとはしないが、それでも心配したように彼の服を掴む。すると、そんな二人に対してダインは振り返ると、笑顔を浮かべた。


「大丈夫だって……こう見えても僕、結構強いのは知ってるだろ？」
「それはそうですけど……」
「それにさ、冗談抜きでこんな奴なんかに負けないよ。僕の知っている巨人族の友達と比べたら、こいつなんて全然大したことないんだよ」
「ギギィッ？」


ダインは改めてガルルを見つめると、鼻で笑う。確かにガルルはこの監獄都市の中でも一番の実力者かもしれないが、それでもダインの親友である巨人族のゴンゾウと比べたらどうって事はない相手だった。

恐らくはこの戦いがこの監獄都市に訪れて最大の戦いになる予感を覚え、ダインは覚悟を決める。そんなダインに対してガルルは拳を握りしめ、獣のような咆哮を放つ。


「舐めるなよ、ガキがぁあああああっ！！」
「来いよ、このデカブツ！！」


ガルルとダインは同時に動くと、真っ先にガルルは拳を振りかざし、戦技を発動させる。それに対してダインも左腕を構え、黒腕を発動させて防御を行う。


「拳打！！」
「喰らうか、そんなもんっ！！」


振り抜かれたガルルの拳に対してダインは左腕で受け止めると、黒腕は衝撃を吸収し、ダイン自身には損傷はない。一方で初めて黒腕を目にしたガルルは戸惑い、戦技まで発動させた自分の拳をあっさりと受け止めたダインの驚愕する。


「馬鹿なっ……！？」
「す、すげぇっ！！」
「あの若いの、こんなに強かったのか！？」
「おお、やるじゃねえかっ！！」
「何を言ってるんですか……ダインのさんの力はここからですよ」


ダインが攻撃を受け止めた事にガルルは焦りを抱き、その様子を見ていた他の者達も湧き立つ。一方でグシャスの方もリックとの戦闘の報告を受けていたため、彼は舌打ちを行う。


(ガルル……この愚か者め！！奴を侮るなとあれほど言っただろう！！)


事前にグシャスはダインの影魔法を警戒しろとガルルに忠告していたが、頭に血が上ったガルルは無策でダインに突っ込み、結果的にはダインの思うつぼだった。ダインは黒腕を動かしてガルルの腕を弾くと、続けて杖を突き出す。