1,239 / 2,083
ダイン 監獄都市編
こそこそ……
しおりを挟む
(まずはファングたちの注意を引かないと……でも、こんな物でなんとか出来るんですかね)
ファングの様子を伺いながらミイネはゴブに視線を向けると、ゴブも察したように頷く。ゴブは一番近くに存在するファングに視線を向け、足元に落ちていた小石を拾い上げると、それをファングへと投げ込む。
「ギャインッ!?」
「ウォンッ!?」
「ガアアッ!!」
小石をぶつけられたファングの悲鳴が響き渡ると、異変を察知した他のファングが押し寄せ、その様子を見ていたミイネは即座にゴブを抱き込む。攻撃を受けたファングはゴブに視線を向け、威嚇するように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「ガウガウッ!!」
「な、何だ!?どうしたんだお前達!?」
「ちょっと、急に何ですかこいつら!!僕を襲うつもりですか!?」
異変に気付いた兵士達は慌ててファングに取り囲まれたミイネを助けるため、敷地内へと入り込む。だが、実際の所はファングたちの狙いはミイネではなく、彼女が抱えているゴブであった。
兵士達の目から見ればファングたちが唐突にミイネに襲い掛かろうとしているようにしか見えず、そんな事は何としても止めなければならなかった。何しろミイネは監獄所長とパールにとっては重要な存在であり、もしも彼女の身に何か起きれば兵士達の命はない。
「こ、こら!!止めろ、馬鹿犬め!!」
「大人しくしろ!!」
「グルルルッ……ウォンッ!!」
「うわっ!?くそ、こいつ噛みつこうとしやがった!!」
「ガアアッ!!」
兵士達は必死にミイネからファングたちを引き剥がそうとするが、それに対してファングたちは兵士にも反抗的な態度を取る。実は普段からファングの世話を行っているのは兵士ではなく、女囚であるためにファングは敷地内に入り込んだ兵士達も侵入者とみなす。
ファングと兵士達が争う中、これで屋敷の敷地内を見張る邪魔者はいなくなり、作戦の第一段階が終了した。後はダイン達に任せるしかなく、ミイネは自分がファングと兵士を引き付けている間にダイン達が上手くやることを願う――
――同時刻、騒ぐファングの鳴き声を耳にしたダイン達も動き出していた。彼等は屋敷の裏手の方にある鉄柵の前に辿り着き、ギルは鉄柵に施した細工を外す。実はこの鉄柵を用意したのも彼であり、この鉄柵を製作する際に密かにギルは鉄柵の一部を取り外せる仕組みを用意していた。
「……よし、外れたぞ!!ほら、さっさと移動しろ!!」
「わ、分かってるよ……でも、どうしてこんな仕掛けなんて残しておいたんだ?」
「いつか何かに利用できるかもしれないと思ってな、まあ使う機会が訪れる日が来るとは思わなかったがな」
鉄柵の一部を取り外した事で人間が一人通れるほどの隙間が作り出され、その隙間をダインは潜り抜ける。ファングと兵士はミイネが引き寄せてくれたお陰で今だけは見張りに見つからず、内部に入り込める事が出来た。
ちなみにファングに見つからずとも後で入ってきたときに臭いが残る可能性を考慮し、この時にダイン達は臭い消しようの対策として全身に消臭効果のある野草の粉末を塗りつけていた。これらの道具もギルが兵士を通して手に入れた代物であり、これで臭いを辿られる心配はない。
「坊主、屋敷の見取り図は頭に叩き込んだな?なら、上手くやれよ……俺達はここで待っている。他の奴等に見つからない様に気を付けろよ!!」
「いや、声がでかいよ!!気づかれたらどうすんだよ!?」
「おっと、悪い悪い……だが、本当に頼むぞ。失敗したら俺達も終わりだからな」
「若いの、気を付けてな」
「頑張るんだぞ!!」
ギルの他にマサルやドルトンも同行しており、彼等はここでダインが戻ってくるのを待つ予定だった。屋敷に忍び込むのはダインだけであり、ここから作戦の第二段階が始まる。まずはダインは屋敷の中に忍び込み、彼は真っ先に屋敷の一階の窓に移動した。
(馬鹿正直に玄関から入るわけにもいかないし……やっぱり、忍び込むとしたら窓からしかないよな)
当然だが正面玄関にはミイネが兵士とファングを引き寄せているので入り込めず、裏口の方も人がいる可能性があるので入り込めない。ならばダインが入り込むとしたら灯りが付いていない窓の部屋であり、部屋が暗ければ人はいないか、あるいは既に就寝中の可能性が高い。
窓に近付いたダインはこっそりと窓に手を伸ばして開こうとするが、残念ながら鍵が施されていた。だが、彼は焦った様子も見せず、掌を窓に押し込む。
(杖はないけど、これぐらいの窓だったら……)
今回の作戦ではダインは移動の際に邪魔になるために杖は置いてきたが、影魔法の類は使える。時間帯が夜だった事が幸いし、暗闇の中ならばダインは杖無しでも影魔法の真価を発揮できた。
ファングの様子を伺いながらミイネはゴブに視線を向けると、ゴブも察したように頷く。ゴブは一番近くに存在するファングに視線を向け、足元に落ちていた小石を拾い上げると、それをファングへと投げ込む。
「ギャインッ!?」
「ウォンッ!?」
「ガアアッ!!」
小石をぶつけられたファングの悲鳴が響き渡ると、異変を察知した他のファングが押し寄せ、その様子を見ていたミイネは即座にゴブを抱き込む。攻撃を受けたファングはゴブに視線を向け、威嚇するように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「ウォンッ!!ウォンッ!!」
「ガウガウッ!!」
「な、何だ!?どうしたんだお前達!?」
「ちょっと、急に何ですかこいつら!!僕を襲うつもりですか!?」
異変に気付いた兵士達は慌ててファングに取り囲まれたミイネを助けるため、敷地内へと入り込む。だが、実際の所はファングたちの狙いはミイネではなく、彼女が抱えているゴブであった。
兵士達の目から見ればファングたちが唐突にミイネに襲い掛かろうとしているようにしか見えず、そんな事は何としても止めなければならなかった。何しろミイネは監獄所長とパールにとっては重要な存在であり、もしも彼女の身に何か起きれば兵士達の命はない。
「こ、こら!!止めろ、馬鹿犬め!!」
「大人しくしろ!!」
「グルルルッ……ウォンッ!!」
「うわっ!?くそ、こいつ噛みつこうとしやがった!!」
「ガアアッ!!」
兵士達は必死にミイネからファングたちを引き剥がそうとするが、それに対してファングたちは兵士にも反抗的な態度を取る。実は普段からファングの世話を行っているのは兵士ではなく、女囚であるためにファングは敷地内に入り込んだ兵士達も侵入者とみなす。
ファングと兵士達が争う中、これで屋敷の敷地内を見張る邪魔者はいなくなり、作戦の第一段階が終了した。後はダイン達に任せるしかなく、ミイネは自分がファングと兵士を引き付けている間にダイン達が上手くやることを願う――
――同時刻、騒ぐファングの鳴き声を耳にしたダイン達も動き出していた。彼等は屋敷の裏手の方にある鉄柵の前に辿り着き、ギルは鉄柵に施した細工を外す。実はこの鉄柵を用意したのも彼であり、この鉄柵を製作する際に密かにギルは鉄柵の一部を取り外せる仕組みを用意していた。
「……よし、外れたぞ!!ほら、さっさと移動しろ!!」
「わ、分かってるよ……でも、どうしてこんな仕掛けなんて残しておいたんだ?」
「いつか何かに利用できるかもしれないと思ってな、まあ使う機会が訪れる日が来るとは思わなかったがな」
鉄柵の一部を取り外した事で人間が一人通れるほどの隙間が作り出され、その隙間をダインは潜り抜ける。ファングと兵士はミイネが引き寄せてくれたお陰で今だけは見張りに見つからず、内部に入り込める事が出来た。
ちなみにファングに見つからずとも後で入ってきたときに臭いが残る可能性を考慮し、この時にダイン達は臭い消しようの対策として全身に消臭効果のある野草の粉末を塗りつけていた。これらの道具もギルが兵士を通して手に入れた代物であり、これで臭いを辿られる心配はない。
「坊主、屋敷の見取り図は頭に叩き込んだな?なら、上手くやれよ……俺達はここで待っている。他の奴等に見つからない様に気を付けろよ!!」
「いや、声がでかいよ!!気づかれたらどうすんだよ!?」
「おっと、悪い悪い……だが、本当に頼むぞ。失敗したら俺達も終わりだからな」
「若いの、気を付けてな」
「頑張るんだぞ!!」
ギルの他にマサルやドルトンも同行しており、彼等はここでダインが戻ってくるのを待つ予定だった。屋敷に忍び込むのはダインだけであり、ここから作戦の第二段階が始まる。まずはダインは屋敷の中に忍び込み、彼は真っ先に屋敷の一階の窓に移動した。
(馬鹿正直に玄関から入るわけにもいかないし……やっぱり、忍び込むとしたら窓からしかないよな)
当然だが正面玄関にはミイネが兵士とファングを引き寄せているので入り込めず、裏口の方も人がいる可能性があるので入り込めない。ならばダインが入り込むとしたら灯りが付いていない窓の部屋であり、部屋が暗ければ人はいないか、あるいは既に就寝中の可能性が高い。
窓に近付いたダインはこっそりと窓に手を伸ばして開こうとするが、残念ながら鍵が施されていた。だが、彼は焦った様子も見せず、掌を窓に押し込む。
(杖はないけど、これぐらいの窓だったら……)
今回の作戦ではダインは移動の際に邪魔になるために杖は置いてきたが、影魔法の類は使える。時間帯が夜だった事が幸いし、暗闇の中ならばダインは杖無しでも影魔法の真価を発揮できた。
0
お気に入りに追加
16,534
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
断罪されているのは私の妻なんですが?
すずまる
恋愛
仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。
「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」
ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?
そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯?
*-=-*-=-*-=-*-=-*
本編は1話完結です(꒪ㅂ꒪)
…が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。