不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません？

ダイン 監獄都市編

あれ、どうしたの？なんか顔色悪く無い？(´･ω･)

「頼む！！どうかお前の力で酒を手に入れてくれ！！」
「えっ！？」
「酒って……まさか、僕にあの人から酒を盗めというんですか！？」
「そうだ、この監獄都市で上等な酒を持っているとしたら監獄所長かパール看守長しかいない……そして二人と接点があって、万が一に酒を盗んだことがばれても許されるのはお前さんだけだろう？」
「ば、馬鹿を言わないでくださいよ！！あのくそお……いや、監獄所長はともかく、パールさんから酒を盗むなんて……もしもばれたら僕がどんな目に遭わされると思ってるですか！？」


土下座で頼み込むギルに対してミイネは非常に焦った表情を浮かべ、ここまで取り乱すミイネを見るのはダインも初めてだった。一方でゴブの方も身体を震わせており、二人ともパールから酒をくすねる行為がどれほど危険な事なのか理解しているらしい。


「頼む！！お前さん以外にこれを頼める人間はいないんだ！！」
「勝手な事を言わないでください！！そんな条件、吞めるはずがないでしょう！！」
「本当にいいのか？お前さん達の仲間の命が掛かってるんだぞ？そっちの坊主はどうなんだ！？」
「えっ……いや、いきなりそういわれても」
「ギギィッ……」


マサルとドルトンの解放を条件にギルはミイネに酒を調達するように要求し、ダインにも説得するように懇願する。彼としてはどうしても死ぬ前に一度は一級品の酒を味わいたく、恥も外聞もなく頼み込む。


「頼む、この通りだ！！これに協力してくれたらすぐに仲間も解放してやる！！」
「断ったら……どうするつもりですか？」
「……その時はあの二人をグシャスの派閥に引き取らせる。この意味が分かるな？あいつらは拷問の天才だ、きっと死ぬよりも辛い目に遭うぞ」
「なっ！？」
「くっ……卑怯な」


最終的には脅しをかけて承諾させようとするギルに３人は冷や汗を流し、どうするべきか考える。ダインからすればマサルとドルトンは何があろうと助けてやりたいが、ミイネとしてはパールから酒をくすねるのだけは避けたかった。

ギルの条件を引き受ける場合、ミイネはパールと接触する必要がある。それ自体は別に問題はないだろうが、重要なのはどうやってパールの部屋に保管されている酒を盗むかで合った。仮にミイネがパールの目を盗んで酒を盗む事に成功しても、それがパールに知られたら無事では済まない。


「貴女、パール看守長がどれほど恐ろしい人なのかご存じでしょう？もしも僕が捕まれば貴女の指示で酒を盗もうとした事は発覚します。そうなれば貴方だって無事では済まないんですよ？」
「そこを上手く何とかしてくれるのがお前さんの仕事だろう？こんな事を頼めるのはお前さん達以外にいないんだよ……頼む、どうか引き受けてくれ！！もしも成功したら俺達はもうお前等から手を引く！！俺の部下にもお前さん達を手を出さないように注意する！！」
「口では何とでも言えますからね……」
「嘘じゃねえって！！危ない橋を渡るのは俺も一緒だ！！もしもお前さんが酒を盗んだ後、俺の指示に従っていた事をばらしたら俺だってパール看守長に目を付けられるんだぞ！？」
「ど、どれだけ怖がられてるんだよ……その、パールという名前の看守長は」
「ギギィッ(恐ろしい御方だ)」


ミイネの言葉にギルは必死に否定し、冗談抜きで彼もパールに目を付けられるのは避けたかった。パールは看守長の中でも最も恐れられ、しかも監獄所長が最も可愛がっている存在である。だからこそギルの自分も危険な橋を渡るという言葉は否定できない。


「今回の取引は俺達も一蓮托生だ……もしも盗むのに必要な道具があれば俺が用意してやる。だから、頼む！！手を貸してくれ！！」
「ミイネ、その……僕からも頼むよ。よく分からないけど、こいつのいう事を聞かないとおっさんも爺さんも大変な目に遭う事になるんだろ？僕も手伝うからさ……」
「簡単に言わないでくださいよ……本当にあの人は怖い人なんですから」
「ギギィッ……」


必死に頼み込むギルを見てダインも今回の取引は悪く無いように思え、ミイネの説得を行う。ミイネとしては今回の取引は承諾したくはないが、ダインに頼まれて彼女は考え込む。

ミイネとしてはダインとは友好的な関係を築いてきた以上、ここでギルの取引を拒否してダインが気にかけている二人を見殺しのような真似をすればダインもミイネを許さないだろう。そうなると今後の行動に問題が起きる可能性があり、ミイネは悩んだ末に引き受ける事にした。


「……ああ、もう！！分かりましたよ、やればいいんでしょうやれば！！」
「おおっ！！恩に着るぜ！！」
「但し、まずは僕達を監獄都市まで連れて行ってください。話はそれからです、捕まっている二人とも引き合わせてください。そうしなければ引き受けませんからね」
「おう、ならすぐに俺が手配した馬車に乗ってくれ！！急いで戻るぞ！！」


ギルはミイネの返事を聞いて満面の笑みを浮かべ、彼女が考えを改める前に自分が用意した馬車まで３人を連れて行く――