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ダイン 監獄都市編

うわああんっ!!もうおうち帰るぅっ!!(二回目)

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「くそ、こいつも死んでるぞ……さっきの奴にやられたのかな」
「状況的に考えてもその可能性が一番高いでしょうね」
「ギギィッ……」


地下道に倒れている死体に対してダインは不憫に思い、開け開かれている目を閉じる。その隣でゴブは両手を重ねて冥福を祈り、一方でミイネの方は険しい表情を浮かべていた。


「全く、余計な世話を……あのくそ親父、何てものを送りつけるんですかね」
「えっ?」
「いえ、何でもありません……それよりも先を急ぎましょう。ゴブさん、さっきの情報屋はこっちに行ったんですか?」
「ギギィッ(間違いない)」


ゴブの嗅覚を頼りにダイン達は逃げ出した男の後を追いかけ、地下道を探索していた。正直に言えばダイン達には時間はないのだが、ここであの男を放置すればいずれ吸血鬼もどきと化した囚人の餌食になる。


「全く、世話を掛けさせますね。もう無視して先に行きましょうか?」
「おいおい、そう言うなよ……ずっとこんな場所に閉じ込められてたんだろ?しかも吸血鬼みたいな奴に狙われてさ、逃げるのも仕方ないよ」
「でも、僕達を置いて逃げ出した人にそこまで面倒を見る義理なんてないでしょう?」
「……一人ぼっちの辛さは僕もよく知ってるからな」


ダインは周囲を見渡し、暗闇の中で誰も頼れる存在はおらず、一人で過ごしてきた日々の事を思い出す。彼が子供の頃、ここよりも狭くて暗い牢の中で過ごした日々を思い出す。あの時のダインは助けてくれる人など傍におらず、結局は自分の力で抜け出す以外に生きる道はなかった。

もしも子供の頃に影魔法を身に付けなければダインは今頃はオウネンの肉体の依り代にされていた可能性があり、そういう意味では影魔法が彼を救い出したと言っても過言ではない。そして先ほど逃げ出した男も頼れる存在がおらず、こんな暗い場所で何日も閉じ込められれば精神的に追い詰められても仕方がない。


「とりあえず、探せるだけ探してみよう。ここにはあいつらも入ってこれないんだろう?」
「ええ、入ってこれてもこの地下道の事を知り尽くしているのは僕だけです。簡単に撒けるでしょうね、だけど問題なのは外に出た後で……」
「ギギィッ!?ギィイッ!!」


会話の際中に戦闘を歩いていたゴブが何かに気付いたように声を上げ、その声にダインとミイネは咄嗟に視線を向けると、ゴブが所持しているランタンの光が照らされ、地面に倒れている情報屋の男の姿が露になった。


「う、ううっ……」
「お、おい!?どうしたんだ!?さっきの奴にやられたのか!?」
「ダインさん、気を付けて下さい!!」
「ギイイッ!!」


倒れている男の元にダインは駆けつけようとしたが、それをミイネが腕を掴んで引き留め、ゴブも周囲を警戒するように見渡す。すると、天井の方から鳴き声が響き、そこには思いもよらぬ光景が広がっていた。


「ぐううっ……」
「ひひっ……」
「がああっ……」
「うわぁっ!?な、何だこいつら!?」
「まさか……気を付けてください、こいつらも吸血鬼化しています!!」
「ギィッ!?」


天井に存在したのは3人の男達であり、それぞれが鋭い爪を天井に食い込ませ、血走った目でダイン達を見下ろす。その中には先ほど襲撃した囚人の男も含まれており、全員が新たな餌が訪れた事に歓喜する。

どうやら倒れていた情報屋の男は囮だったらしく、彼を探してやってきたダイン達に対して3人の吸血鬼もどきは天井から降り立つと、ダインは慌てて杖を構える。まさか半ば吸血鬼化した存在が他にも存在した事に動揺を隠せず、ミイネの方も苛立ちを隠せない様子だった。


「失念してました……まさか、他にも吸血鬼もどきがいたなんて」
「ど、ど、どうするんだよ!?」
「ギギィイイッ!!」


3人の吸血鬼もどきは天井から飛び降りると、涎を垂らしながらダイン達と向き合う。その様子を見てダインは嫌な予感が浮かび、案の定というべきか3人は同時に飛び掛かってきた。


『がああああっ!!』
「うわぁああっ!?また僕狙いかよ!?」


飛び込んできた3人の囚人は刃物の如く研ぎ澄まされた爪を振り払い、真っ先にダインへと襲い掛かろうとした。その攻撃に対してダインは握りしめていた杖を構えるが、この際にミイネが前に出てダインを庇うように両腕を広げる。


「ダインさん、下がって!!」
「ミ、ミイネ!?」
『があっ……!?』


ミイネが前に立つと吸血鬼たちは慌てて立ち止まり、振り払おうとした腕を止めた。その様子を見てダインは驚愕するが、先ほど襲われた時も吸血鬼もどきが彼女を襲わなかった事を思い出す。

理由は不明だが、吸血鬼もどきはミイネに攻撃が仕掛けられないらしく、彼女はそれを利用してダインとゴブを庇うと反撃するように指示を出す。


「今です!!早く何とかして下さい、いつまで持ち堪えられるか分かりませんよ!!」
「えっ!?あ、ああ……よしっ!!」


ダインはミイネの言葉を聞いて杖を床に置くと、この暗闇の中ならば全力で戦えると判断し、自分の最大の影魔法を発動させた。
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